- 作者名:たつみや章
- おすすめ:小学校5~6年
- ジャンル:物語(ファンタジー・空想的・SF)
- キーワード:科学 命 家族 技術 2018年ブックプロジェクト
本の紹介
引っ越した田舎での生活に、馴染めずにいたマサミチ少年。ひょんなことから神様の力によって、虫や木の声が聞こえるようになり、命の大切さに少しずつ気づいていく。その一方、父が勤める原子力発電所で事故が発生。兄と慕う父の同僚、スイッチョさんは被曝してしまう。
ブックプロジェクトのテーマ
小学5年生のR・N君のブックプロジェクトのテーマは「科学技術との付き合い方」です。研究では「炭素」について調べたR君は、技術の裏側にある負の側面についても知りました。私たちは技術とどのように付き合えばいいのかについて、じっくり考えています。
作品の紹介
「技術と命」
小5 R・N君
みなさんは、原子力発電所とは何か知っていますか。原子力発電所とは、原子力を使って電気をつくる発電所です。まず、ウラン235という原子に中性子を当てて二つに分け、その時に出る熱で発電を行います。こうすると、二酸化炭素を出さずに簡単に大きな力を産むことができます。
ぼくは、原子力や元素などについて書かれている本を読んで、それらの発見には、たくさんの努力があったことを知りました。しかし、原子力は、戦争に使われてしまうこともあります。例えば、広島県と長崎県への原子爆弾の投下や、水素爆弾の実験によってマグロ漁船の第五福竜丸が死の灰を浴びるなどの悲しい出来事があります。原子爆弾の投下では、たくさんの人が、目に見えない放射線により、やけどやがんになる被害がありました。第五福竜丸は、死の灰を浴びて、マグロが大量の放射線を浴びたり、乗組員が被爆したりするなどの被害がありました。
そのことを知って、ぼくは、原子力にはいろいろな可能性があるけれど、可能性ばかりを研究するのではなく、しっかり向き合っていくことが大切だと思いました。
原子力と生命について考えさせられる物語があります。たつみや章さんの『夜の神話』です。原子力発電所に勤める父を持つ、主人公の正道が、家霊の米原さんと出会い、生き物の見方が変わるという物語です。ぼくは、正道が友人の太一に向かって、せみを殺すのはかわいそうだと言ったことが、印象に残りました。なぜなら、最初は、ひいたカエルをきたないと言っていた正道が、命の大切さに気づき、生きものを殺すのはかわいそうだと思うようになったという変化がうれしかったからです。
原子力発電所は、簡単に電気をつくれますが、時に命をおびやかすことにもなります。七年前の福島第一原子力発電所のメルトダウンで、水道水が飲めなくなったことがありました。そのことを知った祖父は、静岡県から、放射線を浴びていない水を送ってくれました。ぼくは、発電所がメルトダウンを起こした原因についてニュースで見ました。格納容器の中の冷却水の量を減らしたことにより、容器内の温度が上がったのでした。ぼくは、これからどうなるのか不安になりました。
このように、原子力による被害はたくさんあります。そのため、たくさんの人々が、原子力に頼らないことを願い続けています。しかし、今すぐに原子力を使わないようにすることはできません。今、必要なのは、原子力についての正しい知識を身につけることです。そして、正しい使い道について、みんなで考え続けることが必要です。自分でも、本やニュースを見たり、科学博物館へ行ったりして原子力の発見の歴史や、現在はどう使われているのかを調べてみたいです。