近年、受験へかけるご家庭の思いは多様化しています。「合格」だけでなく、「努力する機会を作りたい」「ハイレベルな授業を受けてほしい」「友だちと切磋琢磨してほしい」「チャレンジする経験を積んでほしい」といった目標を第一に掲げるご家庭も増えています。
リテラの受験における第一の目標は、お子さまの成長です。受験の結果に関わらず、お子さまの成長は続いていきます。その長い過程の中で、何を得てほしいのか。結果が不確かだからこそ、受験をすることの確かな意味が問われます。一人ひとりの成長のテーマと、ご家庭の願いに寄り添いながら、共に未来を模索していきます。
リテラの講師は、国語のプロであると同時に、子どもたちの心を育むサポーターでもあります。お子さまの発達と個性に徹底的に寄り添い、得意を伸ばし、苦手を克服するための最適な学習をデザインします。
受験や成績でよい結果を得るだけでなく、その先の未来を自分でつくる力を育んでほしい。そして、ことばと行動で、多くの人を導くリーダーになってほしい。そう願いながら、一人ひとりに向き合っています。
小学校2年生のAさんは、自分の気持ちを表現するのが苦手でした。ご家族に「どうしたい?」と聞かれても、ご自分の意見をなかなか言うことができませんでした。日記の宿題でも、何を書いたらいいのかわからず、いつも苦労をしていたそうです。最初は緊張していたAさんでしたが、安心できる雰囲気の中で、会話や観察などの課題に取り組んでいきました。どんどんことばが出てくるようになったAさんは、年度末の発表会で、大好きな物語についてみんなに発表することができました。
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読解問題の成績が振るわず、焦りと苦手意識ばかりが募っていたD君。やればやるほど、正解がわからなくなるという悪循環の中にいました。教室では、講師とともに、文章に丁寧に向き合うことからはじめました。答えを文章の中に探すのではなく、まずは自分自身の中に、情景や論理展開をイメージしなければならないことに気づいたD君。本に囲まれた空間で、いつの間にかなくしていた読書習慣を取り戻し、読解問題も楽しめるようになりました。
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もともと読書が大好きなBさんでしたが、学校の作文課題では、どんなふうに文章を書いたらいいのか、わからなくなることがありました。「書きことば」の練習を通して、書き出しや接続詞など、わかりやすく伝えるための具体的なポイントを練習していきました。文の流れを作れるようになったBさんは、起こった出来事だけでなく、そこにどんな意味があるのかを考えるようになりました。公立中高一貫校の作文課題でも、自分自身の物語を自信を持って書くことができました。
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学校での言語表現や発表の授業を苦手としていたEくん。どうすれば論理的な分析や文章表現ができるのか、悩んでいました。論理の構成要素や文章表現の型を学び、テーマについて講師と話し合う中で、次第に、自分の意見を論理的に構築できるようになりました。自分の中にある「考える楽しさ」を再発見したEくんは、自分の進路についても積極的に考えはじめたようでした。
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「言葉が使えないと太刀打ちできない」
公立中高一貫校の検査には、単純な暗記問題や計算問題は出題されません。問題文を読み解く時、順序立てて考える時、そしてわかりやすく答える時、すべてに言葉の力が求められます。また、作文課題では、自分の体験や意見を、段落を分けながら書くという高度な言語技術が求められます。リテラでは、書き方だけでなく、その内容まで、生徒とともに考え、表現への自信を育んでいきます。
「読むとはどういうことか」
受験読解では、点数が安定しない、伸びない、といったお悩みをよく伺います。算数・数学のように明確な答えがないため、国語に対して苦手意識をもってしまう子も多くいます。学習塾で過去問を繰り返すほど苦手になっていく、そうした悪循環に陥ってしまうと、抜け出すのはなかなか大変です。リテラでは、一人ひとりの状況と理解に合わせ、「読む」とはどういうことかを根本から学び直します。
「新しい教育の流れと言葉の力」
大学共通テストでは、暗記問題だけではなく、教科を横断し知識を活用する力が求められるようになりました。また、大学ごとの選抜試験では、共通テストの成績に加え、小論文・面接・プレゼンテーションなど、様々な角度から人物を評価することになります。こうした新しい教育の流れにおいて、言語活動は大きな意味を担います。教室では、一人ひとりの目標と状況に合わせ、合格をサポートしていきます。
今やってることは必ずどこかで活きてきます。それに気づくのはいつになるか人それぞれですが、焦らずに自分のペースで進んでください。リテラの先生たちはそれを全力でサポートしてくれます。リテラで楽しく学び、是非自分の中の可能性を広げてください!!
自分が目にするものに興味をもち、それを自分で考えるというクセをつけることは、人生をより楽しく、幸福にしてくれると思っており、そのような姿勢はリテラで構築されたと思っています。その意味では、私は「心に残っている」のではなく「心になっている」の方が適切かもしれないですね。
どんな勉強においても「言語技術能力」は必要です。そんな言語技術に特化した勉強ができる教室はリテラだけです! 作文、要約の練習やたくさん読書ができる環境が本当に人生に役立ちます。また皆さんが今後大きくなってから、研究発表のようにプレゼン等をする機会が増えると思います。そんな場面でもリテラでの学びを活かすことができます。(実際、高校での授業のプレゼンも大学でのディベートも先生に名指しで褒めちぎられます笑 つまり成績も…笑)
ことばの力は、考える力そのものであり、生徒の発達とともに高度になっていきます。リテラでは、段階的に統合・発展していくモデルと、ことばの各領域にアプローチする教材課題群があります。
リテラの13年間のカリキュラムの、大まかなテーマのみをまとめたものです。実際の授業では、より細かなカリキュラムが、一人ひとりに合わせて組まれることになります。
読み聞かせの段階から、自らのキャリアをイメージする段階まで、一人ひとりの成長に寄り添います。
小学校低学年では、物事をよく見ること・気持ちを表現すること・できごとを捉えることを通して、表現への自信を育みます。
読書レベル | 読書の課題 | 書く | 対話する | 考える |
---|---|---|---|---|
読み聞かせ (前期) | 聞く集中力をつける | 運筆に慣れる ひらがな・カタカナが書ける | 相手に向き合う姿勢 | ものや感覚の名前を知る |
読み聞かせ (後期) | 出来事をつかむ | 書くことに親しむ | 話す・聞く姿勢 | 五感とことばをつなげる |
一人読みへの移行期 |
小学校中学年では、本質を捉えること・イメージの世界をつくること・体験を味わうことを大切にしながら、自分を育てていきます。
読書レベル | 読書の課題 | 書く | 対話する | 考える |
---|---|---|---|---|
多読(前期) | 物語に没入する 人物に感情移入する |
書き言葉を学ぶ イメージを言語化する 体験を書く |
伝える・理解する姿勢 | 物事の共通点を捉える イメージに意識を向ける |
小学校高学年では、概念を操作すること・体験を描写すること・事実を意味づけることを通して、受験で求められる水準を満たす表現力に到達するとともに、より高度な読解と思考力の基盤をつくります。
読書レベル | 読書の課題 | 書く | 対話する | 考える |
---|---|---|---|---|
多読(後期) | テーマをつかむ 物語の型を理解する |
テーマに沿って構成する 体験を描写する 意見文を書く |
自分と他者の違いを意識する | 論理の構成要素を学ぶ 概念を理解する 体験を意味づける |
中学生以上の子どもたちは、「自分は何がしたいのか」という将来の目標と、現実の課題を「どのように解決するか」を行き来しながら、「自分は何者なのか」を模索していくことになります。
読書レベル | 読書の課題 | 書く | 対話する | 考える | 自律学習 |
---|---|---|---|---|---|
分析的な読解 | 作品を分析する 抽象的概念を習得する |
論理的に表現する 内的イメージを描写する |
ディスカッション 体験の意味について話し合う |
立論の型を学ぶ 思考実験 |
学習の予定を組む |
能動的・多角的な読み | 目的を持って多角的に読む 思想を理解する |
他者に働きかける文章と表現 自己表現 |
意見の統合と問題解決 抽象語彙を用いた対話 |
複雑な現実・社会に向き合い、自らのキャリアをイメージする | 目標に向かって進む |
こんな子におすすめ! 世界の水問題や環境問題に関心がある子 異文化や海外の暮らしに興味がある子 社会問題について考えたい子 困難に立ち向かう勇気や行動力を学びたい子 家族の絆や友情の大切さを感じたい子 日常の「あたりまえ」について考えてみたい子 インドの文化や社会に興味がある子 本の紹介 インド有数の大都会ムンバイ。12歳のミンニと15歳の兄サンジャイが暮らすスラムには、ムンバイの人口の40パーセントが住んでいるにも関わらず、水は市全体の5パーセントしか供給されていません。 水不足が厳しくなる3月のある夜、サンジャイが「水マフィア」を目撃してしまい、命の危険にさらされることに。さらに母親は病気になり、ミンニは学校に通いながら母親の代わりに裕福な家庭で家政婦として働くことになります。 詩を書くのが好きな少女ミンニは、厳しい現実の中でも夢を持ち続け、水マフィアの不正と闘う決意をします。家族の絆、友情、そしてインドの「今」を生きる子どもたちの勇気と成長の物語です。 「人は、水なしでは生きていけない。でも、ほんとうに必要なのはそれだけじゃない!」 購入はこちら 購入ページ(Amazon) 本の解説 この物語の舞台となるインド第2の都市ムンバイのスラムでは、約1,200万人の人口のうち40%近くが住んでいるにもかかわらず、水は市全体の5%しか供給されていません。慢性的な水不足に陥り、上下水道も完備されていないため、水を手に入れるためには毎日水を汲む列に並ばなければなりません。 ダラヴィの内部Kounosu, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons 主人公の12歳のミンニは、慈善団体の運営する私立の学校に通いながら、このムンバイのスラムで両親と兄と暮らしています。詩を書くのが好きで、コンピューターの使い方を学ぶ機会も得た彼女は、どんな環境でも学ぶことをあきらめません。 物語は、ある日の夜のドライブ中に、ミンニと兄のサンジャイ、友だちのファイザが、水マフィアが水を盗む現場を目撃することから動き出します。この事件をきっかけに、家族はばらばらになってしまいますが、ミンニは諦めることなく、勇気を持って問題に立ち向かっていきます。 「この大人になるってことは、大変だ ― なにも気にしなくてよかったわたしの子ども時代は、もうもどってこないかもしれない。でも …
こんな子におすすめ! 自分の弱さや内気な性格を克服したいと思っている子 チームで何かを成し遂げる感動を味わいたい子 難病と闘いながらも夢をあきらめない強さを学びたい子 合唱や音楽に興味のある子 実話に基づく感動ストーリーが好きな子 友情や絆の大切さを感じたい子 たった一人でも歌うことが好きな子 本の紹介 『とびたて! みんなのドラゴン』は、福岡県北九州市の日明小学校で実際にあった物語です。難病ALSと闘いながらも合唱部の顧問として子どもたちと向き合った竹永先生と、内気で人前で話すことができないマナミを含む個性豊かな合唱部員たちが、それぞれの壁を乗り越えて全国大会金賞を目指す姿を描いています。 合唱未経験の先生と個性豊かな子どもたちが、お互いの弱さを認め合いながら、勇気の象徴である「ドラゴン」を心の中で育て、ステージで羽ばたかせるまでの1年間の冒険。実話をもとにした感動のノンフィクションは、読む人の心に勇気と希望を届けてくれます。 購入はこちら 購入ページ(Amazon) 本の解説 福岡県北九州市にある日明(ひあかり)小学校。この学校の合唱部に、ALSという難病を抱えた竹永亮太先生が顧問として着任します。合唱の経験がまったくない竹永先生。そして、内気で人前で話すことすらできないマナミという小学6年生の女の子。 マナミは自分を変えたいという強い思いから、学校で唯一の部活動である合唱部に入部します。そこで出会ったのが、笑顔が素敵な竹永先生でした。しかし、竹永先生はALSという難病により、徐々に体が動かなくなっていくという厳しい現実と向き合っていました。 物語は、竹永先生が病気と闘いながらも子どもたちと真剣に向き合い、マナミが自分の弱さと向き合いながら成長していく姿を、リアルに描いています。 「もう上手に歌うとか、金賞をとろうとか、考えんでいいけんね。最初から目標にしていたとおり、日本でいちばん明るく、日本でいちばん元気に、日本でいちばんこころをこめて歌おう。日明小にしかできない歌声を観客席に届けよう」 これは、P139に書かれている、ステージに立つ前に竹永先生が子どもたちに伝えた言葉です。技術や結果よりも大切なものがあることを教えてくれます。 この本の特徴は、実際にあった出来事をベースにしていることです。2022年度の1年間、竹永先生と合唱部の子どもたちが全国大会金賞を …
大人も書いてみよう、読書感想文 こんにちは、リテラ「考える」国語の教室の長谷川尚哉です。 2025年青少年読書感想文コンクールの課題図書『鳥居きみ子 家族とフィールドワークを進めた人類学者』(竹内紘子)を読んで、感想文を書いてみました。 本を読んだときに湧き上がってきた思いを形にしたくて書いたものです。 これは決して子どもたちの「見本」になるようなものではありません。 むしろ、一人の大人として本と向き合い、自分自身の経験と重ね合わせて書いた素直な感想です。 でも、この感想文を読んでくださった方々が、「読書感想文ってこんな風に書いてもいいんだ」と感じていただけたら嬉しいです。大人の本音の感想が、子どもたちが自分の言葉で書くためのヒントになれば、という願いを込めています。 ぜひ、保護者の皆さん、読書感想文を指導される先生方も、一度子どもたちと同じ本を読んで感想文を書いてみませんか? 子どもたちと一緒に「書く」体験をすることで、新たな発見があるかもしれません。 それでは、読書感想文をご覧ください。 読書感想文のポイントはこちら 【2025年読書感想文特集】『鳥居きみ子 家族とフィールドワークを進めた人類学者』(小学校高学年向け課題図書) この本の冒頭部分で何度も繰り返される「男だったら」という言葉は、当時の社会において女性がどのように見られ、扱われていたかを端的に表しています。勘定に入れられていなかったのです。例えば現代でも、多くの人は子どもの言うことを真剣に取り合いません。当時の社会では、女性は大人であってもそのような扱いを受けました。もちろんこのような扱いは不当なことです。しかし、そのように軽視され記録に残されることのなかった人々は、多くの場合忘れ去られてしまい、後世に再評価を受けることも、不当な扱いに対する批判の声が上がることもありません。知らない人間のことを評価することはできないからです。 この本の主役であるきみ子さんの活動や著作も、今まではあまり一般に知られることはありませんでした。私達の社会に大きな貢献をしたにも関わらず、今なお知られていない人たちも多くいらっしゃるはずです。この本を読んで鳥居きみ子さんの生き方から何かを学ぶのであれば、それはもちろん素晴らしいことです。しかし、彼女の活動や生涯について知るだけでも、今まであまり知られてこなかったひとりの人類学 …
【講師コラム】大人も書いてみよう、読書感想文 こんにちは、リテラ「考える」国語の教室の講師、黒木里美です。 2025年青少年読書感想文コンクールの課題図書『とびたて!みんなのドラゴン 難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』(オザワ部長)を読んで、わたし自身が感想文を書いてみました。 本を読んだときに湧き上がってきた思いを形にしたくて書いたものです。 これは決して子どもたちの「見本」になるようなものではありません。 むしろ、一人の大人として本と向き合い、自分自身の経験と重ね合わせて書いた素直な感想です。 でも、この感想文を読んでくださった方々が、「読書感想文ってこんな風に書いてもいいんだ」と感じていただけたら嬉しいです。大人の本音の感想が、子どもたちが自分の言葉で書くためのヒントになれば、という願いを込めています。 ぜひ、保護者の皆さん、読書感想文を指導される先生方も、一度子どもたちと同じ本を読んで感想文を書いてみませんか? 子どもたちと一緒に「書く」体験をすることで、新たな発見があるかもしれません。それでは、私の読書感想文をご覧ください。 読書感想文のポイントはこちら 【2025年読書感想文特集】『とびたて! みんなのドラゴン 難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』オザワ部長(小学校高学年向け課題図書) 『とびたて!みんなのドラゴン』を読んで 〜 心の中のドラゴンを育てる教育の力 〜 『とびたて!みんなのドラゴン 難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』は、福岡県北九州市の日明小学校で実際にあった出来事をもとにしています。ALSという難病と闘いながらも合唱部の顧問として子どもたちと向き合った竹永先生と、内気で人前で話すことができないマナミをはじめとする個性豊かな合唱部員たちの1年間の挑戦を描いています。 本との出会い 読書感想文の指導をしている私にとって、夏は特別な季節です。多くの子どもたちが「先生、何を書けばいいんですか?」と尋ねてくる季節。そんな時、いつも私は「あなたの心が動いた場面を中心に書くといいよ」とアドバイスしてきました。 『とびたて!みんなのドラゴン』を読み終えた後、私の頭の中には一つの疑問が浮かびました。「もし私が竹永先生だったら、ALSという難病を抱えながら、子どもたちの前に立つ勇気を持てただろうか?」 『僕のドラゴン』と私の教室での日々 物語の中 …
【講師コラム】大人も書いてみよう、読書感想文 こんにちは、リテラ「考える」国語の教室の講師、黒木里美です。 2025年青少年読書感想文コンクールの課題図書『スラムに水は流れない』(ヴァルシャ・バジャージ)を読んで、わたし自身が感想文を書いてみました。 本を読んだときに湧き上がってきた思いを形にしたくて書いたものです。 これは決して子どもたちの「見本」になるようなものではありません。 むしろ、一人の大人として本と向き合い、自分自身の経験と重ね合わせて書いた素直な感想です。 でも、この感想文を読んでくださった方々が、「読書感想文ってこんな風に書いてもいいんだ」と感じていただけたら嬉しいです。大人の本音の感想が、子どもたちが自分の言葉で書くためのヒントになれば、という願いを込めています。 ぜひ、保護者の皆さん、読書感想文を指導される先生方も、一度子どもたちと同じ本を読んで感想文を書いてみませんか? 子どもたちと一緒に「書く」体験をすることで、新たな発見があるかもしれません。 それでは、わたしの読書感想文をご覧ください。 読書感想文のポイントはこちら 【2025年度読書感想文】『スラムに水は流れない』ヴァルシャ・バジャージ/作、村上利佳/訳(小学校高学年向け課題図書) 流れない水と流れる言葉 ― 『スラムに水は流れない』を読んで 蛇口をひねる、その当たり前の奇跡 私が授業で生徒たちに問いかけることがあります。「今日、何回蛇口をひねりましたか?」と。はじめ生徒たちは驚いた表情を見せます。そして「えっ、覚えてないです……」と戸惑いながらも、「朝、顔を洗ったとき……」「歯を磨いたとき……」「給食の前に手を洗って……」と指を折り始めます。しかし数え進めるうちに「あ、でも水筒に水を入れたのを忘れてた」「あと、家に帰ってからも……」と混乱し、最後には「先生、多すぎて分からないです」と肩をすくめてしまいます。 私たちの生活において水は、呼吸と同じくらい無意識の存在であり、その「あたりまえ」が実は大きな奇跡であることに、日常の中で気づくことはほとんどありません。 『スラムに水は流れない』を読み終えた夜、わたしは部屋の蛇口をゆっくりとひねりました。透明な水が、音を立てて流れ出します。インド・ムンバイのスラムに住む12歳の少女ミンニの目を通して、私は初めて「水」という存在を意識的に見つめるこ …
こんな子におすすめ! 歴史や人類学に興味のある子 未知の文化や風習について知りたい子 困難を乗り越えて夢を追いかける人の話が好きな子 女性の先駆者の生き方に触れたい子 冒険や調査旅行の話に興味がある子 チームワークの大切さを学びたい子 本の紹介 明治から昭和にかけての日本。女性の社会進出が難しかった時代に、夫である鳥居龍蔵とともに世界各地を旅し、人類学研究に貢献した鳥居きみ子の生涯を描いた一冊です。きみ子は、単なる「偉人の妻」ではなく、フィールドワークの最前線で活躍し、特に民族学の発展に大きく貢献しました。モンゴルや中国など、当時の日本人女性にとって未知の土地で調査を行い、現地の女性たちからしか得られない貴重な情報を集めることに成功しました。時代の制約の中で、自分の可能性を追求し続けた先駆者の物語です。 購入はこちら 購入ページ(Amazon) 本の解説 鳥居きみ子とは 鳥居きみ子(1873-1946)は、著名な人類学者・考古学者である鳥居龍蔵の妻であり、同時に優れた研究協力者でした。明治6年に徳島で生まれ、知人の紹介により東京で出会った龍蔵と結婚。夫や子供達と共に、モンゴルを中心に数々の調査を行いました。 参考:鳥居龍蔵について(徳島県立鳥居龍蔵記念博物館) 鳥居きみ子についてのパンフレットが掲載されています 時代背景 きみ子が活躍した明治から昭和初期にかけての日本は、女性の社会進出が極めて限られていた時代でした。女性参政権もなく、高等教育も男性中心で、女性の学問追求は一般的ではありませんでした。 参考:働く女性のあゆみ(一般財団法人 女性労働協会) そんな時代制約の中で、きみ子は「家族とともに調査・研究する」という独自の形で研究活動に参加していきます。 きみ子の研究貢献 本書では、きみ子が特に民族学分野で果たした役割に光を当てています。彼女は現地の女性たちとの交流を通じて、男性研究者だけでは知ることができなかった伝統的な生活習慣、儀式、歌、織物などの情報を収集しました。 調査旅行の足跡 きみ子は夫とともに、中国やモンゴルなどを訪れました。当時の交通手段や宿泊施設、食事事情を考えると、これらの旅は現代の私たちが想像する以上に過酷なものだったでしょう。それでも彼女は持ち前の強さと適応力で、どんな環境でも研究活動を続けました。 鳥居龍蔵が撮影した1906年頃のモンゴ …