【生徒作品】『妖怪と文化』(新中2 M・Mさん)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を通して、実践的な発表の仕方を学んでいきます。

今回は、2019年3月に行われた「リテラ 生徒作品発表会」より、新中2 M・Mさん『妖怪と文化』を掲載致します。

日本らしさという継続したテーマで研究を続けてきたMさん。今回は、日本で伝承される「妖怪」について調べ、文化とは何かについて考えました。

その他の発表動画は、「2019年3月 生徒作品発表会 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

講師からのコメント

一昨年の「お茶」、昨年の「和菓子」につづいて、今年は「妖怪」と、日本らしさという継続したテーマを持って研究ができました。また、「文化」という抽象的な言葉の意味を理解することで、妖怪も文化なのだろうか? という問いに答えることができました。これからも、物事の成り立ちや、意味について考えることを大切にしていきたいですね。

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
妖怪も日本の文化だということがわかる作品です。また、妖怪が好きになる作品です。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
前回はお茶と和菓子という、日本の文化にかかわる作品でした。今回も日本らしいテーマにしようと考え、自分が好きな妖怪について発表しようと思いました。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
自分の好きな妖怪を調べたことです。わたしは九尾の狐が好きです。
作品づくりで難しかったことは何ですか?
妖怪に関する本の文章をまとめたことです。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
妖怪は、人間の恐怖や不安、神秘感などからうみだされたことを初めて知りました。妖怪も文化ということがわかったので、未来の人たちに残していけるようにしたいです。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
発表するときに前を向くことです。
来年、研究したいことはありますか?
次は、新3年生なので、高校生に向けて、将来のことについて研究をしたいです。
この作品を読んでくれた人に一言
ぜひ、妖怪について恐怖感を持たずに友達や家族に話してみてください。聞いてくださって、ありがとうございました。

生徒作品

新中2 M・Mさん『妖怪と文化』

私は、リテラの発表会で、今まで、お茶や和菓子などについて、調べてきました。今年も、日本らしいものについて調べようと思い、私の好きな、妖怪をテーマにしたいと考えました。そして、「妖怪がなぜ生まれたのか」「妖怪も日本文化なのだろうか」という問いを立てて、研究しました。

私は、『妖怪文化入門』と、『隅田川の妖怪教室』と、『妖怪ビジュアル大図鑑』という本を使って、研究を進めていきました。

では、妖怪は、どうやって生まれたのでしょうか? 妖怪の始まりは、昔の人が体験した、不思議な出来事でした。例えば、こんな話があります。昔、ある村の人が、仕事をするために山に出かけて、小屋に泊まりました。すると、夜中に、近くの川から、「ショキショキ」と、反復する奇妙な音がしました。翌日、音が聞こえたあたりに出かけて、音の原因を調べましたが、分かりません。この奇妙な音のする現象は、小豆を洗っているときの音に似ているので、「小豆洗い」と呼ばれるようになりました。

このような話は、恐怖や不安、神秘感などから、語られました。やがて、人々は、なにかはわからないけれど、不思議な出来事を起こした「何者か」がいると、考えるようになりました。姿は、わからないけれど、「小豆洗い」という妖怪がいて、「ショキショキ」という、小豆を洗っているような音をたてているのです。つまり、不思議な出来事を起こしている「なにか」として、「妖怪」が考えられるようになったのです。そして、その「何者か」に姿形があたえられ、キャラクターとしての妖怪が、生まれました。

これが、江戸時代の終わりごろに書かれた、「絵本百物語」の「小豆洗い」です。面白い顔をしていますね!

キャラクターができあがると、妖怪は娯楽の対象にもなり、様々な妖怪が考えられました。現在では、『妖怪ウォッチ』や、『ゲゲゲの鬼太郎』など、アニメとして様々な妖怪が考えられ、人々に楽しまれています。

では、私の住んでいる文京区の、小石川伝通院というお寺に言い伝えられている妖怪について、紹介したいと思います。あるとき、お寺で、下働きしていた男が、僧侶とともに出かけて、いなくなり、二日後に、寺の寮で見つかりました。気がついた男が語るところによると、僧侶の供をしていると、体が自然に空へのぼり、そのまま、千葉県にある成田不動という、有名なお寺にお詣りしたというのです。男は、「天狗のしわざだ」と、話したそうです。

天狗は、赤い顔と高い鼻が特徴の妖怪です。天狗にさらわれて不思議な体験をした人や、不思議な力を身につけて帰ってきた人の話が、数多く伝わっています。このように、このお話にも、体が自然に空へのぼるという、不思議な出来事がありました。僧侶は、実際に天狗を見たわけではありませんが、不思議な出来事の仕業は、天狗だと考えたのです。つまり、妖怪をうみだしているのは、人間の想像力だと分かります。

さて、「妖怪も文化なのだろうか」と考えるために、私は、辞書で「文化」という意味を調べてみました。すると、文化とは、「自然に対して、芸術、学問、道徳、宗教、など、「人間の精神の働きによって、つくり出されたもの」と書いてありました。また、「人間の生活様式の全体。人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の総体。それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり、学習によって伝習されるとともに、相互の交流によって発展してきた。」という説明もあります。

例えば、日本文化といえば、和食や和菓子、歌舞伎などを思いつくかもしれません。和食や和菓子は、日本で昔から伝えられてきた食生活であり、芸術としての面もあります。歌舞伎は、日本を代表する舞台芸術です。

さて、妖怪も文化なのでしょうか? 私は、妖怪も文化だと思います。なぜなら、妖怪も、人間の恐怖や不安、神秘感といった、精神の働きによってつくりだされているからです。また、妖怪は、人の心の中に生まれる点では、無形の文化でもあり、絵巻に書かれたり、アニメ化されたりする点で、有形の文化でもあります。それぞれの地域に、固有の妖怪がいて、昔から今にいたるまで語りつがれ、日本中に広がっていきました。このようなことから、妖怪も日本の文化の一つなのです。

この研究を通して、私は、妖怪も文化の一つだということがわかって、妖怪の素晴らしさを、色々な人にも知ってもらいたいと思いました。だから、私は、家族や友達や、子どもたちに、妖怪のことを話したいと思います。そうすることで、文化が未来の人たちに引き継がれていくと思います。

これで、私の発表を終わります。聞いてくださってありがとうございました。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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