【生徒作品】『これからの社会の決断』(新高専4 Y・Kくん)


リテラ言語技術教室では、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を通して、実践的な発表の仕方を学んでいきます。

今回は、2019年3月に行われた「リテラ言語技術教室 生徒作品発表会」より、新高専4 Y・Kくん『これからの社会の決断』を掲載致します。

将来への進路選択が間近に迫り、不安や焦りが募ってきたYくん。研究では、社会の産業構造や就職状況について調べ、自分がとるべき方針について模索しています。

その他の発表動画は、「2019年3月 生徒作品発表会 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

講師からのコメント

変わり続ける社会に対し、今、何ができるか。見えてきたのは、決して楽ではない道筋でした。学びの目標は、考え、選択をし、自分の人生を形づくることです。これからの社会の姿を見すえ、ともに、学び続けましょう。

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
現代社会とパイプラインシステムの問題点を指摘し、それに対する心構えを綴った作品です。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
社会に出る時期が近づいてきたからです。社会に出た後で、どう行動するのかについても知りたいと思いました。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
現代社会の問題点の一端を垣間見ることができたことです。特に、正規雇用と非正規雇用の関係などが衝撃的でした。
作品づくりで難しかったことは何ですか?
大量の情報をまとめるのが難しかったです。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
情熱を燃やし続ける意志を保つのが、一番大切で、一番難しいということです。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
発表では、もっとハキハキ抑揚をつけて喋りたいです。研究では、スケジュールを意識して、最後まで書ききりたいです。
来年、研究したいことはありますか?
また、社会や文化を調べるのかもしれません。
この作品を読んでくれた人に一言
ひとつの考え方に縛られず、自分の考えに疑問を持ってください。

生徒作品

新高専4 Y・Kくん『これからの社会の決断』

私は今、高校三年生であり、この先の社会でどのような人生を歩むか疑問と不安があります。このまま社会に出て、本当に働いていけるのでしょうか。今回は、その答えを探して、教育と社会について調べました。

このまま勉強していれば、企業に就職して、働けるのでしょうか。結論を述べると、それは難しくなっています。現代の教育システムは、移り変わっていく社会と、ずれ始めています。そのずれが最もよく表れているのが、パイプラインシステムです。パイプラインシステムとは、日本の教育のシステムのことであり、学校を卒業した際の学歴によって、その後の人生が決定されるシステムでのことをいいます。このシステムの利点は、学校のレベルによって、就くことが可能な職業が見通せ、少し努力すれば、ラインの分岐点で上のレベルの学校に入れ、より良い職業に就くことができる点です。つまり、このシステムは、希望を抱くことを可能にしながら、職に就けないリスクを最小限に抑える働きをしていました。

しかし、このパイプラインシステムが、現在の社会とずれ始めています。まず、パイプラインシステムの問題点は、ライン通過中に得られる知識や技能よりも、ラインの分岐対策で得られるもの、つまり受験勉強のほうが重要視されることにあります。これにより、社会も学校における教育内容にはあまり期待せず、入社後に、業務上の知識や技能の習得をするシステムをとってきました。特に、会社の業務に関するさまざまな知識を持っているオールラウンダー、すなわち、その会社の専門家になることが、求められてきたのです。しかし、終身雇用が崩れた結果、その会社だけで一生を過ごすことは、難しくなりました。また、インターネットが普及し、より速いスピードで、さまざまな情報の取得や人脈の構築ができるようになったため、複数の部署を回って得た、その会社だけの情報や人脈が、それほど価値を持たなくなっています。この結果、会社は、新入社員を教育するよりも、最初から専門知識を持った人を求めるようになっています。こうした動きは、人間の知的生産による業務の割合が大きい産業、すなわち、知識集約型産業で増えています。

パイプラインシステムが意味を持たなくなっているならば、機能しなくなるはずですが、そうはなっていません。なぜなら、人間の労働力による業務の割合が大きい産業、すなわち労働集約型産業で、いまだに、新卒採用の慣例が残っているからです。新卒採用とは、就職経験のない、学校を卒業したばかりの学生を、企業が採用することをいいます。新卒採用のメリットは、自分の持つスキルが問われないため、大企業に就職しやすいというものがあります。「新卒カード」とは、まだ働くためのスキルを持っていない学生が、就職に優遇されることを指して言います。つまり、パイプラインシステムがつなげている場所は、専門的な知識が必要のない、労働集約型の産業であると言えます。

しかし、新卒採用で、大企業に就職できる学生は、ごく一握りです。また、厚生労働省によると、新卒採用で就職した学生のうち、3年以内に離職する人が3割を超えます。それを見越して、多めに学生を採用する企業もあると報告している専門家もいます。こうして正社員への就職を逃した人、新卒採用後離職した人は、多くが非正規雇用となります。新卒採用の慣例により、新卒での就職を逃すと、やり直すことが難しくなるからです。非正規雇用は、正規雇用と比べて、給与が少なく、雇用状態も不安定な雇用形態のことで、今まで正規雇用が行っていた職種にとって代わっています。その結果、非正規雇用者が増え、正規雇用の枠が減っています。また、近年では、正社員になったとしても、極端な長時間労働や過剰なノルマを課せられることがあり、これがさらに非正規雇用者の割合を増やすことにつながっています。なぜなら、それで仕事が回っているなら、これ以上、正規雇用者の枠が増えないからです。

これまで見てきたように、教育におけるパイプラインシステムと社会の実情は、ずれ始めています。以前は、一定の教育ラインにいることで職業に必ず就けました。しかし今はそれがあっても、その学歴に合った職業に就けるかは未知数であり、望む職業に就けるかは個人に降りかかる偶然的出来事に過ぎません。つまり、社会ではなく個人の責任になってしまいます。周りと同じように普通に勉強すれば、普通に就職でき、普通に家庭を持てるというイメージは、もはや夢物語なのかもしれません。

パイプラインシステムとは関係なく、専門技能を求める会社が増えている一方、パイプラインシステムに乗って大企業を目指す学生と、中途採用を阻む新卒採用の慣例があります。こうした状況で、私達がするべきことは、何なのでしょうか。それは、大企業志向を捨て、自分の能力を活かせる仕事を探すことです。そのために必要なことは、自分の専門技能を育て続ける意志を持つことです。学生のうち、あるいは就職した後でも、専門技能や資格を身につけ、それらを求める企業とのマッチングを目指すことが、自分にあった仕事を作ることに繋がります。たとえば、専門家になるためには、10,000時間が必要であると言われています。そのために当てる時間を、自分で確保しなければなりません。また、いきなり環境を変えても、挫折することが多いです。副業などで人脈と技術を手に入れ、その上で転職するといった慎重さが必要になるでしょう。さらに、高齢化によって、私達は、定年を越えても働き続けなければいけません。平均寿命は伸び続けており、日本では、2050年に女性の平均寿命が90.29歳、男性の平均寿命が83.55歳となります。平均寿命には、0歳で亡くなった場合なども含まれているため、65歳から何年生きるかという平均余命で考えると、さらに高齢になります。現在でも、現在65歳まで行きた場合、男性の4分の1、女性の2分の1が90歳まで長生きしています。将来的に、100歳を越えることも予想されます。こうした時代、ひとつの会社や働き方にこだわり続けるメリットはありません。自分が好きなものや、それに関連するものを探求し、極めたいという情熱が、今後の社会で重要になっていくでしょう。

この研究を通して、私は、続ける事と挑戦することの両立は、難しいけれど、やらなければ生きていくことができないと感じました。みなさんも、ぜひ、自分のやりたいことや、好きなことを、探し続けてください。

これで発表を終わります。聞いてくださって、ありがとうございました。

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カテゴリー: 生徒作品

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