イメージの力とことばの力

作文が書けない。本を楽しめない。あるいは、読解問題が解けない。算数・数学の文章題が解けない。
それはもしかすると、心の中に「イメージ」がつくれていないからかもしれません。

イメージ力不足が学びを遠ざける?

作文を書いている子ども達を観察したことがあるでしょうか。
じっと原稿用紙を見ている場合。これは大丈夫。
空中を見て静止している時。これも多分大丈夫。
キョロキョロして落ち着きがないとき。これは、声をかけた方がよいでしょう。

私たちは、自分の外にある何かを書くのではありません。自分の内にある世界を書きます。そのためには、「自分の中のイメージ」に意識を向け続けなければなりません。しかし、子ども達にとって、それはなかなか難しいことです。イメージは、放っておくと、消えていきます。イメージを保ったり、鮮明にしたり、その中を歩いたりするのは、実はとても集中力が必要なことなのです。

ですから、作文を書いているとき、自分の内面ではなく、周りの人や違う場所に意識が向かっている様子なら、声をかけて、いったん休憩をしたり、話し合ったりしたほうがよいでしょう。

イメージが得意な子・苦手な子

元から、イメージをするのが得意な子もいます。そうした子は、普段から、心の内にイメージの世界を保ちながら生活しています。あることばを聞いた瞬間、その色や形が頭の中につくられます。イメージに引っ張られてしまうことはあるかもしれませんが、本の世界、言葉の世界を自由に歩くことができます。


一方、イメージが得意でない場合は、自分の内面よりも、外側の世界に意識が向きがちです。現実を生きるという意味で、それは決して悪いことではないのですが、「今・ここ」にないものや目に見えないものを考えなければならない場面では、途方に暮れてしまうことがあります。

イメージ力を育むサポート

講師と対話をしながら課題を進める生徒の様子

お風呂に入っているときや、ぼんやりしているときに、よいアイデアがひらめいたという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。自分の内面との通路を開くには、リラックスする必要があるというのは大切なポイントです。

わたしたちは、子どもたちの心の中で何が起こっているのかを、外から見ることはできません。ですから、子どもがなぜ書けないのか・読めないのかがわからず、厳しいことばをかけてしまうことがあります。そうすると、子どもたちはその場をどう切り抜けるかという現実問題に対処しなければならず、イメージをするどころではなくなります。そうしてさらに書けなくなる・読めなくなるという悪循環が生まれます。

作文がどうしても書けないとき、必要なのは、安心できる環境と、イメージしやすくするサポートです。関心と共感を重視した対話をする・構成を一緒に考える・一緒にイメージをつくる・写真や動画を活用するなどのサポートをしてあげましょう。これらのサポートについては、次のnoteの記事に記載しています。

読むときも、同じように、イメージの力が必要です。キャラクターの表情や行動、象徴、論理のつながり、テーマなど、書かれていないことまでも読み取ることが「読む」ことには含まれます。本を読むのが嫌いという子は、文字から、そうしたイメージをつくれていない可能性があります。

本が楽しめない場合も、作文の時と同じように、サポートが必要です。声に出して読み聞かせてあげる、作中に出てくる物をインターネットで検索して見せてあげる、内容を言い換えてあげるなど、サポートを通して、バラバラになっていることばのピースを、一つのテーマを持った文章に組み直してあげます。本質的な読解の指導とは、その子の内的なイメージを一緒につくることであり、一方的な解説ではありません。

イメージの力を育む

リテラでは、「イメージの練習」という課題があります。次のページに掲載されているような、自分の内面にイメージをつくることに特化した課題です。
最初はとまどってしまう子も、しだいに、自分の内側に世界がつくれることに気づいていきます。

日々の生活の中でも、読書だけでなく、想像力をかきたてる絵画や映画にふれることや、自由に絵を描いたり、物語をつくったりすること、また、日記などで自分の考えや思いを文章にする習慣をつくることなど、イメージの力を育む取り組みは多くあります。

イメージの力は、学びの本質です。
イメージの世界に注目し、豊かな学びをつくっていきましょう。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 教育コラム

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