【生徒作品】『言葉と世界』(新中1 R・Yくん)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を通して、実践的な発表の仕方を学んでいきます。

今回は、2019年3月に行われた「リテラ 生徒作品発表会」より、新中1 R・Yくん『言葉と世界』を掲載致します。

インターナショナルスクールに通うRくんは、言葉について調べるうち、それが「人間関係」や「自分」、そして「世界」に関わるものであると知りました。

その他の発表動画は、「2019年3月 生徒作品発表会 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

講師からのコメント

言葉がつくる「関係」「自分」「世界」。今回学んだことは、R君のこれからの生き方にも、大きく関わっています。どのような関係をつくりたいか。どのような自分になりたいか。どのような世界を生きたいか。これからも、考えていきましょう。

生徒作品

新中1 R・Yくん『言葉と世界』

僕は、小さいころから、インターナショナルスクールに通っていました。学校では、友達とは、英語で会話をします。しかし、学校の外で日本語を話す時、うまく表現ができないことがありました。言葉によって、みんなが僕をどう見るのかが、変わってしまうのです。今回、僕は、言葉が、私たちに、どのような影響をもたらすのかについて、考えてみることにしました。

研究は、菅野仁さんの『友だち幻想』や、金田一秀穂さんの『15歳の日本語上達法』、エラ・フランシス・サンダースさんの『翻訳できない世界のことば』など、言葉に関する本を読んで、進めました。

研究を通して、僕は、言葉が、人間関係をつくること、自分をつくること、世界をつくることを知りました。

言葉は、人間関係を作ります。人間は、言葉がなければ、生きていけません。なぜなら、他者とのつながりを、作れないからです。他者とのつながりを得る場合は、言語が必ず使用されます。うまく自分のことを表現できず、他者とコミュニケーションをとることに失敗することもありますが、これが経験になり、少しずつ、関係を持てるようになります。一方、言葉には、人間関係を傷つけてしまう力もあります。友達と話している時に、ある何気ない言葉で自分が傷ついたり、そのつもりがないのに、知らないうちに友達を傷つけたりしていることがあります。このようなことがないように、自分が使う言葉を、常に意識して、正しく用いることが、大切です。言葉には、さらに恐ろしい力もあります。例えば、学校などで、その場にいない人の悪口を言ったりします。自分が周りの人からいじめられたくないから、先回りして、他の人を悪く言うのです。しかし、そうすることによって、また、自分も悪口を言われるのではないかという不安が、こみ上げてくるのです。このように、言葉によって、私たちは、さまざまな関係を築いています。子どもから大人になるプロセスにある十代の人たちは、他者とコミュニケートする仕方を学ぶ、大切な時期です。

言葉は、自分をつくります。私達は、相手と言葉を交わすことによって、情報の伝達のほか、思いや感情といった、情緒的側面の交感も重ねることができます。しかし、最近の若い人たちは、「ムカつく」や「ウザイ」といった言葉を、よく使います。こうした言葉を、『友だち幻想』を書いた菅野仁さんは、「コミュニケーション阻害語」と呼んでいます。「ムカつく」や「ウザイ」といった言葉は、自分の感情を一言で表現できる便利な言葉で、その場の雰囲気にも対応できます。しかし、一方で、不快なものとじっくり向き合うことや、自分と違う考えを持つ他者との対話を、阻害してしまいます。こうした言葉だけに頼っていると、使える言葉が、少なくなってしまいます。こうした言葉は、人の心を表現したり、論理を築き上げたりするには、粗すぎるのです。粗い言葉を使っていると、相手のことを否定的にしか思えなくなり、いつかは他者に背を向けてしまう可能性があります。また、他者だけではなく、自分にも向き合えなくなってしまいます。自分を成長させるためには、自分をとらえなければなりません。心に浮かんでくる不安や、恐れているものを言葉にし、理解する必要があるのです。ですから、私達は、自分の存在を知るために、言葉をもっとたくさん知る必要があります。言葉のストックが増えていくほど、自分と他者との関係や、自分が恐れているものを理解していけるようになります。

言葉は、世界をつくります。私達は、普段から、言葉でくくることによって、物事を見ていると、金田一秀穂さんは述べています。例えば、夕ご飯が、お刺身だとします。「今日のご飯はお刺身よ」と、言われると、食欲がわいてきます。しかし、「今日のご飯は、死んだ魚よ」と言われると、食欲がなくなります。このように、同じものでも、どんな言葉でくくるかによって、物事の受け取り方が、変わってしまうのです。もっと言葉を知ることによって、これまで見えなかったものが、見えてきます。エラ・フランシス・サンダースさんの『翻訳できない世界のことば』から、みなさんが知らないような世界の言葉を、二つ紹介します。ドイツ語の言葉「ヴァルトアインザームカイト」は、森の中で、一人、自然と交流する時の、ゆったりとした孤独感を表す言葉です。ハンガリーでは、誰かと初めて出会って、直感的に、その人がいい人だと感じるとき、その人は「シンパティクシュ」だと表現します。こうした気持ちは、皆さんも感じたことがあると思いますが、このように、言葉にすることによって、その感覚を、よりとらえやすくなります。世界には、たくさんの言葉があります。たとえ、同じ経験をしても、どのような言葉でくくるかによって、意味も変わってきます。言葉をもっと知ることによって、世界を豊かだと思えるようになり、人生を深く味わえるようになります。そして、なによりも、言葉を知ることによって、他者と、自分の感覚を共有できるようになります。

この研究を通して、僕は、言葉がどのように、現在の私たちや、世界を形づくっているのかを学びました。皆さんも、普段から、使う言葉を意識すると同時に、読書をして、情緒や論理に関する言葉を養っていってください。

これで、発表を終わります。聞いてくださって、ありがとうございました。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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