リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。
今回は、『私の物語』(新中2 A・Mさん)を掲載致します。
小さいころから本が好きだった中学2年生のAさん。読書体験とは「死と生」であることに気づき、物語を読むことや、自らを表現する物語を作ることについて研究をはじめました。
作品について
本人の振り返り
- これはどのような作品ですか?
- 自分にとって物語とは何なのかを考える作品。
- どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
- 昔から物語が好きでよく読んでいたからです。
物語が好きで、物語の意味を知りたかったからです。 - 作品づくりで楽しかったことは何ですか?
- 物語をいろいろ読んだこと。ミヒャエル・エンデの『モモ』『はてしない物語』は、この研究があったからこそ出会えた物語だと思います。
- 作品づくりで難しかったことは何ですか?
- 発表会前々日に、最初から原稿を考え直したこと。一から考え直すから、焦ったし、難しかったです。
- 作品作りを通して学んだことは何ですか?
- 物語とは、自分にとって死と生だということ。
- 次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
- もっと慎重にテーマを決めること!最初は、好きという理由で漫画をテーマにしようしていたが、範囲が広すぎてまとまらなかったからです。
- 来年、研究したいことはありますか?
- 今のところは考えていません。(思いつきません)
- この作品を読んでくれた人に一言
- 読んで下さり、ありがとうございます!
生徒作品
『私の物語』(新中2 A・Mさん)
「物語」とは何なのでしょうか。私にとって物語とは、「死と生」だと思います。なぜなら、私は本を読んでいる時、意識はあるけれど、自分のことや現実のことなど、何もかも忘れているからです。
私は小さい頃から本を読んでいますが、物語を読んでいるときに話しかけられて応答したことは、ほとんどありません。意識はあるけど、周りの声も聞こえず、自分のことも忘れているというところが、「死」に似ていると感じました。逆に、物語を読み終えた時は、周りの声も聞こえるようになり、その時は達成感があります。この、周りの声も聞こえるようになり、自分のことも、現実のことも思い出すというところが、「生」に似ていると思いました。
私は次に、物語を書くということについて考えてみることにしました。
まず、物語を書いている自分を想像してみました。私の心は落ち着いていて、目をつぶって考えています。書きたい気持ちはあるけれど、物語のアイディアが浮かばなくて、悩んでいる自分が見えました。
アイディアが浮かばないときの気持ちをイメージにすると、広大な砂漠に木が点々と生えている風景が浮かびました。私は物語を書きたいと思っているけれど、アイディアが浮かばないのが嫌で、物語を書こうとしないのだと思います。ですが、アイディアが沢山浮かんでくるなら、物語を書きたいと思います。以前は、物語やキャラクターを沢山作っていたけど、今はあまりかけていません。
なにかもやもやしたものが心の中にあり、それをうまく表現できない。皆さんも、このような経験はありますか?
実は、この研究も、テーマについて、本当に悩んでいました。
はじめは、物語について考えるため、漫画の研究からはじまり、ミヒャエルエンデの小説を読み、様々な物からヒントを得ようと悩んでいました。それでも、私の心の中の、もやもやしているものはなくなりませんでした。
私は、岡本先生に「なぜ人は物語を作るのですか?」という質問をしました。すると、「表現のレベル」についての表を私に見せてくれました。この表は、こころを言葉にする時の段階が書かれています。下の5つが言葉にならない表現で、上の2つが言葉による表現です。
みなさんにも、言葉にできなくても、心の中に浮かんでくる情景や情動、あるいは色や音楽、空気感、形などがあるのではないでしょうか。そうした言葉にできないものにこそ、本当の美しさや意味があり、知っているどのような言葉でも、正しく表すことはできないと感じることもあるかもしれません。言葉になっているものも、まだ言葉にならないものも、どちらにも大切な価値があります。
ですが、表現のレベルを行き来できるようになれば、より柔軟に、自分の内面を伝えることができるのです。
私は、いろいろな感情を、風景のようなイメージにしてみました。友達と喧嘩して、どちらが正しいのかわからないことがありました。そんな時は、濃い霧の中で迷っている自分が浮かびます。寒くて、湿気が体にまとわりつくように、じめっとしています。
大好きないとこに会った時は、雨上がりで、虹がかかっている空が思い浮かびました。空はまだ薄く曇っています。草原には水たまりがあって、光っています。こうした表現をすると、自分の気持ちを、ただ言葉にするよりも、より具体的に表すことができるように感じました。
私にとって物語とは、「死と生」だと、最初に述べました。それは、「想像の世界」と「現実の世界」と言い換えることもできます。死があるからこそ生があるように、私は、想像の世界が豊かだからこそ、現実の世界も頑張って生きることができるように感じます。
この研究を通して、自分が思ったことを言葉にできなくても、焦らずに情景などに表すことで、もっと自分の表現ができることを学びました。
さきほど、アイデアが出てこないときの心を、広大な砂漠に木が点々と生えている風景に例えました。しかし、その時、すでに、私は、物語の世界を作っていたのです。もしそうやって世界がつくれるのなら、私も物語をつくりたい、と感じました。
ぜひみなさんも、本を読み、自分の物語の世界を広げていってください。
これで発表を終わります。聞いてくださって、ありがとうございました。