リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。
今回は、『なぜ親と同じことをしてしまうのか』(新小5 K・S君)を掲載致します。
何気ない日常の一コマから、人の心や行動について調べ始めたKくん。ふしぎに満ちた私たちの心が、垣間見えたようです。
作品について
本人の振り返り
- これはどのような作品ですか?
- この発表を聞くと、子供が親と同じ行動をしてることが分かります。
- どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
- 親から同じ行動をしてると言われて不思議に思ったからです。
- 作品づくりで楽しかったことは何ですか?
- 新しい発見をするたびにどんどんどんどん楽しくなった事です。
- 作品づくりで難しかったことは何ですか?
- 最初の文を考える事です。
- 作品作りを通して学んだことは何ですか?
- 文章から大事なところを取ることです。
- 次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
- 次はもっと堂々としたいと思います。
- 来年、研究したいことはありますか?
- 体の仕組み。右と左はどうつながっているのか。
- この作品を読んでくれた人に一言
- 保護者の方達の親は子どものしてほしくないことはしないで、して欲しい事をしてください。子どもは時々自分で自分の行動を決めて下さい。
生徒作品
『なぜ親と同じことをしてしまうのか』(新小5 K・S君)
皆さんは、親と同じ行動をしたことがありますか。僕は、お母さんと同じ行動をしていると、お母さんに言われたことがあります。たとえば、ゲーム機にエラーが出たら、ゲーム機のカセットを入れるところに、息をふきかけることなどです。
今回、僕は、なぜ子どもは親と同じことをしてしまうのか、研究しました。
まず、家族にアンケートを取って、その結果をまとめることにしました。
最初に、自分の両親がやっていることを、 自然にしてしまったことがあるかを聞きました。「いいえ」が16.7%、「どちらとも言えない」が 83.3%でした。「はい」という答えがなかったのが、ちょっと意外でした。
さらに、両親としぐさや行動が似てると、誰かに言われたことがあるかを聞きました。「はい」が33.3%、「いいえ」が16.7%、「どちらともいえない」が50%でした。
これらの結果から、自分が両親と同じ行動をしているかはわからないのに、他の人からそう言われる確率が高いことがわかりました。つまり、私たちは、自分が気づいていないうちに、親と同じ行動をしているのかもしれません。
ここで、モデリング行動について、説明します。
1961年、アルバート・ バンデューラが、ある実験をしました。まず、空気で膨らませたおきあがりこぼし人形がある部屋に、子どもたちを入れます。最初の班の子どもたちは、自由に遊ぶことが許されました。2つ目の班は、大人一人と一緒に同じ部屋に入りました。その大人は、部屋を去るまで、静かにおもちゃで遊んでいました。3つ目の班も、大人一人と一緒に部屋に入りましたが、その大人は、人形を叩いたりけったりしました。
そして、子どもだけを残して、どのように行動するのかを観察しました。最初の班も、2つ目の班も、人形でふつうに遊んでいました。しかし、大人が人形を叩くのを見た3つ目の班は、大人が部屋を出て行くと、すぐに人形を叩きはじめました。
この実験から、子どもたちは、両親のような、周りの人の行動を見て学習していると思われます。
ところで、皆さんは、親の行動を真似しようとして、真似していますか?僕は、親の真似をしようとして、行動しているわけではありません。しかし、同じ行動をしていると言われてしまいました。ですから、これは、無意識にやっていたと考えられます。
無意識とは、心の中の、自分でも意識できない部分です。
1980年代、リベット博士は、こんな実験をしました。
被験者は、2.56秒で一周する時計を見ながら、自分が指を動かそうと決意した瞬間を覚えていきます。
自分で指を動かそうと思った時刻を1、脳が指令信号を出した時刻を2、指が動いた時刻を3として測定した場合、このままの順番になると考える人が多いのではないでしょうか。
しかし、実験結果は2→1→3だったのです。
被験者が指を動かそうとした時刻の、約0.35秒前に、指を動かす指令信号が発生していました。
この実験結果から、自分の行動は、すべて自分で決めているわけではなく、ある程度、脳が自動的に決めていることがわかりました。
これら全ての結果をまとめると、私たちは、両親のような、周りの人を見て、行動を学習しています。そして、自分でも気づいていないうちに、その行動をしていると思われます。
この研究を通して、子どもは、親の真似をすることがわかりました。だから、保護者のみなさんは、真似をしてほしくないことをせずに、真似をしてほしいことをすることが大切です。
また、子どもは、自分の行動を自分で決めることが大切です。
ぼくも、できるだけ、自分の行動を自分で決めていきたいです。
これで、発表を終わります。
聞いてくださって、ありがとうございました。
- 木村直之(編)(2018). Newtonライト 脳といしき ニュートンプレス
- トム・ジャクソン(著) 清水寛之(監訳) 井上智義(監訳)(2020). 図鑑心理学 ~歴史を変えた100の話~