『読解力と心』(新小6 D・T君)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。

今回は、『読解力と心』(新小6 D・T君)を掲載致します。

心情読解の問題に難しさを感じることの多いという新小学6年生のD君。他者の心への理解を深めるために、ハロルド・ケリーの「共変モデル」について学びました。

その他の発表動画は、「2022年 生徒作品発表」をご覧ください。

作品について

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
人の心知るためにケリーの立方体について調べた研究です。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
人物や登場人物の気持ちが分からないと感じることが多いからです。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
ケリーの立方体を使うことで、人の行動の原因が分かるようになったことです。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
相手の気持ちを考える時にケリーの立方体を使うとわかりやすいということを学びました。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
聞き手のほうを見ること、つっかえないようにすることです。
来年、研究したいことはありますか?
スポーツカーの種類についてです。
この作品を読んでくれた人に一言
ドラえもんを見るときに深く考えすぎないようにしてください。

生徒作品

『読解力と心』(新小6 D・T君)

ぼくは、国語の物語文で、登場人物の気持ちを考えるときにこまってしまいます。その人物の思っていることや考えている事が分からない事が多いからです。日常生活でも相手が言葉や表情に出してくれないと分からない事もあります。だから、人の心の研究をしたいと思いました。

研究は、『クリティカルシンキング入門編』を参考にして進めました。

人の思っていることや、感情などをしるためには、その人の表情やその人のしぐさを見ればよいと思います。たとえば、相手が考えていれば首をかしげていたり、相手が怒っていればするどい目つきで見てきたり、迷惑そうに腕を組んだりしていると考えられます。

しかし、いつも表情やしぐさの通りに相手が思っているわけではありません。たとえば、『ドラえもん』では、のび太たちは、ジャイアンの歌は吐き気がするほどひどい歌だ思っているのですが、ジャイアンはガキ大将なので、そのことを本人の目の前で言ってしまうとぶんなぐられてしまうため、しかたがなくジャイアンの歌はすばらしいといったり、ニコニコしたりしています。

それでは、人の気持ちを知るためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。社会心理学者ハロルド・ケリーは、他人の行動の原因を知るための考え方として「共変モデル」を提唱しました。これは、「ケリーの立方体」とも呼ばれています。

「ケリーの立方体」は、対象、人物、状況の視点から、行動の原因がその人の性格や気分などにある「内的原因」か、その原因がその人の外部にある「外的原因」なのかを知ることができます。高さを「対象」、たてを「状況」、横を「人物」とします。

それでは、「ある日、空き地で、ジャイアンがのび太をなぐった」という例をあげて、ジャイアンの行動の原因について考えてみましょう。

まず、「人物」についてです。その行動をしているのがジャイアンだけなのか、またドラえもんなどほかの人物もそのようなことをしているのかについて考えます。

ジャイアンだけがしている場合、内的な原因も外的な原因も考えられます。たとえば、ジャイアンがむしゃくしゃして殴ったのであれば、内的な原因です。のび太がジャイアンに悪口をいい、ジャイアンを怒らせたのであれば外的な原因といえそうです。ただし、悪口をいわれても、怒る人もいれば、がまんする人もいるので、内的な原因の組み合わせとも考えられます。

一方、みんながのび太を殴っている場合、たとえば、のび太がみんなに嫌われるようなことをしたというような外的原因が考えられます。

次は、対象についてです。ジャイアンが、のび太だけをなぐっているのか、または他の人もなぐっているのかを考えます。

もしのび太だけをなぐっているならば、ジャイアンがのび太のことが嫌いであるなどの、内的原因が考えられます。また、ジャイアンがのび太を嫌う原因がのび太にあるならば、それは外的原因も組み合わさっていると考えられます。

一方、ジャイアンがのび太だけでなく他の人もなぐっているのであれば、それは「ジャイアンが暴力的な性格だから」という内的原因と考えられます。

最後に、状況についてです。ジャイアンが空き地でだけでその行動をするのか、それとも他の場所でもするのかを考えます。

空き地だけで怒っているのであれば、「のび太が野球でへまをし、ジャイアンが怒った」とのように、その原因が一時的で不安定なものだ考えられます。

一方、空き地だけでなく、学校などでも怒っているとそれは、その原因が安定したものだと考えれます。その場合、ジャイアンは怒りっぽい性格だとわかります。きっと、いろんな場所で、怒っているのでしょうね。

このように3つの視点をつかうことで、人の行動が内的原因なのか外的原因なのか、また、それが安定しているのか不安定なのかが判断できます。ジャイアンが空き地でのび太をなぐっていた例について、「他の人はのび太を殴っていない」「ジャイアンは、スネ夫や友達は殴っていない」「ジャイアンは空き地でだけその行動する」という場合は、不安定な外的・内的原因の組み合わせとなります。

しかし、これだけはなぜ、ジャイアンの行動の原因を正確には分かりません。例えば、大事な試合でのび太が三振をして負けてしまったからジャイアンが怒ったということが考えられます。

私達が「人の心」を考える上で大切なことは、その人の事をよく知ることだと思います。この研究を終えて、たとえば妹と遊んでいる時に、言葉にしていなくとも妹がこれはやめてほしいんだなとわかるようになりました。もっと知りたくなったことは、確実に人の心を知る方法です。でも僕は、本当はそんなものはないと思います。だから、心理学などを学び、より人の心を理解できるようになりたいです。

これで発表を終わりにします。
お聞きいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 生徒作品

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