【生徒作品】『性と心の成長』(T・Yさん 新小6)

リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。

今回は、『性と心の成長』(T・Yさん 新小6)を掲載致します。
宝塚歌劇団が大好きなTさん。研究では、漫画『ベルサイユのバラ』の主人公オスカルが、性別に囚われることなく、自分らしく誇りをもって生きる姿を通して、成長期を迎えた自らの性と心の成長を見つめていきました。

その他の発表動画は、「2021年 生徒作品発表」をご覧ください。

作品について

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
『ベルサイユのばら』という物語を中心に、性や心の成長について発表する作品です。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
私は、男や女など、はっきり黒と白に分けるのが嫌いだからです。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
『ベルサイユのばら』について考えることです。
作品づくりや発表で難しかったことは何ですか?
原稿を増やしすぎてしまい、いろいろな内容を、ひとつにまとめることが難しかったです。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
心の成長に、発達段階があることです。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
今まで考えていたことを、十分作品に活かすことができました。
来年、研究したいことはありますか?
「寝る」ことについて。暇があったら考えていることだからです。
この作品を読んでくれた人に一言
男と女とか、黒と白に分けないでくれたら嬉しいです。

生徒作品

『性と心の成長』(T・Yさん 新小6)

今回私が発表したいことは、小さい頃から考えていたことです。私は、保育園の頃に男の子役を演じたことがあります。それは、エルマーの冒険という劇です。私は主人公のエルマー役に立候補しました。すると、みんなが「えーっ」と言いました。先生が怒って「そんなの関係ないでしょ。やりたいものをやればいいでしょ」と言いました。今思うと、女の子の私が、男の子の役を演じることにみんなは驚いていたのです。皆さんならどう思いますか。私は、あの時も今も性別に関係なく、やりたい役をやればいいと思います。

皆さんは、宝塚歌劇団をご存知ですか。「老若男女誰もが楽しめる国民劇」を目指し作られた劇団です。その特徴は、女性だけの劇団ということです。そのため、男性役も女性が演じます。私は、女性が演じる男性に魅力を感じました。私は小さな頃からたくさんの演劇を見てきましたが、性別を超えて役を演じている舞台に惹かれました。女性だけれども、男性のように声が低く、力持ちで、振る舞いがかっこよく、役になりきっていました。私は、性別に関係なく自分の好きなものを演じていい、演じることができるのだと思いました。

宝塚歌劇団の演目で、紹介したい作品があります。『ベルサイユのばら』です。原作は漫画で、作者は池田理代子先生です。『ベルサイユのばら』は、1789年に起こったフランス革命の話です。主人公は、オスカルという貴族の女性です。しかし、家を継ぐ男の子が生まれなかったので、軍人の父親に男子として育てられます。なぜ、この作品を紹介したいかというと、それは、主人公のオスカルが、身分や性別にとらわれない生き方を教えてくれる物語だからです。

漫画が流行っていた1970年代は、男女が分かれている時代でした。女性は、結婚をして子供を生んで育てるというのが普通の生き方とされていました。当時、多くの物語でも、男の子は自分の力で解決していくけれど、女の子は、おとなしく、助けてもらう存在として描かれていました。活躍をしたとしても魔法の力を借りていました。オスカルは、女だけれど、男として育てられたという新しい主人公だと、漫画のあとがきに書いてありました。

では、オスカルの心の成長についてお話しします。後のフランス王妃マリーアントワネットが、14歳でオーストリアからやってきた時、オスカルも同じ14歳でした。14歳は思春期です。思春期は、自分のことについて悩む時期です。しかし、オスカルは女性だけれど、男性として生きることにも、自分が貴族で軍人であることにも疑問を持っていませんでした。でも、その後さまざまな人との出会いから、性や生き方「自分自身とはいったい何なのか。」と悩んでいきます。そして、18歳でスウェーデンの貴族フェルゼンと出会い恋に悩みます。なぜなら、フェルゼンは、オスカルがつかえる マリーアントワネットの恋人だからです。オスカルはその後、青年期に入ります。青年期は、仕事を通して仲間とも絆を深めたり、恋愛をして、人との信頼関係を結んで行く時期です。オスカルも、仕事や恋などを通じて、たくさんの人との関りがあります。しかし、「孤独」も強めていきます。オスカルは、アントワネットから「あなたに女の心をもとめるのは無理なことだったのでしょうか」と、言われてしまいます。平民の悲惨な暮らしを知り、身分制度に悩みながらも、貴族だからと誰にもわかってもらえません。オスカルは軍人である自分を誇りに思っていました。しかし、国民に刃を向ける近衛隊は、真の軍人ではないことに気づき悩みます。さらに、貴族のジェローデルとの結婚を父親から押し付けられます。「軍人から女になれ」と言われ、オスカルは泣いていました。今まで、男性として生きてきたのに、女性として生きることを強制され苦しみました。オスカルは、精神的に大きなダメージを受けました。しかし、オスカルは、その後立ち直って行きます。

なぜ、立ち直ることができたのか、お話しします。オスカルは物語のはじめ、本当にバラのような存在でした。美しさもあったけれど、他者に棘を向けていました。愛するフェルゼンのことも警戒していいました。けれど、性や生き方をについて悩むことで、だんだん棘がなくなって、柔らかくなっていきました。棘がなくなっていったこと、そのことが心の成長なのです。オスカルは成長してバラから、最後は歴史上の小さな歯車になっていきました。自分は小さくて、弱い存在だと告白します。それでも、フェルゼンに失恋したオスカルを支え続けた使用人のアンドレは、オスカルのすべてを愛していると言ってくれました。「生まれてきてよかった」と互いに伝え合う場面がすごくいいです。物語の最後、オスカルは自分を、男でもなく、女でもなく、「軍神マルス」の子として生きると宣言します。そして、貴族と平民という身分の差を超えてアンドレと結ばれます。オスカルは、自分を受け入れることで、「愛と幸福」を手に入れることができたのです。

オスカルは、女性の憧れの姿でもあり、男性も共感できるところがあると思います。そして、自分の性に悩む人も共感できると思います。私にとっても、オスカルは憧れの存在です。悩み苦しみながらも、自分で道を見つけていく姿が、私の心の支えになっています。私は、今、思春期の手前で、性や生き方を考え始めた時期に『ベルサイユのばら』という作品に出会え本当に良かったです。そして、これから差別や偏見のない、人と人同士が愛し合える世の中になってほしいと願っています。

これで発表を終わります。聞いてくださって、ありがとうございました。

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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