【生徒作品】『「見えない」をつくりだせ!』(新中1 A・Tさん)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を通して、実践的な発表の仕方を学んでいきます。

今回は、2019年3月に行われた「リテラ 生徒作品発表会」より、新中1 A・Tさん『「見えない」をつくりだせ!』を掲載致します。

前回の発表会で、将来なりたい職業である「スパイ」について研究したAさん。自分がスパイになった時に役立つようにと、今年は「透明人間」になる方法について研究しました。

その他の発表動画は、「2019年3月 生徒作品発表会 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

講師からのコメント

最先端の光学技術で、あと少しで透明人間ができると知り、驚きました。研究のまとめでは、見えないことの証明の難しさや、透明人間どうしの見え方、関わり方についても考えました。これからも、楽しみながら科学の不思議を学び続けてください。

生徒作品

新中1 A・Tさん 『「見えない」をつくりだせ!』

もしも、透明人間になることができたら、何をしてみたいですか? 私は、昨年の発表会で、スパイを研究しました。その時、もし透明人間なれれば、もっとばれにくくなるのにと、思いました。そして、自分がスパイになったとき、透明人間になれたなら、もっと仕事に役立つと考えたので、研究しました。

姿を消す方法の一つとして、迷彩服があります。迷彩服とは、周りの景色に溶け込むために作られた服です。森や海など、場所や気候に合わせて、その色合いが決まります。例えば、森の場合は、樹皮の色合いに似た服を着て、身を隠します。

さらに、科学の力を使った迷彩の技術があります。それが、光学迷彩です。左は、光学迷彩のマントを羽織った写真です。右は、マントに、背景の映像を映したものです。迷彩服よりも、より風景に溶け込むことはできますが、常に映像を映しておかないといけないので、動くことができません。

photo by Z22 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:An_invisibility_cloak_using_optical_camouflage_by_Susumu_Tachi.jpg

実は、自然界では、迷彩服のような力を持った動物が、たくさんいます。これは、カレイの擬態の様子です。周りの景色を読み取り、体の色を変化させることができます。アザラシの赤ちゃんも、擬態の力で、身を守っています。白い毛皮は、氷とそっくりです。

しかし、「迷彩」や「擬態」は、見えなくなるという点では、透明人間に近いのですが、見えなくなっているわけではありません。では、ここで、見えなくなる方法を、ご紹介します。用意するのは、ビーカーと、ハシと、透明なビニール袋です。ビニール袋の中に、ハシを入れて、ふうをします。そして、水の入ったビーカーに入れます。すると、ビーカーの水につかった、ハシの部分が見えなくなりました。溶けてしまったのでしょうか? いいえ、違います。

もう一つ、実験をご紹介します。コースターと、水のはいった透明なコップを用意します。コースターの上に、コップを置きます。これは、上から見た様子です。コースターが見えていますね。今度は、横から見た写真です。すると、コップの底の部分の、コースターの柄が消えています。

なぜでしょうか? 種明かしの前に、見えるとは、どういうことか、ご説明します。まず、物にあたった「光」は、反射します。その「反射光」が、私たちの目に入り、網膜にあたると、電気信号に変わります。そして、電気信号が脳に伝わると、私たちは「見えた」と、感じます。だから、暗くして、物にあたる光をなくしたり、目に入る光をさえぎったりすると、「見えなく」なってしまうのです。また、網膜にあたった光の性質によって、私たちは「赤い」「青い」といった色を区別します。色とは、光の種類のちがいで、「赤い」物は「赤い」光をよく反射し、「青い」物は「青い」光をよく反射します。反対に、白い壁でも、オレンジ色の光を当てれば、オレンジ色に見えてしまいます。

では、実験の解説をしていきます。これは、光の屈折を表した図です。白い帯は、光の波長です。帯の内側の方が、先に水面に入ります。すると、水面につかったほうの光が、ゆっくり進みます。しかし、外側の水面につかっていないところは、そのままのスピードで進みます。光の帯の内側と外側の進み方の違いによって、屈折が起きるのです。先ほどの2つの実験も、水面で屈折が起き、光の反射の向きが変わり、角度によっては、見えなくなったのです。

『理系脳をきたえる! Newtonライト 光のふしぎ』(2017, ニュートンプレス)

実は、今、どの角度からでも透明に見える技術が、作られようとしています。これは、メタマテリアルというものです。メタマテリアルは、人間が作り出した、1メートルの10億分の1の大きさの物体のことです。メタマテリアルは、屈折の角度を、マイナスにしてしまうのです。どういうことかというと、通常の物質では、屈折した光は、必ず、光が入ってきた方向の逆側へ進みます。でも、メタマテリアルは、光の入ってきた方向と同じ側に屈折するのです。通常の屈折と比べると、このように、全く違うのがわかります。

この、負の屈折率になるメタマテリアルを使って、どのように、透明にすることができるのでしょうか。見えているときは、このように、光が物体にあたり、反射しているから、見えていたのでしたね。しかし、メタマテリアルでつくった透明マントでおおえば、光が迂回して、見えなくなります。これは、メタマテリアルのマントが、光を曲げている様子を表したものです。

この研究で、私は、透明人間になれる最新技術を知ることができました。今はまだ、光学迷彩の透明マントでは、完全に姿を消すことは出来ませんが、メタマテリアルの研究が進めば、近い未来、みなさんも、透明になれるかもしれませんよ。

これで、発表を終わります。ありがとうございました。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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