学習に欠かせない、「集中力」。学生の頃、あるいはおとなになってからも、どうすれば集中できるのだろうと、誰もが一度は考えたことがあるかと思います。
今回は、そうした「集中力」について考えていきます。
集中力を左右するもの
集中力は、「個人の特性」と「環境」、そして「心身の状態」のかけ算で決まります。集中力が高い人でも、騒音の中では集中できないでしょうし、集中力がない人でも、自分に合った環境であれば、いつもより深く集中できるかもしれません。また、とても疲れた日や眠い日は、集中したくてもできません。
それぞれの要素について考えることで、集中力をコントロールするための方法が見えてきます。
「個人の特性」
学習環境を整える場合は、まず「個人の特性」を見極めることが大切です。「個人の特性」とは、集中力の癖のようなものです。どのような学習環境がよいかは、人それぞれ違います。喫茶店など、人の気配があるほうが集中できる人もいれば、図書館などの静かなところが好きという人、また、一人になれるところでないと集中できないという人もいます。
親子であってもタイプは異なりますから、まずはお子様が、どのような環境で集中できるか、あるいは、気が散ってしまうかを観察することが大切です。また、中高生の方は、学習中の自分の集中力の状態を意識してみましょう。
- ポイント
- 個人差はありますが、小学生のうちは、自分の集中力について、大人ほど意識できません。自分でも気がつかないうちに、違うことをしていた、ということも、よくあります。叱る前に、お子様の集中力の傾向について理解すること、また、それに合った環境を整えることが大切です。
「環境」
個人の特性が見えてきたら、それに合わせた環境を考えましょう。特に、聴覚・視覚や、周囲の人の存在は大きな影響を及ぼします。
聞こえる音が気になってしまう、あるいは、何も音がないことが気になってしまうようなら、音楽をかけるのがおすすめです。好みにもよりますが、クラシックなど、歌詞のない、リラックスできる曲がよいでしょう。ヘッドホンを使うと、さらに周りの物音を遮断できます。他のものに気を取られてしまいがちな場合は、視界にあるものをコントロールしましょう。必要であれば、ついたてなどで視界を囲んでしまうことも有効です。また、「必要なもの以外はしまう」ことを心がけると、気持ちを切り替えやすくなります。
- ポイント
- 勉強中、体を揺する、落ち着かなくなるなどの様子が見られる場合は、無理に止めず、ガムをかんだり、片手でできる手遊び用の簡単なおもちゃを握ったりするのがおすすめです。
周りにいる人の振る舞いも、集中に大きな影響を及ぼします。家族からの過度のプレッシャーや、兄弟・姉妹からの干渉、テレビやゲームの音、おしゃべりなど、他の人の気になる行動があると、集中は難しくなります。リビング学習をしている場合は、学習時間の設定と家族の協力が必要です。
中高生は、インターネットやゲームなど、誘惑の大きいものは机からできるだけ遠ざけておくとよいでしょう。特に、LINEやTwitterといったSNSの通知は、学習の中断を引き起こしますので、注意しましょう。
「心身の状態」
集中力には、自己肯定感の低下、疲れと眠気、悩み事、不安など、心身の状態に属するものも、影響があります。一時的なものであればよいのですが、こうした傾向が長く続くようであれば、学習より前に、生活や人間関係といった、より大きな環境を見直すべきです。
多くの小学生にとって、一人で学習を進めるのは、とてもむずかしいものです。一人であることの不安や、やりがい、採点などの面から、誰かがついてあげる必要があります。ただ、厳しく指導してしまいますと、自己肯定感の低下や不安につながります。あくまでも、サポート役として、ほめてあげる・励ましてあげることを心がけ、安心して勉強に向き合えるようにしていきましょう。学習の前に、お子さんと一緒に遊んだり、くつろいで話したりする時間をとると、集中への切り替えがスムーズになります。
中高生は、自分の生活が無理のないものであるか、悩みや不安がないか、体に疲れがないかを確認しましょう。生活リズムについては、スケジュールをつくり、具体的な時間を定めるとよいでしょう。
また、年齢を問わず、20~25分に一回は休憩をとりましょう。休憩のない集中はありません。時間を定めることは、自分の進捗やコンディションをはかるためにも、大切な枠組みです。休憩中は、できるだけ机を離れ、飲食や会話、ストレッチなどをすると、よい気分転換になります。
さいごに
集中力は、個人と環境、心身の状態のかけ算です。学習環境を見直す際には、それらに合わせて環境を見直すというアプローチを、ぜひとっていただければと思います。