【2017年読書感想文特集】『フラダン』古内 一絵 作(高校生向け課題図書)

フラダン (Sunnyside Books)




内容の紹介

2011年3月11日に発生した東日本大震災の5年後の福島の工業高校のフラ愛好会が舞台です。男子ばかりの工業高校の中で、女子達の憩いの場となっているフラ愛好会。ところが、今年は男子部員が2名入部。部長の詩織は、男女混合で「フラガール甲子園」に出場するのを目標に男子部員を増やそうと、水泳部を退部したばかりの主人公の辻本穣に猛アタックをします。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

◆苦手だと思っていた物を好きなったり、反対に嫌いになってしまったりと、価値観が変わった出来事はありますか?

◆高校生たちが抱える感情として、「閉塞感」「虚無感」があります。

  • 「閉塞感」:自らを取り巻く状況を何とか打開しようと試みるものの、その状況を打開できずもがき苦しんでいる状態、先行きの見えない状態
  • 「虚無感」:何も意味を感じられずむなしい感情や感覚
  • 言葉の意味から、思い出される経験や気持ちはありますか?
  • 合わせて知りたい

    東日本大震災について

    2011年3月11日に発生した東日本大震災、国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録しました。死者・行方不明者は、1万8446人にのぼっています。

    次のページでは、東日本の大震災の様子や、被災した方々の証言、復興の様子などが映像とともに知ることができます。

    地震発生から72時間の出来事を、時系列に沿って、映像でふりかえることができます。ただし、精神的ストレスを感じる可能性もあります。見たくない人は、無理に見る必要はありません。

    ポリネシアンダンスについて

    ポリネシアンダンスについて、映像を見て知りましょう。次の映像は、福島のスパリゾートハワイアンズ公式動画のグランドポリネシアンショー『イムア・未来へ』です。

    読む

    読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
    また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

    準備する

    気持ち

    本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。

    体験

    読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

    考えるヒント

    ◆P150「ダンスなんかで、ここにいる人たちの気持ちは変わらない。」慰問の際、フラ愛好会のメンバーが被災者の老人に言われた言葉です。

    • 被災者の老人は、なぜ、音楽やダンスがなぐさめにならないと考えたのでしょうか。
    • 表現活動の価値について、あなた自身はどのように考えますか。

    ◆P246「遠慮しないで悲しんでいいんだよ。自分の悲しみを、人と比べることなんてないんだよ」震災で家族を亡くした人たちもいる中で、ペットの犬の死を引きずる自分を責めるマヤに、穣が掛けたことばです。

    • 穣は、なぜ、「自分の悲しみを、人と比べることはない」と言ったのだと思いますか。
    • あなたは、悲しみを人と比べてしまった経験はありますか。
    • あなたは、つらい気持ち、悲しい気持ち、いらだちを素直に話せる相手はいますか?
      • もし、いるとしたら、話のできる相手とはどんな人ですか?
      • もし、いないとしたら、これからあなたは、そうした人と出会いたいですか。また、どのような人に聞いてもらいたいですか?

    保護者の方へ

    上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

    読書感想文を通して考えてほしいテーマ

    • 閉塞感 虚無感 孤独
    • 葛藤と連帯
    • 表現活動・芸術の意味

    この本について

    この物語は、震災から五年後の福島で、高校生が抱いている閉塞感や、虚無感が描かれています。何もかもが破壊された地で生きる意味はあるのか? 頑張ることに意味はあるのだろうか? 主人公の辻本穣は、震災で変わってしまった街のことや、日常をともに過ごす人々が異なる思いや考えを抱き、壁を作っていることに寂しさやいらだちを感じながらも、自分自身もまた孤独を深めていきます。

    震災、原発事故での被害が少なかった人、大きかった人と、それぞれ立場や思いの違いからできる壁をどの様に乗り越えていくか、フラ愛好会一人ひとりのキャラクターとともにその葛藤が描かれています。

    家族のように相手を思い助け合う「オハナ」という言葉の通り、フラ愛好家のメンバーはお互いを大切にしたい、守りたいと思う気持ちを持っています。しかし、その優しさ故に、震災のことには触れてはいけない、傷つけるようなことを思い出させるようなことを話してはいけないと、心の中を明かし合うことができません。それには、自分自身が傷つけれれるのではないかという恐怖心もあります。

    家族や友だちに対しても、話をする前から、相手のことをわかったつもりになっていませんか?また、何も話さなくてもわかってくれるだろと思う気持ちはありませんか?

    「表現活動」にはそれまでの過程にも、その結果に対しても喜びと痛みの両方が伴います。フラ愛好会のメンバーは、フラを踊ると、老人ホームでの慰問で表現することの喜びを味わい自信をもつことができました。しかし、その後の仮設住宅への慰問では、被災した人々に元気になってもらいたい、助けになりたいという思いを否定されてしまいます。私たちの社会においても、チャリティーコンサートや慰問講演など、表現活動と社会貢献は関わりを持っています。また、アートセラピーのように表現活動は、心のケアとも関わりを持ちます。では、この本を読む高校生のみなさんは、表現活動や芸術の意味や価値について、どのように考えるでしょうか。


    合わせて観たい

    映画『フラガール』

    1966年、常磐炭鉱の閉山によって危機的状況に陥った地元を救うために町おこしとして誕生した常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアンズ)の成功を描いた、実話を元にした作品です。

    映画『シネマハワイアンズ』


    東日本大震災から5年。スパリゾートハワイアンズのダンサーたちの現在を追ったドキュメンタリー映画です。

    構成について

    構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

    「誰に、何を伝えたいか」

    • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
      • 誰に……例)家族、友人、先生
      • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
    • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

    文章の構成

    • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
    • 【はじめ】
      • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
    • 【なか】
      • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
      • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
        • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
        • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
        • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
        • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
      • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
    • 【おわり】
      • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
    読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。



    2017年 その他の課題図書

    随時追加していきます。

    2017年 夏期講習

    リテラで読書感想文を書き上げませんか?

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    ことばは、考える道具です。
    よりよく考えるために、ことばの力を育てましょう!

    リテラについて

    「子どもたちに 生きる力を」

    自らと大切な人を守り、未来を形作るためには、自分で考え、道を選びとる力が必要です。リテラは、「読む・書く・対話する(議論する)・考える」という、あらゆる知的活動の軸となる力を育て、自分の人生を「生きる力」を育みます。

    この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

    東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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    カテゴリー: ブックレビュー

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