【2017年読書感想文特集】『ストロベリーライフ』荻原浩 作(高校生向け課題図書)

ストロベリーライフ




内容の紹介

グラフィックデザイナーとして独立し、東京で暮らしていた恵介は、父が倒れたと知らされ、静岡の実家に戻ります。妻子を東京に残して心ならずも手伝いはじめた実家の苺づくりに、次第にのめり込んでいく恵介。デザイナーの仕事や家族、両親や姉たちの間で揺れ動きながら、自分の生き方を見つけ出していきます。

合わせて知りたい

苺について画像で確認しましょう

高設栽培の苺

苺の花

苺農家の1年について確認しましょう

読む

読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

準備する

気持ち

本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。

体験

読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

考えるヒント

両親と自分

◆恵介は、父親とけんかをして、2年間静岡の実家に帰っていませんでした。父親は「理解し合えない人」・「面倒くさい人」として恵介の目に映ります。

  • あなたは、ご両親のことをどう思っていますか。恵介のように、「理解し合えない」「面倒くさい」と思ったことはありますか。

◆父親が一棟だったハウスを二棟に増やしたり、作物をトマトから苺に変えたりしたのは、恵介のためでした。また、恵介は、自ら苺づくりに取り組む中で、両親の苦労や技術を知ることになります。

  • あなたは、ご両親の職業をよく知っていますか。
  • ご両親とは、普段から話し合うことができていますか。
  • 今だからわかる、ご両親の苦労や思いやりはありますか。

◆恵介は、威圧感を感じていた富士山を、農園の売りの一つにします。

  • 富士山に対する態度が変わったことから、恵介のどのような変化を感じますか。また、そのように変わることができたのは、なぜだと思いますか。
夢と仕事

◆恵介は、夢であったグラフィックデザイナーの仕事に行き詰まりを感じつつ、「かっこ悪い」と思っていた農業にのめり込んでいきます。

  • 恵介の心境の変化を、作中の言葉からたどると、次のようになります。
「苺をどうするかは気になるが、グラフィックデザイナーとして、もうひと勝負したい このままじゃ終われない」(p.61) → 「いまの苺だけはなんとかしよう」(p.131) → 「いったん世話を始めた生き物を、自分の都合で死なせるわけにはいかない」(p.165) → 「何をどうしたいのか、の答えがなんであれ、このままでは終われない」「そこに苺があるから」(p.174) → 「野心のための仕事じゃなくて、生活のための仕事にシフトしたほうがいい気がする」「ほかにすべきことを見つけてしまった」(p.194) → 「何を為すために自分は生まれてきたのか」「やっとわかった」(p.319-320)
  • 恵介の心境の変化を、上記の言葉を使わずに、あなたの言葉でまとめてみましょう。

◆恵介の妻・美月は、変わっていく恵介に戸惑い、自らの夢について悩みはじめます。

  • 美月が、もう一度恵介と向き合うことができたのは、なぜだと思いますか。
  • 男女問わず、「自立」することと「家族」になることには、どのような関わりがあるとあなたは思いますか。
これからの仕事のあり方

◆恵介は、これまでの農業の枠組みに縛られない新しい試み「望月農家生き残り作戦」を始めます。

  • これまでの農業を、恵介はどのように考えていますか。
  • 恵介の「農家と客をつなげる」試みとは、どのようなものでしたか。

◆恵介は「兼業上等。命綱は一本より二本」「自分にはこの仕事しかない、と思い詰めると人は苦しくなる」(p.207)と考えるようになります。

  • あなたには、将来の夢や目標がありますか。
  • あなたには、好きなことがありますか。
  • あなたが、2つ(あるいは3つ)の分野の専門家になるとしたら、何を選びますか。
  • その分野同士をつなげて、どのようなことができそうですか。
  • 2つ(あるいは3つ)の分野の専門家になるとしたら、今から何をするべきだと思いますか。

◆恵介は「違う職種のプロが集まれば、新しい何かが生まれることもある」(p.339)と考えます。

  • 恵介は、なぜそのように考えることができるようになったのだと思いますか。
  • 昨今、インターネットの発達や流通・交通機関の発達により、場所に関わらず、様々な人と連携をとることができるようになりました。そうした環境で活躍するために、どのような「考え方」が求められるとあなたは考えますか。
  • その「考え方」を身につけるために、どのようなことをするべきだと思いますか。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 夢と現実
  • 生き方
  • 人とのつながり

この本について

グラフィックデザイナーと農家、真逆の印象を受ける仕事の間で揺れ動きつつ、主人公は自らの生き方を見出していきます。

私達は、それぞれたくさんの「大切なこと」、すなわち「価値観」を持って生きています。価値観に従い、何を選ぶかによって、生き方が変わってきます。この物語にも、都会と自然、夢と家族、あこがれと現実など、対立する様々な価値観が出てきます。思い悩む主人公ですが、苺はそんな事情などお構いなしに成長していきます。

苺の成長も、害虫や台風との戦いも、今何とかしなければならないものであり、私達の価値観でどうにかなるというものではありません。主人公は、そうした自然の中に、都会にはなかった「ふつう」を感じ、苺づくりに生きがいを感じるようになります。誇りや見栄を捨てて自然と向き合う日々は、主人公自身の「生」を取り戻す過程でもあったのでしょう。

「自分にはこの仕事しかない、と思い詰めると人は苦しくなる」(p.207)という主人公の言葉や、避けていた父親の経験と技を認めつつ、自分で工夫をし始める姿勢の変化からは、これまでの価値観の対立を乗り越え、新しい「大切なこと」を得た主人公の成長が見て取れます。

物語には、日本の農業の抱える問題と、主人公が考える新しい農業の形が示されます。技術や人・物・金がより自由に行き来するようになった現代、農業だけでなく、あらゆる業種で働き方の変革が求められています。それは、みなさんの将来の生き方にも密接に関わっています。

変わっていく主人公と自分を重ね、これからの進路について、生き方について考えてみてください。


合わせて読みたい

『戸村飯店青春100連発』(瀬尾 まいこ)

大阪の中華料理店の息子二人が、高校卒業後、どう生きていくか思い悩む青春物語です。

コミックス『銀の匙』(荒川 弘)

受験に失敗した主人公が、仲間とともに様々な経験をしながら、農業の実際やこれからについて考えていきます。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。



2017年 その他の課題図書

随時追加していきます。

2017年 夏期講習

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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