内容の紹介
臼井二美男さんは、生まれつき手足のない人や、病気や事故で手足をなくした人に、義手や義足を作る「義肢装具士」です。手足がなくても、生き生きと自分らしく暮らすことができるよう、義手・義足が必要な人の人生と向き合い、努力を続けています。この本では、義肢装具士の仕事や、臼井二美男さんの半生、パラリンピックで活躍する選手との深い関わりについて、紹介されています。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- あなたは、義手や義足、それらをつけた人を見たことがありますか。義手や義足について知っていることや、思い出したことはありますか。
- 手や足を失うことで、生活はどのように変わるでしょうか。どのような思いを持つでしょうか。考えてみましょう。
合わせて知りたい
「義足の私を見て!」絶望からの挑戦・・・目指すはリオ(15/03/24) ANN NEWSより
電車事故で右足を失った村上沙也加さんは、義足をつけて陸上競技で活躍し、ファッションショーの舞台に立ちました。臼井二美男さんは、義足制作を通して村上さんを支え続けています。村上さんは、義足の大変さを受け止めながら、それをチャンスだと思っていろいろなことに挑戦してほしいと語ります。
パラリンピックについて
障がいのあるトップアスリートが出場できる世界最高峰の国際競技大会です。夏季大会と冬季大会があり、それぞれオリンピックの開催年に、原則としてオリンピックと同じ都市・同じ会場で行われます。パラリンピックについて知りましょう。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
考えるヒント
◆臼井二美男さんは、手足をなくしてしまった人の体や心の痛みに寄り添うことが大切であると述べています。
- あなたは、誰かの心の痛みや悩みを感じたことがありますか。
- あなたは、自分の心の痛みや悩みを、誰かに打ち明けたことがありますか。
◆臼井二美男さんは「転んだら起きあがればいいし、ひとりで起きあがれるようになるのもまた、練習のひとつ」と言います。
- あなたは、失敗をして落ち込んだことがありますか。
- どんな失敗をしましたか。
- その失敗から、どのように立ち直りましたか。
- その失敗から学んだことはなんですか。
◆臼井二美男さんは、患者さんから信頼されるまで、苦労して義肢づくりの技術を身につけます。
- あなたには、悔しさをバネにして頑張った経験はありますか。
◆臼井二美男さんは、「なにごともやってみなけりゃ、わからない」という考えで、たくさんの人と助け合いながら、患者さんの願いを叶える義足づくりに挑戦しています。
- あなたにも、不安だったけれど、思い切ってやってよかったと思える経験はありますか。
- あなたの挑戦をサポートしてくれた人はいますか。
- あなたは、これから、どんなことに挑戦したいですか。
- あなたは、どんな挑戦をする人のサポートをしてみたいですか。
◆臼井二美男さんは、義肢装具士を目指すまで、「本当にやりたいこと」に出会えずにいました。
- 今、あなたは何をするのが好きですか?
- 将来、どのような生活をして、生きていきたいですか?
- 将来の職業について、希望はありますか?
- それは、何(誰)に向き合う仕事ですか? また、世界に何をもたらすものですか?
◆臼井二美男さんは、「障害者は静かに暮らすもの・義足はかくすもの」という世の中の考えを変えたいと願っています。
- あなたには、障害を持った方との関わりはありますか。
- 「障害者は静かに暮らすもの・義足はかくすもの」という考えについて、あなたは賛成ですか、反対ですか。理由も考えてみましょう。
- あなたの思う幸せとはどのようなものですか。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 一生をかけられる仕事
- 障がいと福祉
- 他者の痛みと向き合う
この本について
臼井二美男さんは、一生をかけられる仕事と出会うことができました。義肢装具士として、一人ひとりの患者さんの人生に向き合い、また、「転んでも(障がいがあっても)、大丈夫」な社会にしたいと願い、情熱を持って働き続けています。この本を読むお子さんたちも、臼井さんの人生を通して、将来の自分を考えるきっかけにできるとよいでしょう。
怪我や事故、病気などによって身体が不自由になる可能性は、誰にでもあります。障がい有無にかかわらず、だれもがそれぞれの幸せや豊かさを求められることは、社会福祉の目指すものの一つです。この本は、私たちの社会がどうあるべきか、福祉の視点からも考えるきっかけになります。
体の痛み、心の痛みは、その人だけのものです。安易な声掛けやはげましがかえって相手を傷つけてしまうかもしれません。それでも、その人が痛みを乗り越え、自分の人生と向き合えるように、臼井さんは義肢装具士として寄り添います。こうした姿勢からは、障がいを持つ人との関わり方だけではなく、他者との向き合い方も学ぶことができます。今まで、身近な人の心の痛みとどのように関わってきたでしょうか。また、これからどのように向き合っていくべきでしょうか。考えてみましょう。
合わせて読みたい
『義足でかがやく』
この本では、義足をハンディではなく、自分たちの個性として受け止め、積極的に未来を切りひらこうとする子どもたちと、その挑戦を献身的にサポートする人たちの物語が紹介されています。足を失った子どもたちが、どのようにその事実と向き合い、義足に希望を見出しているのかを知ることができます。
『わたしの足は車いす』
アンナは生まれたときから足がマヒしているので、歩いたり走ったりできません。車いすがアンナの足なのです。ある日、アンナは、お母さんのために、はじめて一人でおつかいに出かけます。町の人にじろじろ見られることにとまどい、こっそりすみっこで涙をふくアンナ。しかし、そこへやさしく声をかけてくれる男の子があらわれます。車いすでの生活を伝える本です。
より深く知りたい
公益財団法人 鉄道弘済会 義肢装具サポートセンターのホームページ
臼井二美男さんの務める鉄道弘済会・義肢装具サポートセンターは、義肢装具の製作から義肢装着訓練にいたるまで、一貫した諸サービスを受けられる総合的なリハビリテーション施設です。ホームページでは、義肢装具の種類や、リハビリテーションについても紹介されています。
2017年9月9日(土)には、施設公開も予定されています。興味がわいた方は、足を運んでみましょう。
安価で制作の容易な義足が必要とされている
義足は、日本だけでなく、世界中に必要とされています。特に発展途上国では、紛争や自然災害、栄養の欠乏からくる糖尿病による下肢切断といった理由で、多くの人々が義足を必要としている一方、高価な義足を買うことは困難です。そのため、3Dプリンタ技術などを応用した安価で制作の容易な義足の開発が進められています。
筋電義手「handiii」の紹介動画
義足だけでなく、優れた義手の開発も進んでいます。筋電義手とは、残された腕の筋肉の電気信号によって直感的に操作できる義手のこと。3Dプリンタやスマートフォン等の最新技術を活用することで、従来の義手よりも安く手軽に手に入る義手の開発が進められています。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
2017年 その他の課題図書
随時追加していきます。
2017年 夏期講習
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ことばは、考える道具です。
よりよく考えるために、ことばの力を育てましょう!
リテラについて
「子どもたちに 生きる力を」
自らと大切な人を守り、未来を形作るためには、自分で考え、道を選びとる力が必要です。リテラは、「読む・書く・対話する(議論する)・考える」という、あらゆる知的活動の軸となる力を育て、自分の人生を「生きる力」を育みます。