内容の紹介
まちがったことなんてそこらじゅうに転がっていて、がまんしたり、見て見ぬふりしたりしながら毎日をうまく過ごしているもの。めんどうなトラブルをできるだけさけて過ごしてきた小学6年生の日色拓もその一人でした。ところが、真中凛が転校してきてからは、拓の毎日はすっかり変わってしまいます。凛は、言いたいことをなんでもはっきりいうタイプ。凛に「チキン(弱虫)!」なんて言われながら、拓は、クラスのトラブルに関わることになります。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
◆次のような二つの意見があります。あなたは、これらの意見のどちらの考え方に近いですか。
- 「人と対立しても言いたいことをはっきり伝えるべきだ」
- 「人ともめるくらいなら、言いたいことはがまんした方がいい」
◆あなたのクラスでケンカやもめごとなどトラブルが起きたことはありますか。その時のことを思い出してみましょう。
- それは、いつごろ、どこで、どんなふうに起きたトラブルでしたか。
- そのトラブルは、なぜ起きたのですか。
- そのことについて友だちや、学校の先生は何と言っていましたか。
- あなたは、そのトラブルについてどのように関わりましたか。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
考えるヒント
- 「空気を読めない」ことと、「空気を読まない」ことにはどんな違いがありますか。
- あなたは「空気を読まない」ことに、どんな意味があると思いますか。
◆凛は、もめごとには近づかず、何事も丸くおさめようとする拓の中に「強さ」を感じました。(P.152)
- あなたは、凛の感じた強さとは、どのようなものだと思いますか。
◆あなたは「何事にも正直でいること」に賛成ですか、反対ですか。
- 「時にはうそをついたり、見てみぬふりすること」に賛成ですか。反対ですか。
- その二つの考え方と、これからどのように向き合っていきたいですか。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 理想と現実
- 正しさ
- 価値観
この本について
正しさについて
「だれかを傷つけるのはいやだ」という気持ちは、だれもが持っているものでしょう。
しかし、だれかが傷つくのを防ぐために、別のだれかが傷ついてしまうことがあるかもしれません。また、正しいと思った行動が、だれかの別の「正しさ」とぶつかってしまうこともあるでしょう。
世の中には、いろいろなところに間違ったことが転がっていると拓は語りますが、その一方でいろいろなところにそれぞれの正しさが転がっているともいえます。「間違い」だと思っていたものが、他の人にとっての「正しさ」だったということもあるでしょう。
みなさんは、きっとこうしたさまざまな「間違い」や「正しさ」や「正しさだと思っていたもの」に出合いながら、毎日生活しているはずです。この本を通して、みなさんも自分自身の学校や家庭での生活をふりかえり、そうした考え方や意見の違いを感じた経験を思い出してみましょう。そして、「正直でいることと、うそをついたり、見て見ぬふりをすることでうまくいっていることと」これからどう向き合っていくか、考えてみてください。
大切な約束と価値観
凛の生き方は、お母さんとの大切な約束を守りたいという思いに支えられていました。
みなさんも日々の生活の中で、「ウソはつくべきではない」とか「目上の人には敬語を使う」とか、考え方や行動の基準にしている考え方があると思います。そうした「~すべき」とか「~するのが当たり前」という考え方を「価値観」とよびます。ところが価値観は、人によって、グループによって、国や文化によって、重なるところもあれば、違うところもあります。
あなたも、生きる上で、人と接する上で大切にしている価値観はありますか。
また、その価値観を持つようになったきっかけや、あなたに影響を与えた人や出来事があれば、考えてみてください。
合わせて読みたい
『口笛番長』
ツヨシのクラスにやってきた転校生・マコトは、「この学校の番長になる!」と宣言します。「弱きを助け、強きをくじく」カッコいい番長になることは、マコトの大切な人との約束でした。大人になったツヨシが、マコトと過ごした忘れられない一年を語ります。
『ポアンアンのにおい』
学校の裏庭へ落とした石けんを探しに行った浩と陽子は、話をするコウモリに助けを求められます。裏庭は深い森になり、沼に住む大ガエルが、生き物たちをふしぎなしゃぼん玉にとじこめているのです。浩と陽子は、大ガエルを退治する作戦を考えます。「正しさ」について考えることのできる物語です。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
2017年 その他の課題図書
随時追加していきます。
2017年 夏期講習
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