特別支援高校に通うT君は、絵が大好きで、これまでにもたくさんの作品を書き上げてきました。
今回ご紹介するのは、T君が2014年度に書き上げ、発表会で二年連続の「ベスト・プレゼンテーター賞」を射止めた作品『少年探偵団オリジナル版 電子ピラミッドの謎』です。
物語の題材を探していたT君は、大好きな「少年探偵団シリーズ」のイメージを元に、自分なりの「少年探偵団」を書いてみることにしました。
今回、T君はまず得意な絵を活かして設定資料をつくり、おおまかに話の流れを決めました。
そうして書き始めたものの、最初は登場人物の個性も薄く、展開もあっさりとしたものでした。
しかし、取り組みが続くにつれ、世界が次第に奥行きを増していきます。まるで、T君自身が物語の中に入り込み、キャラクターたちと共に冒険の旅を始めたようでした。
お金にがめつい署長や、警部ゾエドのあやしい夢、お風呂シーンなどは、物語の世界がどんどん広がる中で追加されたものです。
T君が作り上げた物語の世界を、ぜひ一緒に旅してみてください。
作品紹介
スライド版
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序1
「さて、皆様大変長らくお待たせ致しました。」
「これから皆さんにお届けするのは、少年探偵団と明智小五郎の主演による『電子ピラミッドの謎』です。」
「最後まで、じっくりお楽しみ下さい。」
明智小五郎は、三味線を「チャンチャカチャンチャンチャカチャンチャカチャンチャンリン」と弾いた。
序2
「それでは、『少年探偵団オリジナル版 電子ピラミッドの謎』の始まり始まりー。」
観客たちは、盛大な拍手をした。
二人は、舞台裏へ行って三味線を「チャンチャカチャンチャンチャカチャンチャンリン」と弾いた。
(1/48)
ここは、東京都千代田区にある明智探偵事務所である。
ある朝、明智小五郎は、東京新聞を読んでいた。解決していない事件ばっかりだった。
そのうち、明智探偵は、ある新聞記事に気がついた。
(2/48)
見出しには「謎のピラミッド出現!?」と書かれていた。なんと、砂漠に巨大なピラミッドが出現したらしい。
そのピラミッドは、一日中、青く光っているという。まだ入口が見つかっていないため、謎に包まれている。
それを読んだ明智探偵は、エジプトへ行ってピラミッドの謎を解くため、助手の小林芳雄と四人の探偵と一緒に、キャリーバッグを持って羽田空港へと向かった。
(3/48)
羽田空港に着いた探偵たちは、パスポートを見せ、荷物チェックを受けた。
そして、飛行機に乗ってエジプトに向かった。
(4/48)
探偵たちは、飛行機の窓の外をながめた。綿飴のような白い雲が、広がっていた。探偵たちは、景色に夢中になった。
「なんて素晴らしい景色だろう。」と明智小五郎は、心の中でつぶやいた。
「只今、十時二十五分、インド上空を通過しました。」とアナウンスが流れた。
(5/48)
エジプトに着いた探偵たちは、タクシー乗り場に行った。蒸し風呂みたいな暑さだった。
タクシーに乗った探偵たちは、砂漠のオアシスへ向かった。
(6/48)
劇場の町は、人々でガヤガヤとにぎわっていた。それだけではなく、バスやトラックや車が、沢山行きかっていた。
(7/48)
二十分後、町はずれのオアシスに着いた探偵たちは、タクシーを降りた。
「料金は、五百エジプトポンドです。」と運転手は、探偵たちに言った。
明智小五郎は、気前よく千エジプトポンドを運転手に払った。するとタクシーは、都会へと走り去った。
「ここが目的地のオアシスだ。」と小林芳雄は言った。
(8/48)
砂漠のむこうに街とピラミッドが見えてきた。
探偵たちは、砂丘を歩いて、街を目指した。その砂丘は、雪のように、歩きづらいのだ。
「なんて歩きにくいんだ。」と小林芳雄は、汗をかきながら言った。
(9/48)
「いよいよ、砂漠の都だ。」と小林芳雄は、言った。
「早速入ってみようか。」と明智小五郎は、言った。
探偵たちは、砂漠の都に入って、奥にある、宮殿へと向かった。
(10/48)
街は、大ぜいの人達であふれていた。
どこからともなく、笛の音が聴こえていた。
街の人々は、賭博や占いや水煙草などを楽しんでいた。
(11/48)
途中、探偵たちは、エジプト警察の警部と待ち合わせをした。警部は、捜査に協力してくれることになっていた。
「それでは、宮殿へ御案内致しましょう。」と警部は言った。
「街の人々は、女王様に毎日礼拝をしています。」
「悪人たちが来た時は、王家の短刀を投げつけて、女王様は、敵を追い払うのです。」
(12/48)
美しい女王は、探偵たちを歓迎してくれた。人々は、女王に深く頭を下げた。
「ようこそ、我が宮殿へ。私は、エジプトの女王エルボスと申します。」と女王は言った。
明智小五郎は、「こちらこそ、よろしくお願いします。」と答えた。
「そして、助手の小林芳雄と、四人の探偵のスイカ、バナナ、パッションフルーツ、リンゴです。」
(13/48)
宮殿に入った探偵たちは、大広間に通された。
女王は、壁のひもを引いた。すると、幕が開き、ファラオ像が現れた。
「これは、私たちエジプト人の守り神です。」と女王は言った。
「実は、もう一体いたんです。それは、とても強い化け物なのです。彼は、伝説のパンツをはいて、ピラミッドに隠れ住んだという言い伝えがあります。」
(14/48)
女王と別れた探偵たちは、警部の愛車に乗り博物館を目指した。
「博物館までの距離は千メートルです。」とカーナビの音声が聞こえた。すると明智小五郎は、「ラジオをかけろ」と警部に言った。
(15/48)
「皆さん、こんにちは。ラジオMCのパブロ・ディンゴ・ゴルティカトビアス・ジョーダンです。」
「それでは、パブロ・ディンゴのいらっしゃーいの前に、明日のお天気をお伝えします。」
MCのパブロは、話し出した。
「結婚式玉姫殿がお送りする天気予報。明日は、良く晴れるでしょう。くもりのち晴れ、雨が降る心配がありま……。」
「ボン」とラジオは、急に爆発した。
「ハァ故障か……。」と、明智小五郎は、つまらなそうに言った。
(16/48)
探偵たちは、博物館に着いた。
「この博物館には、王家の遺産が展示されています。」と警部は言った。
「それに、機械で出来ている、なんでも知っているスフィンクスがあります。」
(17/48)
博物館には、来世で演奏する青銅のシンバルやハープ、ミイラや猫の像、羽のうちわ、来世で美しくなるための化粧ケースなどが展示されていた。
中央には、巨大なスフィンクスが座っていた。
明智探偵が、博物館の受付でもらったカードをかざすと、スフィンクスが動き出した。
(18/48)
「私のなぞなぞに答えられたらなんでも教えてあげましょう。問題は全部で三問です。それでは、頑張ってください。」とスフィンクスは、探偵たちに言った。
「早速やってみるか」と明智小五郎は、言った。
「先ずはこの問題です。」とスフィンクスは、話し続けた。
「朝には、四本足、昼に二本足、夜には三本足になるものは何?」
(19/48)
「赤ちゃんの時には、ハイハイ、やがて大人になると立てるようになる。年をとると、杖をついて歩く。それは『人間だ』。」
「正解です。流石ですね。次の問題です。的が十個ある野菜は何?」
「それは、俺が本当に苦手な野菜、すなわち……『トマト』だ。」
「正解です。流石ですね。あと一問です。頑張って下さい。」とスフィンクスは、探偵たちに言った。
「最後の問題です。火の周りにある花は何?」
「ハムスターがよく食べている種がとれる。それは、『ヒマワリ』だ。」
「正解です。流石ですね。なぞなぞは以上です。では、何でも聞いて下さい。」
(20/48)
明智探偵は、スフィンクスにこう聞いた。
「あのピラミッドは、誰かに建てられたのか?」
すると、スフィンクスは、「ある怪しい男が建てたのです。」と答えた。
「実は、あのピラミッドの中には、怪しい男がファラオに化けて宝とともに潜んでいるんです。」
「そうですか。」と小林芳雄は言った。
(21/48)
明智探偵は、警備員にスフィンクスの言った事を報告した。
その時、警部の携帯電話が鳴った。
「なにィ!! ピラミッドの入口が見つかっただとォ!! すぐに捜査だ!!」
「小林芳雄!! もうそろそろ博物館を出発する時間だ。」と明智小五郎は小林芳雄に伝えた。
(22/48)
探偵たちは、急いでエジプト警察に行って、捜査本部を立ち上げた。
探偵と警察たちの「潜入作戦」が決まった。
「明日の朝六時に間に合うように、準備しておくように。以上だ!!」
「ついでにもう一つ。宝を集めることも忘れないように。」と明智小五郎は警備隊に話した。
(23/48)
会議の後、探偵と警部は、署長室に呼び出された。
「宝は必ず、手に入れるのだ。」と署長は言った。
女性秘書は、笑顔で「期待しています。」と言った。警部は、こう答えた。
「必ず探します。」
(24/48)
王宮に戻った明智探偵は、女王にピラミッドの見取り図を見せた。
女王は、驚愕した。
「これが、スフィンクスが言っていた怪しい男が建てたピラミッドですか。」
「明智探偵、今夜は王宮に近くの宿に泊まって下さい。」と警部は、言った。
「そうか、じゃあまた明日。朝、間に合うようにします。」
二人は、王宮の近くにある宿に泊まった。
(25/48)
明智小五郎は、明日のため、警察にトラックの整備をしに行った。
ホテルの客室に残った小林芳雄は、自分が持ってきた缶詰と、食パンとアジフライを食べた。
その後、彼も明日の準備をした。
「えーっと、懐中電灯と閃光弾とヘルメットだな、よし。」
「これで完了!!」と小林芳雄は、バスタオルと洗面器を持って、地下にある大浴場へ向かった。
(26/48)
大浴場に行った小林芳雄は、「合金の湯」に入った。
「あっ、警部。」と小林芳雄は、警部を見て驚いた。
「ワッハッハ、残念でした。これは、女性のマネキンでした~。」
「明智さん、警部が女性のマネキンと混浴してます。温度をアップして下さい。」と小林芳雄は警察から帰ってきた明智小五郎に命令した。明智小五郎は、お湯の温度をアップさせた。
「アチーー!!」と警部は、飛び上がって宙を待った。
「ハァ」と小林芳雄は、ため息をついた。
こうして、捜査の一日目は終了した。
(27/48)
エジプト警察署に戻った警部は、ソファで寝た。
すると、警部は、ある夢を見た。
それは、今から二十六年前のことだった。とある酒場の社交クラブ「スカラベ」に行った警部ゾエドは、番号のついた木札をもらい席についた。
(28/48)
ゾエドは、ポールダンスを見た。
「ブラボー、なかなかやるじゃないか。」とゾエドは心の中で言った。
長髪の女性は、ポールの周りをクルクルと回った。客たちは、パチパチパチと拍手をした。
(29/48)
二十分後、七人の客が、クラブを去った。残ったゾエドたちは、ショーを見続けた。
続いては、蛇に噛まれても平気な女性の芸だ。緑色の毒蛇が、口をパカリと開いた。気合いを入れた女性は、素手で毒蛇の口に手を入れ……。
(30/48)
「ゴーンゴーン」と時計の音が鳴って警部は「わっ!!」と驚いた。
「なんだ夢か。ビックリしたー。」
「それでは、そろそろベッドで寝ようか。」と警部はベッドに入った。
(31/48)
次の日、探偵たちは、エジプト警官隊と共に、車に乗って、ピラミッドに向かった。
「ついたぞ!! あれが、電子ピラミッドだ!!」と明智小五郎は叫んだ。
(32/48)
ピラミッドに着いた探偵たちは、ピラミッドの階段を登り入口に向かった。沢山の警察官たちが、後に続いた。
「さあさあ、宝を全部集めておくのだ!!」と警部は言った。
(33/48)
ピラミッドの中に入った探偵たちは、せまい通路を進んだ。壁には、エジプトに伝わる神話が描かれていた。
空気は、氷のように冷たい。探偵たちの足音だけが響いていた。
「わっ!! スカラベだ!! こりゃ珍しい」と小林芳雄は地面にいた黄金のスカラベを袋に入れた。
(34/48)
二人は、せまい通路から広間に出た。広間の空気はとても冷たく、探偵たちは、体をふるわせた。
すると、目の前に木乃伊(ミイラ)たちが立ちふさがった。木乃伊たちは、両手に剣を持っていた。それだけではなく、黄色の眼が包帯の奥で光っていた。
「早速始めようか。」と明智小五郎はつぶやいた。
(35/48)
探偵たちは、剣を取りミイラ兵と戦った。ミイラ兵は、両手についている剣を回転させて襲いかかって来た。二人は、超高速で剣を振り回した。
(36/48)
「これで全部撃破だ。」
二人は、ミイラ兵の体を見て、驚いた。なんと、ミイラ兵は、ロボットだったのだ。その時、扉が自動的に開いた。二人は、先に進んだ。
(37/48)
「真っ暗な大広間だ。」と小林芳雄は言った。
ピラミッドの最深部に入った二人は、大きなファラオ像を見つけた。すると、ファラオ像の眼が開き、動き出した。
岩が崩れる音が響いた。二人は、恐ろしさに震え上がった。
「うわっ、何だ!?」
(38/48)
立ち上がったファラオ像は、鼻から鼻毛針を発射し、二人に攻撃して来た。
大きくて固くて、鋭い針が飛行機のようなスピードで飛んで来た。二人は、あわてて身をかわした。
「今だ!!」
と小林芳雄はバズーカを構えた。
(39/48)
小林芳雄は、火炎バズーカでファラオのパンツを焼き尽くした。すると……。
ガラドカズタバタバラドンドシズシバンガシバキドキズキズバズコンと、壊れた機械のように、バラバラになった。
そして……。
(40/48)
中から「怪人二十面相」が飛び出して来た。
「明智小五郎、小林芳雄、お前たちの勝ちだ。褒めてやろう。このピラミッドは、私の基地だ。このファラオ像も、私が化けていたのだ。」
次の瞬間。二十面相が背中にしょっていたブースタージェットが火を吹いた。
「さらばだ!! 明智小五郎、そして小林芳雄。フハハハハハ……。」
(41/48)
「待てっ!! 怪人二十面相ーっ!!」
浮き上がった二十面相は、天井の穴から空へと消え去った。
(42/48)
急にピラミッドが超大型地震のように揺れ始めた。
驚いた警備兵と二人は、急いで逃げ始めた。
(43/48)
二人は、急いではしごを登り、出口に向かった。
天井から砂やレンガなどがガラガラと降ってきた。
(44/48)
みんなは、出口を見つけ急いで脱出した。
「みんな、こっちだーっ!!」と明智小五郎は叫んだ。
(45/48)
電子ピラミッドは、ゆっくりと地面へ沈んだ。蟻地獄にひきずり込まれるように。
「ザザザザザ……。」
(46/48)
みんなが去った後、崩れたピラミッドは立入禁止区域となった。侵入した者は、百万エジプトポンドの罰金になる。
(47/48)
三人は、宮殿に戻り、警部は、女王に報告した。
「女王様、怪人二十面相に逃げられました。」
「それは、残念でしたね。」と女王は言った。
「でも、明智小五郎と小林芳雄は無事です。」と警部は、笑顔で言った。
「さて、そろそろ日本へ帰国しようか。」と明智小五郎は言った。
(48/48)
二人は、警部と女王と別れて日本へと帰った。
こうして、明智小五郎と小林芳雄の事件は、解決した。
ということで、「少年探偵団オリジナル編」は、これにて、おしまい。
それでは、さよなら、さよなら、さようなら。
(終)
みんな、どうだった。これからも私たちは、事件をどんどん解決するぞ。
それでは、また会おう。
通常版
序1
「さて、皆様大変長らくお待たせ致しました。」
「これから皆さんにお届けするのは、少年探偵団と明智小五郎の主演による『電子ピラミッドの謎』です。」
「最後まで、じっくりお楽しみ下さい。」
明智小五郎は、三味線を「チャンチャカチャンチャンチャカチャンチャカチャンチャンリン」と弾いた。
序2
「それでは、『少年探偵団オリジナル版 電子ピラミッドの謎』の始まり始まりー。」
観客たちは、盛大な拍手をした。
二人は、舞台裏へ行って三味線を「チャンチャカチャンチャンチャカチャンチャンリン」と弾いた。
(1/48)
ここは、東京都千代田区にある明智探偵事務所である。
ある朝、明智小五郎は、東京新聞を読んでいた。解決していない事件ばっかりだった。
そのうち、明智探偵は、ある新聞記事に気がついた。
(2/48)
見出しには「謎のピラミッド出現!?」と書かれていた。なんと、砂漠に巨大なピラミッドが出現したらしい。
そのピラミッドは、一日中、青く光っているという。まだ入口が見つかっていないため、謎に包まれている。
それを読んだ明智探偵は、エジプトへ行ってピラミッドの謎を解くため、助手の小林芳雄と四人の探偵と一緒に、キャリーバッグを持って羽田空港へと向かった。
(3/48)
羽田空港に着いた探偵たちは、パスポートを見せ、荷物チェックを受けた。
そして、飛行機に乗ってエジプトに向かった。
(4/48)
探偵たちは、飛行機の窓の外をながめた。綿飴のような白い雲が、広がっていた。探偵たちは、景色に夢中になった。
「なんて素晴らしい景色だろう。」と明智小五郎は、心の中でつぶやいた。
「只今、十時二十五分、インド上空を通過しました。」とアナウンスが流れた。
(5/48)
エジプトに着いた探偵たちは、タクシー乗り場に行った。蒸し風呂みたいな暑さだった。
タクシーに乗った探偵たちは、砂漠のオアシスへ向かった。
(6/48)
劇場の町は、人々でガヤガヤとにぎわっていた。それだけではなく、バスやトラックや車が、沢山行きかっていた。
(7/48)
二十分後、町はずれのオアシスに着いた探偵たちは、タクシーを降りた。
「料金は、五百エジプトポンドです。」と運転手は、探偵たちに言った。
明智小五郎は、気前よく千エジプトポンドを運転手に払った。するとタクシーは、都会へと走り去った。
「ここが目的地のオアシスだ。」と小林芳雄は言った。
(8/48)
砂漠のむこうに街とピラミッドが見えてきた。
探偵たちは、砂丘を歩いて、街を目指した。その砂丘は、雪のように、歩きづらいのだ。
「なんて歩きにくいんだ。」と小林芳雄は、汗をかきながら言った。
(9/48)
「いよいよ、砂漠の都だ。」と小林芳雄は、言った。
「早速入ってみようか。」と明智小五郎は、言った。
探偵たちは、砂漠の都に入って、奥にある、宮殿へと向かった。
(10/48)
街は、大ぜいの人達であふれていた。
どこからともなく、笛の音が聴こえていた。
街の人々は、賭博や占いや水煙草などを楽しんでいた。
(11/48)
途中、探偵たちは、エジプト警察の警部と待ち合わせをした。警部は、捜査に協力してくれることになっていた。
「それでは、宮殿へ御案内致しましょう。」と警部は言った。
「街の人々は、女王様に毎日礼拝をしています。」
「悪人たちが来た時は、王家の短刀を投げつけて、女王様は、敵を追い払うのです。」
(12/48)
美しい女王は、探偵たちを歓迎してくれた。人々は、女王に深く頭を下げた。
「ようこそ、我が宮殿へ。私は、エジプトの女王エルボスと申します。」と女王は言った。
明智小五郎は、「こちらこそ、よろしくお願いします。」と答えた。
「そして、助手の小林芳雄と、四人の探偵のスイカ、バナナ、パッションフルーツ、リンゴです。」
(13/48)
宮殿に入った探偵たちは、大広間に通された。
女王は、壁のひもを引いた。すると、幕が開き、ファラオ像が現れた。
「これは、私たちエジプト人の守り神です。」と女王は言った。
「実は、もう一体いたんです。それは、とても強い化け物なのです。彼は、伝説のパンツをはいて、ピラミッドに隠れ住んだという言い伝えがあります。」
(14/48)
女王と別れた探偵たちは、警部の愛車に乗り博物館を目指した。
「博物館までの距離は千メートルです。」とカーナビの音声が聞こえた。すると明智小五郎は、「ラジオをかけろ」と警部に言った。
(15/48)
「皆さん、こんにちは。ラジオMCのパブロ・ディンゴ・ゴルティカトビアス・ジョーダンです。」
「それでは、パブロ・ディンゴのいらっしゃーいの前に、明日のお天気をお伝えします。」
MCのパブロは、話し出した。
「結婚式玉姫殿がお送りする天気予報。明日は、良く晴れるでしょう。くもりのち晴れ、雨が降る心配がありま……。」
「ボン」とラジオは、急に爆発した。
「ハァ故障か……。」と、明智小五郎は、つまらなそうに言った。
(16/48)
探偵たちは、博物館に着いた。
「この博物館には、王家の遺産が展示されています。」と警部は言った。
「それに、機械で出来ている、なんでも知っているスフィンクスがあります。」
(17/48)
博物館には、来世で演奏する青銅のシンバルやハープ、ミイラや猫の像、羽のうちわ、来世で美しくなるための化粧ケースなどが展示されていた。
中央には、巨大なスフィンクスが座っていた。
明智探偵が、博物館の受付でもらったカードをかざすと、スフィンクスが動き出した。
(18/48)
「私のなぞなぞに答えられたらなんでも教えてあげましょう。問題は全部で三問です。それでは、頑張ってください。」とスフィンクスは、探偵たちに言った。
「早速やってみるか」と明智小五郎は、言った。
「先ずはこの問題です。」とスフィンクスは、話し続けた。
「朝には、四本足、昼に二本足、夜には三本足になるものは何?」
(19/48)
「赤ちゃんの時には、ハイハイ、やがて大人になると立てるようになる。年をとると、杖をついて歩く。それは『人間だ』。」
「正解です。流石ですね。次の問題です。的が十個ある野菜は何?」
「それは、俺が本当に苦手な野菜、すなわち……『トマト』だ。」
「正解です。流石ですね。あと一問です。頑張って下さい。」とスフィンクスは、探偵たちに言った。
「最後の問題です。火の周りにある花は何?」
「ハムスターがよく食べている種がとれる。それは、『ヒマワリ』だ。」
「正解です。流石ですね。なぞなぞは以上です。では、何でも聞いて下さい。」
(20/48)
明智探偵は、スフィンクスにこう聞いた。
「あのピラミッドは、誰かに建てられたのか?」
すると、スフィンクスは、「ある怪しい男が建てたのです。」と答えた。
「実は、あのピラミッドの中には、怪しい男がファラオに化けて宝とともに潜んでいるんです。」
「そうですか。」と小林芳雄は言った。
(21/48)
明智探偵は、警備員にスフィンクスの言った事を報告した。
その時、警部の携帯電話が鳴った。
「なにィ!! ピラミッドの入口が見つかっただとォ!! すぐに捜査だ!!」
「小林芳雄!! もうそろそろ博物館を出発する時間だ。」と明智小五郎は小林芳雄に伝えた。
(22/48)
探偵たちは、急いでエジプト警察に行って、捜査本部を立ち上げた。
探偵と警察たちの「潜入作戦」が決まった。
「明日の朝六時に間に合うように、準備しておくように。以上だ!!」
「ついでにもう一つ。宝を集めることも忘れないように。」と明智小五郎は警備隊に話した。
(23/48)
会議の後、探偵と警部は、署長室に呼び出された。
「宝は必ず、手に入れるのだ。」と署長は言った。
女性秘書は、笑顔で「期待しています。」と言った。警部は、こう答えた。
「必ず探します。」
(24/48)
王宮に戻った明智探偵は、女王にピラミッドの見取り図を見せた。
女王は、驚愕した。
「これが、スフィンクスが言っていた怪しい男が建てたピラミッドですか。」
「明智探偵、今夜は王宮に近くの宿に泊まって下さい。」と警部は、言った。
「そうか、じゃあまた明日。朝、間に合うようにします。」
二人は、王宮の近くにある宿に泊まった。
(25/48)
明智小五郎は、明日のため、警察にトラックの整備をしに行った。
ホテルの客室に残った小林芳雄は、自分が持ってきた缶詰と、食パンとアジフライを食べた。
その後、彼も明日の準備をした。
「えーっと、懐中電灯と閃光弾とヘルメットだな、よし。」
「これで完了!!」と小林芳雄は、バスタオルと洗面器を持って、地下にある大浴場へ向かった。
(26/48)
大浴場に行った小林芳雄は、「合金の湯」に入った。
「あっ、警部。」と小林芳雄は、警部を見て驚いた。
「ワッハッハ、残念でした。これは、女性のマネキンでした~。」
「明智さん、警部が女性のマネキンと混浴してます。温度をアップして下さい。」と小林芳雄は警察から帰ってきた明智小五郎に命令した。明智小五郎は、お湯の温度をアップさせた。
「アチーー!!」と警部は、飛び上がって宙を待った。
「ハァ」と小林芳雄は、ため息をついた。
こうして、捜査の一日目は終了した。
(27/48)
エジプト警察署に戻った警部は、ソファで寝た。
すると、警部は、ある夢を見た。
それは、今から二十六年前のことだった。とある酒場の社交クラブ「スカラベ」に行った警部ゾエドは、番号のついた木札をもらい席についた。
(28/48)
ゾエドは、ポールダンスを見た。
「ブラボー、なかなかやるじゃないか。」とゾエドは心の中で言った。
長髪の女性は、ポールの周りをクルクルと回った。客たちは、パチパチパチと拍手をした。
(29/48)
二十分後、七人の客が、クラブを去った。残ったゾエドたちは、ショーを見続けた。
続いては、蛇に噛まれても平気な女性の芸だ。緑色の毒蛇が、口をパカリと開いた。気合いを入れた女性は、素手で毒蛇の口に手を入れ……。
(30/48)
「ゴーンゴーン」と時計の音が鳴って警部は「わっ!!」と驚いた。
「なんだ夢か。ビックリしたー。」
「それでは、そろそろベッドで寝ようか。」と警部はベッドに入った。
(31/48)
次の日、探偵たちは、エジプト警官隊と共に、車に乗って、ピラミッドに向かった。
「ついたぞ!! あれが、電子ピラミッドだ!!」と明智小五郎は叫んだ。
(32/48)
ピラミッドに着いた探偵たちは、ピラミッドの階段を登り入口に向かった。沢山の警察官たちが、後に続いた。
「さあさあ、宝を全部集めておくのだ!!」と警部は言った。
(33/48)
ピラミッドの中に入った探偵たちは、せまい通路を進んだ。壁には、エジプトに伝わる神話が描かれていた。
空気は、氷のように冷たい。探偵たちの足音だけが響いていた。
「わっ!! スカラベだ!! こりゃ珍しい」と小林芳雄は地面にいた黄金のスカラベを袋に入れた。
(34/48)
二人は、せまい通路から広間に出た。広間の空気はとても冷たく、探偵たちは、体をふるわせた。
すると、目の前に木乃伊(ミイラ)たちが立ちふさがった。木乃伊たちは、両手に剣を持っていた。それだけではなく、黄色の眼が包帯の奥で光っていた。
「早速始めようか。」と明智小五郎はつぶやいた。
(35/48)
探偵たちは、剣を取りミイラ兵と戦った。ミイラ兵は、両手についている剣を回転させて襲いかかって来た。二人は、超高速で剣を振り回した。
(36/48)
「これで全部撃破だ。」
二人は、ミイラ兵の体を見て、驚いた。なんと、ミイラ兵は、ロボットだったのだ。その時、扉が自動的に開いた。二人は、先に進んだ。
(37/48)
「真っ暗な大広間だ。」と小林芳雄は言った。
ピラミッドの最深部に入った二人は、大きなファラオ像を見つけた。すると、ファラオ像の眼が開き、動き出した。
岩が崩れる音が響いた。二人は、恐ろしさに震え上がった。
「うわっ、何だ!?」
(38/48)
立ち上がったファラオ像は、鼻から鼻毛針を発射し、二人に攻撃して来た。
大きくて固くて、鋭い針が飛行機のようなスピードで飛んで来た。二人は、あわてて身をかわした。
「今だ!!」
と小林芳雄はバズーカを構えた。
(39/48)
小林芳雄は、火炎バズーカでファラオのパンツを焼き尽くした。すると……。
ガラドカズタバタバラドンドシズシバンガシバキドキズキズバズコンと、壊れた機械のように、バラバラになった。
そして……。
(40/48)
中から「怪人二十面相」が飛び出して来た。
「明智小五郎、小林芳雄、お前たちの勝ちだ。褒めてやろう。このピラミッドは、私の基地だ。このファラオ像も、私が化けていたのだ。」
次の瞬間。二十面相が背中にしょっていたブースタージェットが火を吹いた。
「さらばだ!! 明智小五郎、そして小林芳雄。フハハハハハ……。」
(41/48)
「待てっ!! 怪人二十面相ーっ!!」
浮き上がった二十面相は、天井の穴から空へと消え去った。
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急にピラミッドが超大型地震のように揺れ始めた。
驚いた警備兵と二人は、急いで逃げ始めた。
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二人は、急いではしごを登り、出口に向かった。
天井から砂やレンガなどがガラガラと降ってきた。
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みんなは、出口を見つけ急いで脱出した。
「みんな、こっちだーっ!!」と明智小五郎は叫んだ。
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電子ピラミッドは、ゆっくりと地面へ沈んだ。蟻地獄にひきずり込まれるように。
「ザザザザザ……。」
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みんなが去った後、崩れたピラミッドは立入禁止区域となった。侵入した者は、百万エジプトポンドの罰金になる。
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三人は、宮殿に戻り、警部は、女王に報告した。
「女王様、怪人二十面相に逃げられました。」
「それは、残念でしたね。」と女王は言った。
「でも、明智小五郎と小林芳雄は無事です。」と警部は、笑顔で言った。
「さて、そろそろ日本へ帰国しようか。」と明智小五郎は言った。
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二人は、警部と女王と別れて日本へと帰った。
こうして、明智小五郎と小林芳雄の事件は、解決した。
ということで、「少年探偵団オリジナル編」は、これにて、おしまい。
それでは、さよなら、さよなら、さようなら。
(終)
みんな、どうだった。これからも私たちは、事件をどんどん解決するぞ。
それでは、また会おう。
T君は、今も新しい作品にチャレンジしています。今作を越えるボリュームになりそうです。
今から完成が楽しみです。