今回は、「物語を作ろう!」小学4年生のYさんの作った作品を紹介します(プロジェクトのねらいについては「」をご覧ください)。
Yさんは、『びりっかすの神様』や『二分間の冒険』の作者・岡田淳さんの作品のような面白い話を書きたいと考えました。そのためには日常の中で不思議な出来事が起こることが大切だと考えたYさん。この物語では、どのような不思議な出来事が起きるのでしょうか。絵を描いたりメモを作ったりながら考えた個性的な登場人物もこの作品の魅力です。どうぞお楽しみに。
空の精霊たち
小4・Yさん
世の中には精霊を信じる人もいれば信じない人もいます。この話には、精霊を信じる人たちが登場します。
ある夏の日、小学四年生のユミコと中学二年生のモモは、大都市東京にひっこしてきた。ふたりはゆめだった東京に住むことができて大喜び。それから二ヶ月がたち、クラスメートともなじんで、近所の八百屋のおばちゃんとおじちゃんとも仲良くなった。でもとなりに住む石田さんとはあまり仲良くない。石田さんはきれいなおばさんだ。八百屋のおばちゃんに聞くと、昔は礼ぎ正しい人だったみたい。でも今は、あいさつ一つもしてくれない。とても感じの悪い人。ユミコは昔の池田さんがみてみたいと思った。
ある秋の日、ユミコとモモは家でそうじをしていた。すると、モモが「掃除当番を決めようよ。そしたら、当番じゃない日は、ゲームやマンガを読めるよ。」と提案した。ユミコはモモがいった事にさんせいした。その日から、そうじを毎日交代で続けることにした。
風の強いある日、ユミコは庭に出たところのかべにはってある当番の紙を見に行った。しかし、紙が風にとばされて近所の八百屋さんの屋根の上に乗っていた。そこで、その日掃除する人をジャンケンで決めることにした。
二回あいこがつづいたが、三回目でユミコが勝った。ところが、顔を赤くしたモモが「負けるが勝ち」といった。モモは、どうしてもそうじをやりたくなかったのだ。そしてけっきょく、「勉強がいそがしい」とか、「大人のじじょうで」などといいわけをつけてユミコに仕事を押しつけてしまった。
ユミコははらを立てながらぞうきんをとりに二階に上がった。すると、まどから、こしをぬかして地面に座っている八百屋のおばちゃんが見えた。びっくりしたユミコは、あわてて外に飛び出した。
おばちゃんは、人さし指を空に向けて「たいへんだー空の精霊たちがケンカしとる」とさけんだ。ユミコは意味がわからず空を見た。なんと右の空は、空の色をかえるかのような雲におおわれ、雷がなりイナズマがひかっていた。まん中では、晴れているのに雨がふっている。お天気雨だった。左には白い雲がもくもくとうかんでいる。ユミコにもおばちゃんがこしをぬかしている意味がやっとわかった。そこに通りかかった石田さんも空を見た。でも、まったくおどろく様子は見られない。ユミコは、心の中で「たぶんりこんしたばかりでなにも考えられないのではないか」と思った。
ユミコは、仲直りさせてとおばちゃんにたのまれた。でも仲直りさせる方法なんて知らない。それを聞いたおばちゃんがあぐらをかいて、「飛べ飛べ高く飛べ。」とじゅもんをとなえた。すると体がふんわりとうきはじめたではないか。ユミコは「今日はびっくりすることは、これで二回目、心ぞうがはれつしそう。」とつぶやいた。
雲の上には、四けんの家がならんでいて、その前で赤い顔をした精霊が四人、火花を散らしていた。これでまたびっくりすること三回目。
さて、おばちゃんに仲直りさせてくれとはいわれても、この精霊たちをどうやって仲直りさせればいいのかがわからない。ユミコは、精霊たちになぜこんなことになったのか聞いた。だが、四人いっせいに別々なことを言うのでまったく聞きとれなかった。一人ずつ話すようにと言っても、だれも聞かない。そこで、ユミコは、まずじこしょうかいからすることにした。
「私の名前はユミコっていうの。よろしくね。」
「よろしくね。私は晴れの精よ。ドーナツが大好き。」
「ありえないドーナツなんてふとるもとよ。わたしは雷の精。」
「なにをだれが好きだろうとかんけいないでしょ、私は雨の精。」
「まあまあおちついてよ。私はそうやっておこっているのはきらいなのよ。ケンカするならあっちでやってよ。雲の精よ、よろしくね。」
だいたい精霊たちの特ちょうや性格はわかった。でもケンカになった理由がわからない。そこで一番冷静な雨の精に聞いてみた。空に出て仕事をする順番の紙をなくしてしまったの雲の精に、雷のせいがおこってケンカになり、おまけに順番がわからないので、みんないっせいに出てしまったらしい。そこで、ユミコは考えた。
どうしたら仲直りできて、一度に空に出ないのか。その時、頭の中に、モモとそうじの当番を決めたことが思い浮かんだ。そうだ、もう一度決めなおそう。
でも、当番表を作るには、考えなければならないことがある。一つは、だれから始めてだれで終わるかを決めること。もう一つは、空の上に紙があるのかということ。でも片方すぐに解決した。晴れの精が紙を持っていたからだ。
そこで、さっそく当番表を作り始めることにした。精霊は、モモのようにずるくはないので、順番がすぐ決まった。順番は、一番目は晴れ。二番目は雲。三番目は雨。四番目は雷。雷の精は最後になったのですごく怒っていたけれど、決まってしまったことはかえられないとした。そしてまた、同じことにならないように、かべにはっておいた。しかもガムテープでしっかりと。これでみんなのきげんがよくなり、天気はたちまち、晴れになった。
それから、ユミコは精霊たちに送ってもらった。しかし、家に帰れば、ケンカをしているモモにそうじをさせられる。
「まったく、空の上の方がいいや。」
でもユミコは、空の上でもやったように少し良いことを考えだした。空の精霊たちがやったように、また当番表を作るのだ。紙をモモに持っていくと、「今日はユミコがやれ」とか「土曜日と日曜日もやれ」といわれた。少しはらが立ったが、全部聞いて、表に書きこんだ。でも、学校がいそがしい時は、たのんだり、たのまれたりしたし、自分の番の時は、もんく一ついわないでそうじをした。
それから、ユミコとモモはそうじの事でケンカをすることはなかった。この不思議な出来事から、二十年たった。今では、ずっと仲が悪かった石田さんがけっこんして、新しいダンナさんと仲良くなり、やっとユミコは昔の石田さんを見ることができた。近所の八百屋のおじちゃんは、死んでしまったが、八百屋のおばちゃんは石田さんみたいにおちこまない。昔とかわらず、おばちゃんは元気に野菜を作って売っている。
ユミコは、時々精霊たちは元気にしているかと気になるが、天気はユミコが決めた通りに晴れ、くもり、雨、雷とつづいているので安心している。それに、この町にいた天気よほう士はみなやめてしまった。なぜってこの町のみんなが天気の順番を知っているからさ。
また、ユミコとモモは、けっこんして家を出てそれぞれ楽しくくらしている。でもユミコの作ったそうじの当番表は、まだ家のかべにはられたままだ。
おわり
あとがき
このお話を読んで、みなさんはどう思いましたか。私は、こういう空の精霊たちに会ってお話をしてみたいなぁと思って書きました。また、このお話では、モモとユミコがゆずり合い、掃除当番の表を作り上げることができました。みなさんにもモモとユミコがしたようなゆずり合いができるようになってほしいと思います。もし、このお話のような不思議なお天気になったら、ぜひ、ユミコがしたように、精霊たちを仲直りさせてあげてください。
あのあと、ユミコとモモはどうなったのか気になる人もいると思います。その続きを少しだけ教えます。
二十年後の五月六日、ユミコに赤ちゃんが生まれました。しかも、一人ではなく、四人も。その顔が、昔会った精霊ににていたので、名前を晴れ子、雨子、雲子、雷子にしました。ユミコは子どもたちをかわいがって、子どもたちはどんどん大きく育っていきました。ユミコにはまるで子どものころにあった出来事のおかえしのように思えました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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