前回お伝えした『スイスの画家 クライドルフの世界』のパンフレットを見て興味を持った小学五年生のY君が、この展覧会に行ったと嬉しそうに報告してくれました。
そこで、この日の授業は、急遽予定を変更して「クライドルフをテーマに作文しよう」ということになりました。
書く前に
作文を書き始める前にY君に考えてもらったことは次のようなポイントです。
- 何について書くか。一番いいたいことは何か
- 誰に(どんな人に)何のために書くか。
- 自分の文章を読んで、どうなってもらいたいか。
- 何をどれくらい書くか。
1~4については、自分ではっきり決められるものから書いて構いません。書きやすいものから書いていく事で、次第に自分の書きたいこと、各分量、表現方法などが明確になっていきます。今回、作文を書くために使う時間は30分間です。いきなり書き始めるのではなく、こうした計画を立てることで、限られた分量の中で構成を決めるという意識が芽生えていくのです。
さて、Y君は次のようなポイントで書くことに決め、短い時間で集中して作文を仕上げました。
- クライドルフがどんな人かを伝える。
- 低学年くらいの子たちに説明するように。→ですます調で書く。
- 読んだ人がクライドルフの本を読んで、自然にしたしむようになってほしい。
- クライドルフの絵の描き方や物語について、原稿用紙一枚半くらいの量で。
- 実際に書く
作品紹介
「クライドルフの思い」
小5・Y君
今日はこれからクライドルフがどんな人かということについて話します。まずクライドルフは絵本などを描いている有名な画家です。クライドルフは絵本が作られはじめたこころに、すばらしい絵本をたくさん作り上げました。クライドルフの絵には、はいけいをだんだんうすくするなど細かいところに工夫があります。一番良いと思う工夫は、虫や花などを人のようにえがくことです。僕は、そうすると話がうまくすすんだり、絵だけで物語が(講師による加筆箇所)わかるような描き方だと思います。それにクライドルフの作品には自然をテーマに描いた作品が多く、別の世界にしたしみやすいように描かれていると思います。みなさんもクライドルフの本を絵本を読んで、自然にしたしんでください。
クライドルフには、細かい工夫がある。その中でも特に僕はここが良いと思う。こうした書き方がとても上手ですね。しかも、クライドルフの「虫や花などを人のようにえがくこと」という工夫が、どのように良いのか=「話がうまくすすんだり、絵だけで物語がわかる」ようになると述べています。抽象的な事柄をだんだんと詳しくしていく書き方ができることは、特に高学年に差し掛かるころに大切なポイントです。
実は、そのような書き方を意識するとこの作文はもっとわかりやすくなる可能性を秘めています。今回は、ここで授業を終えましたが、さらに修正→推敲という作業を加えていくと、さらに構造的にしっかりした文章になっていきます。今後のY君の成長が楽しみです。