今回は、入室してはじめて授業を迎えたY君の取り組みをご紹介します。
Y君は、よく観察し、じっくり考えながら取り組む姿が印象的な小学5年生の少年です。ロアルド・ダールが好きで、岡田淳さん、富安陽子さんの作品など、読書経験も豊富です。
初回は、これからY君が学ぶ環境である教室をよく知ってもらうために「教室を観察しよう」というテーマで授業をしました。この授業には「空間を把握し、その位置関係を言語化すること」、「その部屋の様子を五感を使って感じ、言葉にすること」という目的があります。
また取り組む前に、「授業から帰ったらきっとお母さんと教室の話をするでしょう? お母さんにきちんと教室の様子を伝えられるようにしよう」と話すことで、Y君がこれから「誰に向けて」書くのかという意識を持つように促します。
まずY君には、教室の全ての部屋を見て回り、方眼紙に見取り図を書いてもらいました。Y君は部屋の中にどんなものが置いているのか観察したり、体験授業のときには入らなかった部屋の扉を開いてみたりと、探検するような気持ちで部屋の中を歩き回ります。その際、講師は「部屋の中を五感を使って観察しよう。部屋の中、窓の外からどんな音がするか、窓から流れてくる空気はどんな様子か、といった具合にね」と声をかけています。
Y君は何度も線を消しながら、詳細な部屋の見取り図を書き上げました。
その際に部屋の方角にも注目してもらいました。
「ベランダがある部屋は、どの方角だろう。洗濯物が干せるようになっているのがヒントだよ」
「今、窓から夕日が差し込んでくるけれど、日が沈むのはどちらだろう」
こうしたやりとりをしながら、Y君は、この教室を紹介するために必要な情報を集めていきます。
見取り図を書き終え、作文を書く時には、講師はY君に次のようなアドバイスをしています。
- 意味のまとまりを考えて段落分けをして書くこと
- 最初の段落で、まずはこの教室の全体の情報を紹介すること
- その後の段落は、説明したい部屋ごとに分けること
前日の体験授業の際、Y君がある程度書き慣れ、課題に自分で取り組むことのできるお子様であることを把握していました。ですから、この時は、あまり細かく指示は出さずに、作文を書くための構造面のアドバイスにとどめています。
「リテラ教室のしょうかいと良いところ」
小5・Y君
これからリテラの説明をします。
この教室は千住けいさつのとなりのビルの六階にあります。部屋の数は六つです。この教室にはすべての部屋にテーブルや机などがあります。
いちばん南側にあるのが、勉強する部屋です。部屋の西側には五だんと四だんの二つの本棚があります。東側にはクロゼットがあります。そして中央には勉強づくえがあります。はとどけいがなくと、しゅうちゅうが少し切れるけれど、おもしろいです。つくえの上には、文房具のほかにガーベラの花がかざってありました。部屋がいいにおいになると思います。
二へや目は、さっき紹介したへやとつながっていて、西にキッチン、東に本だな、北にソファーがあります。ここの小さなつくえにも花がかざってあります。
もっと北に通路を行くと、先生たちのへやや、せん面所、よく室、トイレなどがあります。先生たちの部屋はいちばんまどの数が多い所です。よく室は使わずに物をおいてありました。つきあたりには、洋服をたてるスタンドがあって、左に曲がるとげんかんです。
リテラ教室は、こまかい所まできれいにしてあったり、花をかざってあったりしていいと思いました。それにまどぎわにつくえがあるので、涼しくてすごしやすいです。あとは読書時間があることが好きです。とても楽しくすごすことができます。
初めての授業でも、緊張せずに考えることを楽しみながら観察し、作文できています。アドバイス通りに、段落分けをすることもできています。Y君は、自分の過ごすことの多い学習のための二つの部屋と、それ以外の部屋というカテゴリーに段落を分けたようですね。かざってある花の匂いをかいだり、窓から吹き込む涼しい風を感じたりしたことも、盛り込むことができました。
初めての授業を楽しんで、一気に600字の作文を書き上げたY君に花丸をあげたいと思います。その後、Y君は岡田淳『ようこそおまけの時間に』(偕成社)をゆったりと楽しみ、一時間半の授業を終えました。これからが楽しみです。