【生徒作品】『夕日と人の心』(新中2S ・Sさん)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。
2020年は新型コロナウィルスの影響により、教室での発表となりましたが、生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を進めてまいりました。

今回は、新中2S ・Sさん『夕日と人の心』を掲載致します。

教室から見える夕日の美しさに心打たれたSさんは、実験によって、光の入射角度と空気の透明度が夕日の赤い色に関係する条件であることを調べ、色彩心理の観点から色の持つ意味について考えました。

その他の発表動画は、「2020年 生徒作品発表 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
夕日がなぜ美しいと思うのかを調べた作品です。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
夕日を見るとどうして美しいと思うのか気になったからです。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
夕日を作る実験です。実験が好きなので夕日が作れてたのしかったです。
作品づくりで難しかったことは何ですか?
発表の練習です。作品が長かったので、練習が大変でした。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
夕日がなぜ美しいと思うのかについてです。1つの色が心に与えるものがあることと、様々な色が混じり合っているので、夕日を美しいと感じることについて学びました。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
心理学について学びたいです。
来年、研究したいことはありますか?
動物を見て癒される理由について。
この作品を読んでくれた人に一言
夕日を見てみてください。

生徒作品

新中2S ・Sさん『夕日と人の心』

私が好きな景色は、教室から見た夕日です。いつものように三階の教室でパート練習をしていると、先輩が突然カーテンを開けました。「わー!! すごーい!!」先輩がさけびました。私はすぐに、他の先輩たちと一緒に、窓の近くに行きました。雲一つない空が一面、夕日色に染まりとてもきれいで、私は感動してしまいました。

このことがきっかけで、私は、どうして夕日は赤いのか、なぜ、夕日を美しいと感じるのか調べてみたくなりました。

まず、なぜ夕日が赤いのかを説明します。太陽の光には、様々な色が含まれています。雨の後に見える虹は、太陽の光が雨粒を通り、光になかの色が分かれたものです。この現象を「光の分散」といいます。また空では、太陽の光が、分子やちり、小さな水滴など、ランダムに散らばる小さな粒にぶつかり、四方八方に飛び散っています。これを「散乱」といいます。太陽の光の中でも、波長の短い青や紫は散乱が起きやすく、そのため空は青く見えます。波長の長い、黄色、オレンジ、赤は波長が長く散乱しにくいため、そのまま地上におりてきます。夕方になると太陽は地平線近くまで沈みます。このため、太陽光は私たちの目に届くまでに長い距離を進まなければなりません。この間に太陽の光は、発散されやす青い光を失って赤っぽくなります。そして、本来は波長が長く散乱が起きにくい赤色の光も散乱され、空が赤っぽく見えるのです。

私は、この現象をより理解するため、人工的に夕日を作る実験をしてみました。実験では、部屋を暗くして、ワックス液入りのペットボトルに光をあて、水の透明度による変化と光の角度による色の変化の観察しました。

こちらは、ワックス液を小匙1杯いれたものです。懐中電灯を当てる角度は0度、30度、60度、90度です。0度の時は、オレンジ色は弱いのですが、30度、60度の角度がつくにつてれ、オレンジ色が増していきました。90度も、全体的にオレンジがかって見えますが、懐中電灯の白い光も強く感じました。

こちらは、ワックス液を小匙2杯いれたものです。実は、この0度の時が一番、きれいなオレンジ色が見えました。光を散乱させる分子の量もちょうどよく、また、光も長く、本物の夕日に近い状態だったのでしょう。30度、60度、90度と角度がつくにつてれ、光の長さが短くなり、オレンジ色が弱まったように感じました。

こちらは、ワックス液を小匙3杯いれたものです。ペットボトルのなかの濁りが強くなり、オレンジの光は、底の方に見えるようになりました。どの角度でも、濁りのせいで、光自体が弱まり、全体的に暗く、曇り空の日の夕日のようでした。

この実験から、美しい夕日が見える条件は、空は澄み切っているよりも、少しチリがや水分が舞っているような状態だとわかりました。

なぜ、私達はタ日を見て美しいと思うのか。今回私は、『色彩心理のすべてがわかる本』を使って、色が心に与える影響について調べてみました。

動物はそれぞれ、生きる環境に合わせて五感を発達させてきました。人間は、特に視覚が優位に働きます。それは、生き延びるための戦略として色を感じる力を得たからです。

まずは赤色について紹介します。みなさんも、夕日と言えば、赤色を思い浮かべるのではないでしょうか?赤は人間の筋肉を緊張させ、血圧、脈拍を上昇させます。たとえば大昔のことですが、狩りの最中にケガで血液が流れれば、命を守ろうと必死になったでしょう。反対に、獲物の流血であれば、あと少しで仕留めることができるぞと力が湧いたはずです。つまり、赤色の夕日を見ると、生命力が高まるので、「美しい」と感じるのかもしれません。

先ほど、夕日と言えば「赤」といったように、私たちは、タ日が空を「赤く染める」と表現します。しかし実際には、黄みの赤、または橙、オレンジという表現もできます。色相環でみても、これらの色は、近い位置にあり、昔は区別されず、赤色の一種だったかもしれません。
特に炎は光を放つ明るい赤の一種で、見た目は、橙色ですが、赤と表現されます。色に関する調査では、最も暖かいと感じられる色は橙色を選ぶ人が多いという結果もあるそうです。また橙色のカラーイメージには「喜び、活発、陽気、明るい」などがあるそうです。私は、橙色を見るとみかんを思い出します。あまくて美味しいみかんは、私たちに元気をくれます。つまり、橙色の夕日は気持ちを明るくし元気をくれるので、「美しい」と感じるのかもしれません。

夕日も、夜に近づくにつれて紫や黒といった色味が加わってきます。最後に紫色についてご紹介します。紫には、高貴、高級感という良いイメージがあれば、妖しい、病に侵されているといった悪いイメージまで、時代や文化によってさまざまに意味づけられてきました。紫の夕日も、赤とも青ともなりグラデーションができることで、不思議、また、神秘的な色と感じるのかもしれません。私も、紫色のタ日を見た時に、綺麗だなと思う反面、これから暗くなると思うと少し不安になります。

この研究を通して、私は夕日の美しさとは常に変わり続けているところにあるのではと思いました。夕日は、刻一刻と色を変えていき、二度と同じ風景を見ることはできません。そのことが、美しさを感じさせるのだと思います。そして、いろいろな色が重なりあい美しさを作っているとも思いました。

私は吹奏楽部でトランペットを吹いています。一人で練習しているときよりも、合奏してる時の方が音に立体感があって、迫力も生まれ、とても楽しいと感じます。そして、夕日も赤、紫、橙、黒など様々な色がグラデーションを織りなしています。音楽も色も、たくさんのものが重なり合いあった方がより心に響くのだと思います。皆さん、ぜひ、夕日を眺めてみてください。

これで、発表を終わります。ありがとうございました。

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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