【授業報告】『限りある資源を長く利用するために』(Y君・中1)

受検を主体的な学びの中にとらえなおす

今回は、2014年4月から中学生になったY君が、春に小学校の取り組みのまとめとして書いた作文の紹介です。公立中高一貫校の受検を通してさまざまな課題に取り組んだY君は、それらの学びのまとめとして「エネルギー問題」をテーマに作文を書くことにしました。

公立中高一貫校の適性検査では、資料の読み取り、数的処理能力、読解力・文章作成能力など多様な力が試されます。しかし、それらの能力は、受検という性質上、出題された課題に取り組むという受け身の形で発揮されるにすぎません。

せっかくさまざまな学びの機会を得たのですから、それらを振り返り、主体的に意味づけることがこの取り組みの目的です。出題者の意図ではなく、今度は自分の文脈で、今まで取り組んだ資料やグラフ、あるいたそれらを読解・考察・表現する力を活用し、レポートするのです。

作品紹介

『限りある資源を長く利用するために』
Y君・小6

ぼくがこの文章を書こうと思ったきっかけは、中学受検の問題で、資源に関することがらの出題が多かったからです。その中でも石油はエネルギーだけでなく、さまざまな石油製品という形で、私たちのみのまわりに多く利用されている資源です。そのため、石油をテーマにしたこの文章を書こうと思いました。この文章では、限りある資源をできるだけ長くつかうためにはどうすればよいのかについて考えていきたいと思います。

まず、石油はあとどれくらいもつのでしょうか。二〇一一年の時点で約五十四年です。つまり、ぼくたち十一、二歳の子どもが六十四、五歳になって年金をもらい始めるころに石油はなくなるということです。ただし、これは今のままの量で石油を取り続けた場合です。つまり、石油を使う量を減らせばもっと長く使うことができるのです。

石油を長くつかえるようにしなければ五十四年後に生きている人たちが困ります。では、具体的にどのような面で困るのでしょうか。まず、身のまわりからプラスチック製品がなくなってしまいます。なぜならプラスチックは一部をのぞいて全て石油で作られているからです。すると、定規やファイルなどがなくなります。そのほかにも、インクや消しゴムなどの石油を原料とする製品がなくなります。ガソリン、灯油などの燃料もなくなるので車やヒーターなども使えなくなります。電気の明かりも消えてしまうでしょう。なぜなら、火力発電で石油を燃やしているからです。このように身のまわりには多くの石油製品や石油をエネルギー源としたものがあります。これらのものが全てなくなったら困りますよね。

このように考えると石油は大きく分けて二つ目的で使われていることがわかります。一つは燃料、つまりエネルギー源になっています。灯油やガソリン以外にも、発電のための燃料にも使われています。もう一つは石油製品です。石油から作られるプラスチックは、製品にするときに、軽く、丈夫で、加工しやすいという長所があります。そのため、プラスチックはさまざまな製品に姿を変え、しかも大量に利用されているのです。しかし、丈夫であることは、裏を返せば短所であるとも言えます。なぜなら、丈夫であることは、自然にかえりにくいということでもあるからです。つまり、プラスチックは長所と短所が表裏一体なのです。私たちは、短所よりも長所に目を向けて、石油製品を使い続けてきたのです。

『プラスチックごみのゆくへ』 EICネットごみ資料集「プラスチックのごみ」より http://www.eic.or.jp/library/gomi/gomi_pla_s.html

『プラスチックごみのゆくへ』
EICネットごみ資料集「プラスチックのごみ」より
http://www.eic.or.jp/library/gomi/gomi_pla_s.html

では、これらの大量の石油ゴミは、どう処理されているのでしょうか。日本では、焼却や埋め立てをして処分されるプラスチックゴミは、五六%、ごみ発電や固形燃料という形で別のものにリサイクルするのが四四%あります。

プラスチックのリサイクルは大きく分けて三つの方法があります。一つ目は、マテリアルリサイクル。プラスチックゴミをそのままプラスチックの粒にする方法です。プラスチックゴミをそのままプラスチックの粒にする方法です。二つ目は、ケミカルリサイクルと言って、プラスチックゴミを薬品などを使って分解して、液体のようにする方法です。最後は、サーマルリサイクルといい、プラスチックやほかのボミを固めた固形燃料を燃やして発電する方法です。そのほかにも、プラスチックを約四〇〇℃で溶かして冷ますと石油に還元する方法やプラスチックのガス化などの方法もあります。

では、私たち一人ひとりは具体的にどのような努力ができるのでしょうか。

まず、石油を使っているものを買わない、使わないということです。たとえば、日本のプラスチックの三九・五%は、フィルム・シート類です。レジ袋もこの中に入ります。つまり、エコバックを持っていってレジ袋も使わないようにすることで、石油を節約することになります。

ほかにも石油の使用を減らす工夫があります。最近は、ペットボトルなどのプラスチックを植物性の原料で代用したものがあります。五〇〇ミリリットルのペットボトルが二〇gなのに対して、植物性のプラスチックが二五%入ったペットボトルが十二gで作ることができます。すると、植物性プラスチックが入ったペットボトルの方が全体で四五%も石油を減らしたことになります。ペットボトル製品を買わなければならないときも、こうしたペットボトル製品を選ぶと石油を使用を減らすことにつながります。

では、燃料として石油を使う場合、石油はどのように減らすことができるでしょうか。灯油やガソリンを減らすのは、ヒーターをつけすぎないようにすることや、車であまり外出せず、電車で出かけるようにするなど、自分で減らすことができます。さて問題は火力発電などに使う石油を減らすことです。そのためには、石油を使って作った電気を節約することが必要です。電気の節約はさまざまな方法がありますが、ここではLED電球について紹介します。

『公中検ステップアップ問題集VOL.1 グラフ・資料の読み取り編』より

『公中検ステップアップ問題集VOL.1 グラフ・資料の読み取り編』より

LED電球と白熱電球を単価で比べるとLED電球が三千円、白熱電球が百円と白熱電球の方が安いことがわかります。しかし、一個あたりの使用時間と千時間使用した時の電気料金はLED電球の方が電気代が安いことがわかります。そこで、白熱電球をLEDと同じく四万時間使った時にかかる費用を比べると、LED電球は、三〇〇〇円×一四〇×四〇〇〇〇時間=八四〇〇円。それに対して、白熱電球は、三〇〇円×一〇〇個×四〇〇〇〇÷一〇〇〇=五二〇〇〇円もかかることがわかります。こうして考えると、白熱電球よりもLED電球の方が、かかる費用が安く、かつ電気を節約できることがわかります。

終わりに、ぼくが言いたかったことは、一人ひとりの小さな努力が積み重なることで、自分たちの未来を守ることができるということです。これからも、自分たちのできることを少しずつ少しずつ積み重ねていきたいものです。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 授業報告, 生徒作品

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