【アートメチエ報告】『わたしの知らないわたしに出会う ~自分の顔の指人形をつくろう』

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2014年6月7日、人形作家 井桁裕子先生をお招きし、当教室のあるプティボワ―ビル一階の「Cafe kova Garden」にて、第十回千住アートメチエ文化教養講座『わたしの知らないわたしに出会う ~自分の顔の指人形をつくろう~』を開講しました。

講座内容の抜粋

今回のアートメチエは、実際に手を動かし、粘土で自分の顔の指人形をつくるワークショップ形式でした。

井桁先生は、休む間もなくテーブルを行き来して、制作のアドバイスをしてくださいました。「自分の顔をつくる」という、ほとんどの方にとって初めての試みでしたが、参加者の皆さんは夢中で取り組んでいらっしゃいました。

自分の知らない自分の顔をつくる

sIMG_1135まず、スタイロフォームという素材をカッターで削り、人形の芯を作っていきます。人で言えば骨にあたりますが、細かな造形は粘土で行うため、指が入る程度の大きさにおおざっぱに切り出していきます。

sIMG_1167次に、削ったスタイロフォームの周りに、紙粘土で肉付けしていきます。

井桁先生によると、横顔から作るとうまくいくとのこと。普段あまり目にしない、写真に写った自分の横顔を観察して、少しずつ形を作っていきます。

sIMG_1197観察のポイントは、皮膚の奥にある骨格や筋肉の形を捉えること。実際に触ることも大切です。頬骨の形、顎の角度など、これまで知らなかった「わたし」の顔が出来上がってきます。

sIMG_1228目や鼻、しわをつくっていきます。線で書き込むのではなく、へこみや出っ張りをよく観察します。

少しずつ、人形の存在感が増していきます。

sIMG_1190乾燥させて、出来上がりです。本来はさらに時間と手間をかけて丁寧に作り込んでいくのですが、今回は、ここまで。

参加者の多くの方は、粘土を触るのは本当に久しぶりだったそうです。まさに「手探り」で、わたしが知らない「わたし」の姿に出会う、貴重な時間となりました。

ある参加者が今回作成した人形

ある参加者が今回作成した人形

人形をつくるということ

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作業の合間、井桁先生のこれまでの作品や、制作についても、お話しいただきました。

見る人の心を打つ数々の人形を制作してきた井桁先生。その制作は、決して楽なものではなく、むしろ「かつお節のように」精神を削る行程だそうです。

一つの人形をつくるために、長い期間をかけて、モデルと会い、その人柄・人生と寄り添う。皮膚の形、肉の形、骨の形、そしてその奥にある心の形までも映し出そうとする製作過程の重さに、圧倒される思いでした。

しかし、井桁先生は「モデルとなる方の人生に感動しているからこそ、苦労して作る甲斐がある」とおっしゃいます。作ることで見えてくるモデルの方の魅力が制作の原動力であり、そこには、「人の個性」への礼賛があります。

自分の顔に向かうことに最初は気恥ずかしさを覚えていた参加者のみなさんも、次第に、無心になって制作に打ち込んでおられました。「自分の顔の指人形をつくる」という今回のテーマが、自分の知らない自分の個性、自分の魅力に気づくきっかけとなってくれたらと、願ってやみません。

井桁先生の公式サイト 『面影』(http://igeta-hiroko.com/

参加していただいたみなさんの声

アンケートからの抜粋

  • 自分の顔をいろんな角度から見たり、顔の骨や肉の部分まで考えたのは初めてで、とても楽しかったです。時間があれば、一晩中やりたいくらい夢中になりました。作っている時、無心になれて、気持よかったです。
  • 制作秘話や作家としての想いを井桁先生御自身のお口から聞かせて頂いて、創作というものは、何て尊く、でも厳しいのだろうと身が引きしまる思いでした。頭がい骨の模型をまじまじと見せてもらって、首の上にこれがのっかってるんだなあ、と妙に感心しました。
  • 毎日鏡にうつった自分を見ているような気になっていましたが、本当は観ていなかったことに、自分の顔を作り、先生のアドバイスを頂いたことで気づくことができました。
  • 粘土を触ること自体20年ぶりくらいで、無我夢中で作成に没頭してしまった。非常に楽しかった。自分の顔をまじまじと見ることがめったにないので、おもしろい経験だった。

この他にも、たくさんの声をいただきました。参加していただいた皆様、どうもありがとうございました。

次回は、9月頃、民俗学研究者 佐々木美智子先生の講演を予定しております。詳細は追ってご案内いたします。お楽しみに。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 文化教養講座

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