新しいセンター試験と言語技術教育【読み書きラボ】

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新しいセンター試験

文部科学省は、人口減少とグローバル化、また、職業の多様化など、新しい時代に通用する評価基準として、2020年度よりこれまでのセンター試験に変わる新テストを実施するよう、文部科学大臣に答申しました。また、大学ごとの2次試験などの選抜では、新テストの成績に加え、小論文・面接・プレゼンテーション・資格や検定の成績・各種大会における活動など様々な角度から人物を評価することになります。

新しい制度では、記憶中心型の従来の力だけではなく、教科を横断し知識を活用する力が求められます。論理力・発想力・問題解決能力などの思考力だけではなく、それらをまとめ表現するための構成力・文章力・プレゼンテーション能力や議論の力が試されるのです。

こうした流れは、2020年度の制度の改革に先立って各大学ですでに始まっており、現在の中高生にとっても決して他人事ではありません。

文部科学省が目指す「生きる力」とは

文部科学省は、平成21年より、「生きる力をはぐくむ」ことを理念に、新しい学習指導要領を発表しました。
文部科学省が目指す「生きる力」とは、「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」を総合した力とされています。

1.豊かな人間性
自らを律しつつ、他人とともに強調し、他人を思いやる心や感動する心など
2.健康・体力
たくましく生きるための健康や体力
3.確かな学力
知識・技能に加え、学ぶ意欲や、自分で課題を見つけ、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力など(学力の三要素「学習意欲」「思考力・判断力・表現力等」「知識・技能」からなる)

新しいセンター試験でも、こうした「生きる力」が評価基準となります。

—–引用—–

高等学校、大学それぞれの段階において、これらの力が確実に育成されるようにするとともに、両者をつなぐものとして双方に極めて大きな影響を与える大学入学者選抜の段階において、これらの力を念頭に置いた評価が行われることが必要である。(中央教育審議会答申『新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(案)』)

学力評価のための新たなテスト(仮称)

それでは、文部科学省が考える「学力評価のための新たなテスト(仮称)」とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
「学力評価のための新たなテスト(仮称)」は、次の二つに分かれます。

1.高等学校基礎学力テスト(仮称)
高等学校において身に付けた基礎学力を評価するテスト。高校在学中に複数回受験することができます。
2.大学入学希望者学力評価テスト(仮称)
「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する、各大学個別のテスト。年複数回実施されます。

これら二つのテストが、センター試験に代わるものとなります。
それぞれのテストの内容は、次のとおりです。

高等学校基礎学力テスト(仮称)

  • 高等学校で育成すべき「確かな学力」を踏まえ、「思考力・判断力・表現力」を評価する問題を含めるが、学力の基礎となる知識・技能の質と量を確保する観点から、特に「知識・技能」の確実な習得を重視。
  • 多肢選択方式が原則、記述式導入を目指す。

大学入学希望者学力評価テスト(仮称)

  • 「教科型」に加えて、教科・科目の枠を超えた思考力・判断力・表現力を評価するため、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題。
  • ※ 将来は「合教科・科目型」「総合型」のみによる「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」の総合的な評価を目指す。
  • 多肢選択方式だけでなく、記述式を導入。

「合教科・科目型」「総合型」の問題とは

「合教科・科目型」「総合型」の問題は、思考力・判断力・表現力を評価するものとして位置づけられています。

そして、「教科・科目の枠を越えた「思考力・判断力・表現力」を評価するためには、個々の教科・科目の範囲にとどまらず、複数の教科・科目を教科横断的・総合的に組み合わせて出題することが必要」とされています。

重視される「ことば」の力

こうした新しい教育の流れにおいて、言語活動は大きな意味を担います。

新しい学習指導要領についての中央教育審議会の答申では、次のように述べられています。

—–引用—–

言語は知的活動(論理や思考)の基盤であるとともに,コミュニケーションや感性・情緒の基盤でもあり,豊かな心を育む上でも,言語に関する能力を高めていくことが重要であるとしている。このような観点から,新しい学習指導要領においては,言語に関する能力の育成を重視し,各教科等において言語活動を充実することとしている。(文部科学省 中央教育審議会「言語活動の充実に関する基本的な考え方」)

また、センター試験に代わる新テストの「合教科・科目型」「総合型」の問題で評価する「思考力・判断力・表現力」については、次のように述べられています。

—–引用—–

学校教育法第30条第2項においても、いわゆる学力の三要素の一つとして「知識・技能を活用して課題を解決にするための必要な思考力、判断力、表現力その他の能力」を示しているところである。 こうした力は、例えば、1.概念・法則・意図などを解釈し、説明したり活用したりする活動、2.情報を分析・評価し、論述する活動、3.課題について構想を立て実践し、評価・改善する活動等を通じて育成されるものとされ、小中高等学校等における言語活動等の学習活動において重視されている。(文部科学省 中央教育審議会「高大接続特別部会における答申案取りまとめに向けた要点の整理(案)」

これからの子どもたちは、「知識」だけでなく、自らのことばによる「思考力・判断力・表現力」を試されることになります。

ことばを、生きる力に ~言語技術教育が果たす役割~

すべての「思考」の基礎であり、また、人間性を育てるためにも必要不可欠な「ことば」の力。それを育てる教育が、言語技術教育です。

私たちは、言語技術教育を、「言語活動の諸領域についての技術を高め、各人の社会生活における自己探求と自己実現、それに伴う現実的な問題の解決を十全に行えるようにするための教育」と定義し、実践してまいりました。それはまさに、これからの日本の教育方針と合致します。

一人ひとりの段階と個性、そして状況によって様々な色を持つ「ことば」の力をどのように伸ばし、「生きる力」につなげていくか。「ことばを、生きる力に」という理念の元、私たちは、動き始めた新しい時代に通用する力を、これからも大切に育ててまいります。今後とも、リテラを、どうぞよろしくお願いいたします。

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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