前回の記事では、小2後半~小3後半の読書についてお伝えしました。
今回は、小4~小5前半と、小5後半~小6にかけての読書についてです。
この時期の読書の理想は、「手当たり次第に読む」濫読です。
登場人物と同化してさまざまな時代・世界に入り込む読書体験は、幸せなものです。
また、そうした深い読書体験は、翻って、自分自身や社会を見直すことにつながっていきます。
目次
小4~小5前半
物語と現実を行き来する
作品の世界に没頭できることが大切です。
特に、ファンタジーがおすすめです。異なる国・社会を思い描き、主人公に同化して様々な感情を追体験し、そうして本を閉じ、自分に戻ってきます。そうした体験を積むうちに、少しずつ、自分の生きる社会や自分自身を、より客観的に意識するようになってきます。
計画的な読書と生活を
この時期には、時間を決めた計画的な読書をおすすめします。
高学年になると、塾や習い事が増え、読書時間の確保が難しくなります。読書習慣を途切れさせないようにしましょう。
また、逆に、本に夢中になりすぎるのも考えものです。読書に夢中になるのはよいことですが、先を急ぐあまり早読みになってしまったり、寝不足になってしまったりするようでは、かえって読書から得られる体験を薄めてしまいます。
時間を決めて行動することは、学習をふくめ生活全体に良い影響があります。
毎日コンスタントに読み進めていくことで、過度な熱中や読書の空白を避けましょう。
この時期におすすめの本

体育館を抜け出した悟は、不思議な黒猫と出会い、竜の支配する世界に入り込みます。元の世界に戻るには、「一番確かなもの」を見つけ出さなければなりません。いつまでも色褪せない名作です。
小5後半~小6
テーマを読み取ること
ただ展開を楽しむだけではなく、物語に織り込まれた想い、すなわち「テーマ」を読み取ることが大切になってきます。
この時期は、登場人物が、周囲の環境や社会と対峙しながら、変化・成長する内容の物語が適しています。
すべての本に深いテーマがあるわけではありませんが、名作と呼ばれる作品には、批評にたえうるテーマが含まれています。
物語世界を楽しみながらも、より広い視野で人物の変化をとらえ、物語の本当の意味・深さを汲み取っていけるようになることが、この時期の目標です。
本は好きだけれど、読解問題の点が安定しない子は、この段階まで読書レベルが達していないことがほとんどです。物語世界の入り込みすぎて、ひとりよがりな解釈にならないよう、より広く客観的に文脈をとらえる読書力をつけましょう。
つながりのある読書
なお、こうした読みの質を高めるためには、物語のテーマに意図的に導く・気づかせることが大切になります。
ぜひ、複数人で感想を話し合い、自分とは違う解釈や感じ方を知りましょう。お父様・お母様が子供の頃に読み、心に残っている本を紹介してあげるのもよいでしょう。また、「後書き」を読むよう促しましょう。後書きには、作者・訳者のコメントがあり、物語の解釈のヒントになります。
また、気に入った作家を見つけたら、作品を横断的に読んでみましょう。
この時期におすすめの本

灰色の男たちに時間を奪われ、心を失っていく人々。モモは、みんなの時間を取り戻そうとしますが……。私達が忘れている大切なものに気づかされる一冊です。
未来のための読書習慣を
読書体験は、成長と共に深化していきます。
培われた「読む」力は、本を超え、社会や人を読む力となります。
生活と環境を整え、ゆっくりと、読書習慣をつけていきましょう。
次回は、「順序立てて説明する」ための文章の書き方についてお伝えします。
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