【2015読書感想文特集】『かぐやのかご』(中学年向け課題図書)

かぐやのかご (こころのつばさシリーズ)

それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。

内容の紹介

空想好きな清香は、学校であるできごとのぬれ衣を着せられ、林の中を泣きながら歩いていました。すると、しげみの中から出てきた不思議なおばあさんに、竹のたばを押しつけられます。おばあさんは、竹でザルを作る名人でした。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

Lombroso - 2007

Lombroso – 2007

  • 竹でできた「ザル」を見たことがありますか? それは、いつ、どこで見ましたか? なければ、本やインターネットで調べてみましょう。
  • 学校でぬれ衣(していないのに、したと思われてしまうこと)を着せられたら、あなたはどうしますか?

読んだ後に

読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。

考えるヒント

  • 清香は、男の子からぬれ衣を着せられます。あなたには同じような経験はありますか? あれば、その時の気持ちもふくめて、くわしく書いてみましょう。
  • 清香が「自分ではない」と言わなかったことについて、あなたはどう思いますか? また、自分がやったと言わなかった春奈ちゃんを、あなたはどう思いますか?
  • 悲しいことがあった時や、自信がなくなった時、あなたは誰に相談しますか? また、どのようなことを実際に相談しましたか? その時の気持ちもふくめて、くわしく書いてみましょう。
  • 美しい人とは、どんな人だと思いますか? 清香がおばあさんに教えてもらったことと一緒に考えてみましょう。

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

主人公の清香は、転校してきたばかりの女の子です。自分に自信がなく、さびしさを抱えています。学校であった出来事は、子どもにとっては、なかなかの重大事でしょう。清香が「自分ではない」と言い出せなかったのは、クラスメイトをかばうというよりも、自信のなさによるものだと考えられます。おばあさんは、そんな清香の話を聞きながらも、ザルを作る手を休めません。七十年間もザルを作り続けた手は、正確に、着実にザルを編んでいきます。ザルを編むことは、おばあさんの生きてきた人生そのものであり、その確かさは、ことば以上の説得力を生み出しています。自信がなく、くよくよと考えがちな清香の目に、おばあさんの手は、頼もしく、また、温かく映ったことでしょう。

おばあさんが一度だけ見たという、光る竹から出てきたという金色の「さなぎ」がどこへ行ってしまったのか、結局わかりません。清香は「自分のいるべき場所へ」帰ったのではないかと考えます。おばあさんと話すことで自信を取り戻した清香と、まだ形になってはいないけれど、きれいな「さなぎ」は、どこか重なっているような気がしてなりません。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 美しさ

声がけのヒント

清香は、立派な心がけで友人をかばったのではありません。清香の迷いや悔しさをしっかりと読み取れているか注意しましょう。誰かの罪を代わりに引き受けるというのは、子どもたちにとっては納得しにくいことだと思います(作中の出来事のような恥ずかしいものであればなおさらです)。納得した風を装って書くよりも、率直な感情を綴ったほうがよいでしょう。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

タグ:
カテゴリー: ブックレビュー

リテラ言語技術教室について

menu_litera