それぞれの課題図書の紹介と考えるポイント、声がけのヒントなど、読書感想文に役立つ情報を、順次公開しています。
内容の紹介
和菓子屋「はごろも堂」を切り盛りする結衣のかあさんは、朝から晩まで大忙し。かあさんにかまってもらえず、一人寂しく過ごす結衣。寝る前に、学校の発表会で演じることになった「しろぎつねのおんがえし」の民話を読んでいると、キツネに飲みこまれて体をのっとられてしまったおかみさんが出てきました。そのお話を読んだ後、お風呂そうじのことでかあさんにこわい顔でおこられた結衣は、本物のかあさんはきっとキツネに食べられてしまい、目の前のかあさんはキツネが化けているに違いないと思い込んでしまいます。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- あなたのお母さんはどんな人ですか? お母さんのやさしいところ、怖いところ、両方を思い出してみましょう。
読んだ後に
読み終わったら、次のことを考え、書いてみましょう。
考えるヒント
- 家族が本当の家族ではないかもしれない。そう思い込んでしまった結衣のことを、あなたはどう思いますか? 同じような経験はありますか?
- 結衣のお母さんは、働いていて、とても忙しい人です。結衣はひとりで家のお手伝いをしたり、ご飯を食べたりしなくてはなりません。あなたは、結衣と、お母さんについて、それぞれどうおもいますか?
- 家族とけんかをしたり、はなれたりして、自分を一人ぼっちだと感じたことはありますか? その後、あなたはどうしましたか?
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
忙しい両親の元、家事のお手伝いをしたり、時にはひとりで食事をとったりする主人公の結衣は、寂しさや疎外感から、目の前にいるお母さんは実はキツネではないかと疑うようになり、かあさんの「しっぽ」を探します。結衣の心の痛みは、子ども達にも、大人にも伝わってくるものです。一方、多忙なお母さんは、結衣の心を察し、結衣の傷ついた心を優しく包み込み、親子の絆を深めていきます。お母さんの持つ、深く温かい気持ちを親子で味わってもらいたい一冊です。
関連する本として、「かあちゃん取扱説明書 (単行本図書)」があります。いつもかあちゃんに怒られてばかりの小学生の男の子が、かあちゃんを上手く操ろうと、取扱説明書を作り始めます。最後は、もっとかあちゃんのことや家族のことを、理解したい・知りたいという、心の成長が描かれていきます。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 家族の絆
声がけのヒント
「もしかして、お母さんはきつねかもしれない」。些細な事から不安になり、このような想像をしてしまうのは主人公の結衣だけでなく、子どもの誰もが経験することです。迷子になって家族に会えた時のこと。ひとりで留守番をした時のこと。家族と心が離れてしまったと感じた経験について、良い思い出の一つとして語り合ってみてください。そして、家族、特にお母さんと一緒にいて得られる安心感を、子ども達自身の物語として、素直な言葉で感想文に織り込めるとよいでしょう。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。