文科省のまとめた平成23年度の「国語に関する世論調査」によると、携帯電話や電子メールの普及で漢字を書く力が衰えたと感じている人が増えているそうです。(2012年9月20日のMSN産経ニュースより)
漢字だけでなく様々な日本語の表現が失われることは、私たちが複雑な現実の事柄を言い表し、それらと向き合う方法を失うことにつながります。
日本では虹は七色で表されますが、国や地域によっては、五色だったり三色だったりします。 では、人の感情はいくつに分けられるでしょうか? 答えはありませんが、感情を表すことばをより多く持っている人の方が、きめ細やかにその色(=感情)を理解することができるでしょう。
若い方の多くが使うことばに「うざったい」というものがあり、不快な感情はすべてその一色に入れられてしまう傾向があるようですが、実はその感情の中にある多種多様な彩りに、解決のいとぐちや成長のヒントがあることが多いのです。 これはもちろん、国語の心情読解問題でも同様です。
このような言葉の世界を豊かなものにするためには、「読む・書く・考える・対話する」という取り組みを低学年の段階から丁寧に取り組むことが大切です。
特に重要なのが「よく読み、読み慣れること」です。 「読むこと」は、「理解すること」と言い換えることができます。 本の内容だけではなく、人の感情、起こっていることの本質、目の前の物、それらを把握して理解する力です。
たくさんの絵本や物語を楽しみ、登場人物と同化しながら、次々と起こる出来事を体験することで、子どもたちはそれらの出来事と結びついた多様な感情を知ります。そして、そうした読書体験を家族や友人と話し、言葉にすることは、より実感の伴った言葉の成長につながります。それは、自らの心の地図を広げるようなものです。
インターネットやEメールでのコミュニケーションが増えてきていることは、コミュニケーションという視点から見れば、もちろん便利な点もたくさんあります。
しかし、ことばの役割は、コミュニケーションだけではありません。 ことばは、私たちの思考の道具でもあります。
特に子どもたちにとっては、ことばの成長と認知の発達とが密接に関わりあっています。 そうした側面の重要性を忘れることなく、ことばの学習環境を整えていきたいものです。