【中学生の教育課題】論理的・形式的思考を本格的に学ぶ

今回は、中学生段階の教育課題について紹介します。中学生になると子どもたちは、論理的・形式的思考を本格的に学ぶ準備が整い、他者と意見を交わす術を学んでいきます。また興味・関心が高まり、さまざまな知識に触れ、教養を蓄えていく時期でもあります。

この時期の発達段階と課題—-論理的・形式的思考を本格的に学ぶ

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この時期は、理解できることや思考の幅が広がる一方、それに起因する困難を感じる時期でもあります。

論理的・抽象的な思考が可能になり、本格的に論理や形式を学ぶ準備が整います。一方、論理の飛躍や現実と乖離が起こりやすく、論理を現実に力あるものとするために適切なトレーニングが必要になります。思考や他者とのコミュニケーションを支える土台となることばの「概念」をより正確で豊かにするための練習を積むことも重要です。

中学校では、国語の授業で評論文を扱うようになります。他者の主張が書かれた文章の読解が求められるようになり、論理構造の理解が重要になります。高校受験でも評論文とそれに付随する意見文は大きな比重を占めます。 英語では、文法の学習が本格的に始まります。第二言語を学ぶことは、それまで自然に身に付けてきた母語を相対的な視点で見直すことにもつながります。 数学では、自然数だけでなく負の数を扱うようになり、比例・反比例といった関数関係を学ぶようになります。より抽象的な思考の段階へと移行するのです。

また友人や身近な大人たちなど他者への意識や社会への関心が高まります。その分、自分を取り巻く環境との間の複雑な関係性や様々な問題についてのジレンマをかかえる時期でもあります。

こうした時期には、自分の意見を持ったり、明確な意見とはいわないまでも教師や親の考えを相対的なものとしてとらえるようになり、その言葉にただ従うことに対して抵抗を覚えるようになったりする子もいるでしょう。

そうしたとき、自分の思いを言葉にし、相手に伝えるための方法がわからなければ、またはそのための手順を踏まなければ、それは単なる思い込みの押し付けや、わがままになってしまいます。あるいは逆に、人と違う意見を持つことに生ずるさまざまな問題を避け、あえて違和感を心に抱えたまま口をつぐんだり、必要以上に他人に同調してしまうこともあるかもしれません。

そのため、状況を分析し、様々な問題の構造や因果関係を把握したり、他者に自分の考えを説得的に伝えたりするための技術を身に付けることは、中学生以降の学習のみならず、実生活全般に渡って子どもを支える重要な力になります。

知識から教養へ

またこの頃、子どもによっては好きなことに関しては、大人顔負けの専門的な知識を持つようにもなります。しかし、それを単なる「知識」に終わらせることなく、さまざまな関わり合いの中で価値を持ち、通用する「教養」とすることが大切です。そのためには、そうした興味のあることについて、より豊かに、深く話し合うことのできる友人や先達(メンター)の存在が重要です。

学校の授業でも社会では、地理・歴史・公民それぞれにおいて、時間的・空間的な広がりの中で日本や世界の諸地域の様々な関わり合いやシステムについて考察し、理科においては、化学変化や運動とエネルギー、自然環境の成り立ちや生物の体のつくり、気象や宇宙といった科学的な知見を広げていきます。

本当は、どのような趣味であれ、突き詰めればそうした社会的・科学的・哲学的な視点が生まれてくるでしょう。自分の興味・関心を敷衍してそうしたより大きな教養の中に位置づけられたとき、個人的な趣味にとどまらない価値が生まれます。

ディスカッションを通して好きなことを深く・論理的に

まずは、好きなことや身近なテーマについて、友人や大人と意見を述べ合うこと、ディスカッションすることが効果的です。

こうした話し合いの中で、発言のルールや、異なる立場を尊重する態度、議論の前提となる言葉の定義といった概念を正確に把握すること、そして意見には論証責任が発生すること=根拠を求める態度や、その根拠の整合性を検証する態度を養います。初めのうちは、こうした議論のルールの手本を示したり、話し合いが円滑に進むよう、大人が進行役として参加すると有効です。

そのための具体的な技術として、論理の基本構造を学びます。教室では、論理の構成要素として、「クレーム(主張)-ワラント(理由づけ・解釈)-データ(客観的事実)」という「トゥールミン・モデル」の簡略化されたものを学び、一段落の意見文を書く練習をします。

さらに、論理をより確かなものにするための「反論」や「裏づけ」の視点を学び、それらを、英文エッセイの段落構成に従って1000字程度の文章にするのです(パラグラフ・ライティング)。

こうしたレポート・意見文を書く過程で、文献による問題点の把握や、因果関係の分析、理解を深めるためのディスカッション、また、様々な発想法を知ることになります。

そしてこのような取り組みを経ることによって、初めは単なる好き/嫌いという個人的趣向から出発したテーマであっても、他人との関わりの中で共有される価値の創出へとつながるのです。

それはやがて、現実を対象としたさまざまな問題について考え、自分なりの判断をすることや、他者と合理的な意思決定をし、協調していくための力になります。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 教育コラム

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