【講師コラム】大人も書いてみよう、読書感想文
こんにちは、リテラ「考える」国語の教室の長谷川尚哉です。
2025年青少年読書感想文コンクールの課題図書『森に帰らなかったカラス』(ジーン・ウィリス作)を読んで、わたし自身が感想文を書いてみました。

本を読んだときに湧き上がってきた思いを形にしたくて書いたものです。 これは決して子どもたちの「見本」になるようなものではありません。
むしろ、一人の大人として本と向き合い、自分自身の経験と重ね合わせて書いた素直な感想です。 でも、この感想文を読んでくださった方々が、「読書感想文ってこんな風に書いてもいいんだ」と感じていただけたら嬉しいです。大人の本音の感想が、子どもたちが自分の言葉で書くためのヒントになれば、という願いを込めています。
ぜひ、保護者の皆さん、読書感想文を指導される先生方も、一度子どもたちと同じ本を読んで感想文を書いてみませんか? 子どもたちと一緒に「書く」体験をすることで、新たな発見があるかもしれません。 それでは、わたしの読書感想文をご覧ください。
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「成長のなかの別れ ― 『森に帰らなかったカラス』を読んで」
ニシコクマルガラスは物語の舞台イギリスにおいては本来野鳥であり、同種の鳥たちと群れを形成して暮らします。ジャックはあけ放たれた巣箱からいつでもブッシー公園の森に帰っていくことができましたが、ミックの家であるパブやテディントン駅などで、人間と共に暮らしていくことを選びました。そして、物語を通して少年たちが成長し、つるむ友達もかわっていくなか、ジャックはかわらずミックの相棒であり続けました。
家族や友人との関係が変わっていっても、ペットとの関係は変わらないというのは、現実によくある話です。人間と深く関わりながらも、人間社会からは隔絶されているため、ライフステージや人間関係がどれだけ変化しても、ペットはかわらずに接してくれるのです。しかし、この物語ではジャックはいつでもミックのもとを去る選択肢を持っており、実際に家の外にも居場所を持っています。にもかかわらず、ジャックは必ずミックのもとに、自分の意志で帰ってくるのです。
ジャックを安全に保ちたい気持ちと自由にしておくべきだという考えの中で揺れるミックの葛藤や、自由であったがゆえにあまりに早く迎えることになったジャックの最期は、自由であることの価値と厳しさを表現しています。
また、戦争もこの物語の大きなテーマになっています。戦争末期から戦後に生まれ、戦争の記憶を持たない少年たちは、大人たちの心の傷に触れるような発言を控えるように教えられ、また、幼さゆえに実際の戦争の記憶からは遠ざけられていました。しかし彼らはジャックとの日々の中で成長し、独身のテディントン駅長がロンドン大空襲で妻を失っていたことや、パブの常連の奇行が塹壕での体験から発症したストレス障害のためだったことなど、皆が心に抱えながらもあえて話さずにいた戦争の傷跡に、少しずつ触れていきます。そしてついにミックの父は、ジャックの死を経験したミックに、自らの戦争経験について語りました。父の過去を受け入れることは、聞き手のミックにとって必要不可欠な成長の過程でしたが、それはまた語り手である父にとっても、悲しみを乗り越えるために必要な過程だったのです。
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