【2025年読書感想文特集】『鳥居きみ子 家族とフィールドワークを進めた人類学者』(小学校高学年向け課題図書)

こんな子におすすめ!

  • 歴史や人類学に興味のある子
  • 未知の文化や風習について知りたい子
  • 困難を乗り越えて夢を追いかける人の話が好きな子
  • 女性の先駆者の生き方に触れたい子
  • 冒険や調査旅行の話に興味がある子
  • チームワークの大切さを学びたい子

本の紹介

明治から昭和にかけての日本。女性の社会進出が難しかった時代に、夫である鳥居龍蔵とともに世界各地を旅し、人類学研究に貢献した鳥居きみ子の生涯を描いた一冊です。きみ子は、単なる「偉人の妻」ではなく、フィールドワークの最前線で活躍し、特に民族学の発展に大きく貢献しました。モンゴルや中国など、当時の日本人女性にとって未知の土地で調査を行い、現地の女性たちからしか得られない貴重な情報を集めることに成功しました。時代の制約の中で、自分の可能性を追求し続けた先駆者の物語です。

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本の解説

鳥居きみ子とは

鳥居きみ子(1873-1946)は、著名な人類学者・考古学者である鳥居龍蔵の妻であり、同時に優れた研究協力者でした。明治6年に徳島で生まれ、知人の紹介により東京で出会った龍蔵と結婚。夫や子供達と共に、モンゴルを中心に数々の調査を行いました。

時代背景

きみ子が活躍した明治から昭和初期にかけての日本は、女性の社会進出が極めて限られていた時代でした。女性参政権もなく、高等教育も男性中心で、女性の学問追求は一般的ではありませんでした。

そんな時代制約の中で、きみ子は「家族とともに調査・研究する」という独自の形で研究活動に参加していきます。

きみ子の研究貢献

本書では、きみ子が特に民族学分野で果たした役割に光を当てています。彼女は現地の女性たちとの交流を通じて、男性研究者だけでは知ることができなかった伝統的な生活習慣、儀式、歌、織物などの情報を収集しました。

調査旅行の足跡

きみ子は夫とともに、中国やモンゴルなどを訪れました。当時の交通手段や宿泊施設、食事事情を考えると、これらの旅は現代の私たちが想像する以上に過酷なものだったでしょう。それでも彼女は持ち前の強さと適応力で、どんな環境でも研究活動を続けました。

鳥居龍蔵が撮影した1906年頃のモンゴルの写真
鳥居龍蔵(1870-1953), Public domain, via Wikimedia Commons

読書感想文のヒント

読む前に考えてみよう

  • 100年前の女性の生活は、今とどのように違ったと思いますか?
  • あなたが興味を持って調べてみたい文化や風習はありますか?
  • チームで何かを成し遂げるために大切なことは何だと思いますか?
  • 自分の夢を追いかけるために、どんな困難があっても乗り越えたいと思ったことはありますか?

考えを深めるための質問

  1. 「見えない貢献」について
    • きみ子の貢献は、長い間「見えない」ものでした。なぜ女性の業績は歴史の中で見えにくくなってしまうのでしょうか?
    • 身近な場所で「見えない貢献」をしている人はいませんか?
  2. 「チームワーク」と「個人の才能」について
    • 鳥居夫妻は「チーム」として研究を進めました。しかし、世に名を残したのは主に龍蔵でした。チームでの成果と個人の評価について、あなたはどう思いますか?
    • あなたの経験したチームワークの中で、一人ではできなかったことができた例はありますか?
  3. 「制約の中での創造性」について
    • きみ子は「女性だから」という制約の中で、自分にできる形で研究に貢献しました。制約があることで生まれる創意工夫や視点があると思いますか?
    • あなたが何か制約を感じる場面で、その中でも工夫して成し遂げたことはありますか?
  4. 「記録することの価値」について
    • きみ子たちの研究は、消えゆく文化や風習を記録することでした。記録を残すことには、どのような価値があると思いますか?
    • あなたが「これは記録しておきたい」と思うものは何ですか?

考えてほしいテーマ

  • 時代や環境の制約の中での可能性
  • 異文化理解と多様性の尊重
  • 歴史の中の女性のロール
  • 記録することの大切さ

理解を深めるために

人類学と民族学について

人類学は人間についての総合的な学問で、その中の一分野である民族学(民族誌学)は、様々な民族の生活様式や文化、習慣などを研究します。鳥居きみ子と龍蔵が活躍した時代は、世界各地の伝統文化が急速に変化していく時期でした。彼らの記録は、今では失われてしまった文化や風習の貴重な証言となっています。

明治から昭和初期の女性の地位

当時の社会では、女性の教育機会は限られており、「良妻賢母」が理想とされていました。職業選択の自由も少なく、研究者として認められることは非常に稀でした。そんな中でのきみ子の活動は、非常に先進的なものだったのです。

合わせて知りたい

  • 鳥居龍蔵の人類学研究
  • 明治・大正・昭和初期の女性の社会的地位
  • 日本の人類学・民族学の歴史
  • フィールドワークの方法と意義

合わせて読みたい

『鳥居龍蔵 アジアを走破した人類学者』中薗英助

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鳥居龍蔵の生涯と研究業績を紹介した一冊。きみ子の夫の視点から当時の調査活動を知ることができます。

『世界を変えた100人の女の子の物語 』エレナ・ファヴィッリ/著、フランチェスカ・カヴァッロ/著、芹澤恵/翻訳、高里ひろ/翻訳

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スーパーモデル、活動家、バレリーナ、数学者、大統領……。Rebel Girls〈反骨心をもった、勇敢な女の子たち〉の実話です。世界中の様々な分野で活躍をした女性について知ることができます。

合わせて観たい

映画『風の谷のナウシカ』(宮崎駿)

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異文化や失われた文明を探求するテーマが、物語の根底にあります。人類学的想像力を豊かにする作品です。

読書感想文を書くにあたって

この本を読んで考えたことを整理するために、以下のポイントを参考にしてみましょう。

  1. 本を読む前と読んだ後で、「女性研究者」や「チームワーク」についての考えがどう変わったか
  2. きみ子の生き方の中で、特に印象に残ったエピソードとその理由
  3. もしあなたが今、きみ子のように未知の文化を研究するとしたら、何を調べてみたいか
  4. 「見えない貢献」を「見える」ようにするために、私たちにできることは何か

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。

2025年 読書感想文課題図書のページ

随時更新していきます。

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読書感想文を書こう!

対話をベースに、世界で一つの読書感想文を書き上げましょう!

書き上げるのが大変な読書感想文。でも、読書とは本来、楽しいもの。読書感想文を素敵な学びの機会に変えてみませんか?

対象学年:小学生・中学生・高校生

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 読書感想文, ブックレビュー

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