クモ男は、空の王者ニヤメがひとり占めしているお話を買い取り、人々のもとへ持ち帰ろうとクモの糸のはしごを編んで空にのぼり、空の王と交渉します。
ところが、ニヤメは<ガッブリかみま>のオボセ・ヒョウ、<チックリさしま>のムンボロ・クマンバチ、<コッソリいたずらま>のモアチア妖精を持ってくるようにと命じます。
どれも手ごわいものばかりですが、クモ男は知恵を使いユーモアあふれる作戦でこの難題を解決していきます。
アフリカの人たちは、子どもたちにお話をはじめる前、決まった語りかけをするそうです。
「いいかい?これからはなすことが、ぜったいにほんとのことかどうか、なんとも、なんともいえないのだがね、まぁ、きいてくれ。きょうはどんなおはなしになるかな。さぁ、おはなし、おはなし・・・・」
こどもたちの気持ちを物語へぐっと引き込む、魅力的な語りからから始まるアフリカの民話には、「クモ男」といわれているものがたくさんあります。
クモの話は、ちっぽけで身を守るすべのない人間や動物たちが、自分たちよりも強いものに知恵で立ち向かって打ち負かしてしまうという話です。今回ご紹介する「おはなし おはなし」も、雲の王者がお話を箱に閉じ込め世界にひとつもお話がなかったころ、知恵者クモ男の活躍によって世界中人々にお話がもたらされるというものです。
この本の魅力は、「お話がひとつもなかった世界」が舞台というところにあります。
そのことをまず、こどもたちにつたえると、「お話がないってどうして?」「本もないの?そんなのつまんないよ。」と、お話のない世界がどんなに退屈で恐ろしいかとおもわず想像し、声をあげてしまいます。お話を心から楽しみにしている子どもたちにとっては大きな衝撃でしょう。
さらに、「でも、この絵本は、世界ではじめておはなしがうまれた時の物語なんだよ」と、伝えると、子どもたちの驚いた視線はしっかりと本の表紙絵と注がれています。
「なぜ、火ができたのか?」というテーマを語る北米インデアンの『天を火をぬすんだウサギ』やルーマニアの民話の『ウグイスはなぜ声がいいの』など、物事の「はじまりの物語」は多くの子どもたちの好奇心をくすぐるとても魅力的なものです。日々、何気なく接していた世界に、実はたくさんの謎や秘密が隠されているのだと教えてくれます。加えて、日本の昔話や西洋のおとぎ話に慣れ親しんできた子たちにとって、アフリカの民話は新しい文化にふれるチャンスです。
こどもたちが読書の醍醐味を存分に味わえるように、一つ一つの本の読み方、見せ方を工夫するのも、また読み聞かせの楽しみです。今回ご紹介した、アフリカの人々の読み聞かせ前の「語りきかせ」も楽しい工夫となります。ぜひ、ご家庭でも行ってみてください。
子どもたちに本を好きになってほしい。
本を通して豊かな関係を築いてほしい。
リテラ言技術教室では、こどもたちがご家族とともに充実した読書時間を過ごせるよう、本のご紹介や読書の進め方など今後も発信してまいります。お楽しみに。