公立中高一貫校適性検査を左右する言語技術

言語技術は、多様な問題について本質的な解決を目指すために必要な思考と表現の技術です。そのため、言語技術を学ぶ場では、国語のみならず、社会や理科、算数といった教科の枠を越えた対象について、考えると同時に解決のための道具としていきます。

このページでは、公立中高一貫適性検査で求められる具体的な力と、言語技術の関係についてご説明します。

※言語技術とは

言語技術とは、言語(ことば)が関わる領域についての技術を高め、社会生活における自己探求と自己実現、それに伴う現実的な問題の解決を十全に行うための技術です。

教科としての国語では、「読解」に大きな比重がありました。しかし、ことばは、人が物事を考える際に必要不可欠のものです。したがって、言語技術教育では、論理力、記述力、表現力、抽象的思考力など、より広い「考え表現する力」・「生きる力」を育てていくことになります。

適性検査には、暗記や計算だけでは対応できない

公立中高一貫校では、入学に際して、各学校がその特色に応じた工夫ある適性検査を実施しています。

適性検査は、小学校で習う範囲内の内容を基本的として作成されています。しかし、それは決して易しいものではありません。なぜなら、「小学校で習う範囲をきちんと自分のものにしていることを前提に、そうした力を使って新しい問題を解決していく力」を試されるからです。暗記や計算だけできても、意味がありません。そうした問題の形式に慣れていなければ、大人が挑戦しても時間内に全問解答を目指すのが難しくさえあります。

結果よりも解決の過程が重視される

では、適性検査では具体的にどのような力が求められるのでしょうか。

  • グラフや資料を読み取る力
  • 読み取った内容をもとに考える力
  • 規則性を理解したり、条件を整理して考える力
  • 筋道を立てて考える力
  • 方法や、根拠を述べる力
  • 知識を教科横断的に活用する力
  • 文章読解力や記述力

公立中高一貫コラム用-各教科の関係設問の形式は、◯×をつけたり、選択肢から選んだり、単純な計算や知識を問うものよりも、「どのように考えるのか」「どうやって解決するのか」「なぜ、そのように考えるのか」といったものが主になります。

つまり、「結果」より「過程」に大きな比重が置かれているのがこの試験の特徴です。そのため、解決への「過程を組み立てる力」や「過程を説明する力」が非常に重要になります。

「分析的な読解力」と「論理的な記述力」

公立中高一貫コラム用-必要となる力の関係
これらを言語技術の文脈に当てはめると、「分析的な読解力」と「論理的な記述力」になります。

分析的な読解ができるということは、次のような視点で読めるということです。

  • 変化や差異を読み取る
  • 因果関係を理解する
  • 意味づけをする

論理的な記述力とは、次のような書き方ができるということです。

  • 情報を整理して、筋道立てて考えていく(数式も含む)
  • 説得的な説明の仕方で、正しい書き言葉で記述する

それでは、中高一貫校の適性検査で出される次の四つのタイプの問題から具体的に見てきましょう。

1. グラフ・資料の読み取り

グラフ

この分野は、主に社会をテーマにした内容が題材とされます。問題は会話文によって構成されますので、文章読解の力はもちろんのこと、資料やグラフで示される項目や数値の「特徴」や「変化」を読み取る力が試されます。またここに、小数点や割合の計算を用い、データの価値を正しく読み取ることができることなども含まれます。そして、それにどのような意味があり、あるいは、なぜそのような変化があるのか理由を考えさせたり、受検者にどのような意見を持つかを問います。

ここで求められるのは、「数値を読み解く力」と言ってもよいでしょう。

2. 規則性・条件整理などの数的処理

規則性

この分野は、基本的には算数の問題ですから、解釈の余地がない・答えが決まっているという点で、国語とは思考の質が異なるといえるでしょう。

しかし、計算が得意なだけでは、この分野の問題は解けません。まず、課題文を読んで、問われていることを理解しなければなりません。その上で、解決に至る論理の筋道をイメージし、そこから数式という言語を組み立てていきます。

こうした問題解決のための一連の流れに、言語技術で支えられる読解力と論理力は欠かすことができません。

3. 実験・観察

実験

主に理科の分野における自然観察や統計データ、実験を元にした検査です。グラフ・資料の読み取りと共通する要素が多く見られますが、特に、実験の方法・その理由、実験結果に対する考察などを問う問題が多く出題されます。

そのため、暗記だけができても意味がありません。「因果関係」についての理解と、その記述が必須です。「なぜ」・「どのように」を、正しい書き言葉で述べなければいけません。

4. 文章読解と、テーマ作文

キャプチャ

主に国語の分野になりますが、与えられた文章の内容理解と、テーマと自分の体験を絡めた400~600字程度の意見文の作成が多く出題されます。

出題されている文章や題材からテーマを導き出す力、それに合わせた実体験の要約、実体験がどのように自分の意見を支えているのかを示す論理性といった、総合的な文章技術が求められます。

言語技術=問題解決のための力

以上のように、公立中高一貫校の検査は、暗記や計算だけでは通用しません。与えられた知識や条件をどのように活かし、問題解決を図るのか、そうした考える力そのものが問われています。

そして、読み解く・考える・表現するための「ことばの力」、すなわち言語技術がなければ、とうてい太刀打ちできないのです。

リテラは、読書や作文を含めた、ことばと考える力を育てる新しい学習教室です。詳しくは、次のページをご覧ください。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 教育コラム

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