【受験と向き合う】 現代文 長文読解シリーズ 1

長文読解問題と読書の重要な関係

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中学・高校受験の現代文長文読解では、点数が安定しない、伸びない、といったお悩みをよく伺います。算数・数学のように明確な答えがないため、なぜ自分の回答が間違っているのかわからないまま、国語に対して苦手意識をもってしまう子も多くいます。学習塾で過去問を繰り返すほど苦手になっていく、そうした悪循環に陥ってしまうと、抜け出すのはなかなか大変です。

今回は、長文読解と読書、特に読書レベルとの関係についてご案内します。

読解問題と読書のレベルには密接な関係があります。うまく解けない場合、過去問をひたすらやればいいというものではありません。どこで足踏みしているのかを見極め、「読み」についての本質的な対策をしなければなりません。また、それは国語のみならず、教科全体の学習を見直すことにもなります。なぜなら、読解レベル=読書レベルは、全教科の土台となる言語技術(特に、抽象的な概念を操作する技術)に密接に関わっているからです。

読書のレベル

児童の読書の段階をごく簡単に表すと、次のようになります。

読書レベル
【小1~小3】
楽しみながら、お話の展開を楽しむ時期。読み聞かせを通して本に親しむ中で、内容の物珍しさや新奇性だけでなく、スリリングな展開や因果関係を楽しめるようになることが目標です。
【小3~小6】
物語の世界に没入し、登場人物と同化して様々な感情を追体験する時期。この時期、たくさんの本を浴びるように読む(多読する)ことが、抽象的概念の理解を容易にし、次のレベルの読書を可能にします。
【小6~中学生】
構造やテーマなど、より客観的に物語を考察し、分析ができるようになる時期。没入していた物語世界から現実に戻り、テーマに対するより深い理解と、自分や社会に対する洞察を得ることができるようになります。
【高校生】
目的や問題意識に応じ、多数の文献を多角的・批判的に読み、総合的な見知を得ることができるようになる時期。多数の書物から様々な知識や思想を取り入れ、現実の未来を作っていきます。

読解力=読書レベルは、その子の言語技術のレベルを表します。読解問題を解く上での問題点から、お子様がどの段階にいるのかを知り、成長に繋がる対策を練りましょう。

問題点と長期的な対策

簡単な文章の展開・因果関係が把握できない。そもそも本に馴染みがない。

読書の習慣や環境が整っていなかったお子様によく見られます。学習塾のスケジュールが忙しすぎ、本が読めなかったというお子様もいらっしゃいます。言語能力が未発達であるため、他の教科でも理解に困難が生じているかもしれません(問われている意味がわからない、概念の理解や操作に困難を感じている、など)。言語能力はすべての学力の基礎です。受験のテクニックをいくら覚えても、本質的な学力にはつながりません。読書習慣をつけ、受験よりも優先して、言語に関する能力を向上させるべきです。特に、物語に没入できるように導いていかなければなりません。

小学生の場合、このような状態で中学受験を考えているのであれば、それはかなりの無理を伴います。より長期的な学習計画と、着実な成長のための環境を整えることが先決です。特に読書の習慣づけは重要です。生活環境を見直し、読書のための時間を確保しましょう。

よく読めて内容も理解しているが、点数にばらつきがある

本を楽しく読めているのに、テストになると成績が思わしくない、というのはよく見られる傾向です。このような場合、物語に没入することができていても、人物の心情や解釈がひとりよがりになりがちです。そのため、試験当日の気分や、問題文の内容・舞台設定に対する「好き嫌い」で、点数が大きく変わってきます。物語に没入し、楽しむだけの読書から、より客観的な視点で課題文を読み、そのテーマや構造を把握していく「分析的な読み」の視点を学ばなければなりません。

「分析的な読み」を学ぶ上での問題点

しかし、分析的な読みを学ぶ上で、いくつかの問題点があります。

分析的な読みは、小中学生の一般的な読書レベルよりも高度な読み方である

分析的な読みは、高度な読書レベルです。小中学生でそのような読み方が自然にできるお子様は、ほとんどいないでしょう。分析的な読み方に必要となる思考は、抽象度が高いため、豊富な読書経験と適切な指導が必要となります。受験、特に難関校などで問われるような内容は、小中学生には、本来的に難しいのです。そうしたことを考慮にいれないまま過去問を繰り返したとしても、「なぜ不正解なのかわからない」というフラストレーションが溜まる一方です。各人の成長の段階を考慮に入れた、きめ細やかな読みの指導が求められます。

読むだけでは分析的な読み方は身につきにくい

楽しんで本を読むことはとても幸せなことですが、それだけに、外から物語の世界を眺める必要性を感じないかもしれません。分析的な読み方を学ぶためには、物語の構造について理解したり、ある物語の解釈やテーマについて様々な視点から話しあったりといった、適切な指導と機会が必要になります。現在、学校や学習塾では、その機会はほとんどないと言っていいでしょう。

「国語はセンス」などという曖昧で不正確な結論は、正しい読書指導と抽象的思考の発達が成されていないために、無理に導き出されたものに過ぎません。

「分析的な読み」を学ぶために

リテラでは、ブックトークや要約の訓練を通し、読書習慣がついているお子様について、早いうちから分析的な読み方の下地を作っていきます。受験のための長文読解対策も、受験のためだけではなく、よりよく文章を理解し、深いテーマに触れるために行います。

シリーズ次回は、その具体的な方法のひとつをご紹介します(【受験と向き合う】 現代文 長文読解シリーズ 2)。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 教育コラム

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