小学3年生のLさんが教室に通い始めて、1年が経ちました。本に親しみ、物語や詩を書くことを楽しんでくれています。また、物づくりが得意で、教室で開催するワークショップでは、毎回テーマを決めて作品づくりに取り組み、物語を書くという頼もしい生徒さんです。
今回ご紹介する『いちごの心は?』という物語は、Lさんの友達を思う優しい気持ちが込められています。さて、秋に実ってしまった一人ぼっちのいちごの願いは!?
『いちごの心は?』
小3・Lさん
秋の月の出ている夜。野原でくらすいちごのいっちゃんは、一人で、ブランコにのってあそんでいます。
いちごのいっちゃんは、ずっと一人ぼっちです。なぜなら、秋にいちごはないでしょ。だから、一人ぼっちなのさ。だれかに会いたくなった、いちごのいっちゃん。だから、旅に出ることにしたんだ。
いっちゃんは、家の中や、野原のあそ道具を、ぴっかぴかにみがきました。リュックには、ごはんと、水と、ねぶくろと、テントをつめました。
いっちゃんが、旅にでたのは夜です。夜の森はこわいと思うでしょ。いっちゃんは、ぜんぜんこわくありません。なぜなら、いつも夜に、あそんでいたかです。
旅をつづけていると、森をぬけることができました。そして、町につきました。たくさんの人がいました。だれもいっちゃんに気づきません。なぜなら、みんな早足だったからです。
ここから、わたしのともだちになってくれる人は、いるかしら。
はじめ、いっちゃんは、コスモスにあいました。
「わたしと、ともだちになってくれる人しりませんか。」
と、聞きました。
「わたしは、しらないけれど、もみじに教えてもらえばどうかしら。」
いっちゃんは、もみじをたずねました。
「わたしと、ともだちになってくれる人しりませんか。」
「きみはいちごだね。いちごの花はまっしろだ。同じように、まっしろなふくをきている女の子が公園のベンチにすわっているよ。」
と、もみじがいいました。
いっちゃんは、もみじがいっていた公園に行くことにしました。
公園のベンチにつきました。白いふくをきた女の子が、ベンチにすわっていました。
「ともだちがいないので、あなたとおともだちになりたくて、あいにきました。おともだちになってくれますか。あらためていいます。わたしの名前は、いっちゃん。いちごのいっちゃんです。よろしくね。」
「いいよ。」
女の子はうれしそうに、こたえました。
「なんで一人でいるの。」
いっちゃんは女の子に聞きました。
「転校して、なかのいいともだちがいなくて、一人ぼっちなのよ。」
公園にはたくさんの子どもたちがあそんでいます。
「なんで、いっちゃんは一人なの。」
「秋は、ふつういちごはならないでしょ。一人だけみのっちゃって、さびしくて、旅に出ることにしたのよ。」
「わたしたち、一人ぼっちどうしね。」
「ともだちを見つけて、なにがしたかったの。」
「ともだちに、食べてほしかったの。」
それはもう、女の子は、びっくりしてしまいました。
「わたしのこと食べて。」
いっちゃんは、おねがいしました。
「食べていいの?」
「食べてくれたら、それはもう、うれしいよ。」
女の子が手を出すと、いっちゃんが手のひらにのってきました。女の子は、いっちゃんをそっとにぎってペロリと食べてしました。たねがなくて、つるつるしていて、あまくて、たまらないほどおいしかったです。
女の子は、公園であそんでいる子どもたちに、
「ともだちになろう。」
と、こえをかけました。
「あなたが声をかけてくれるのをまっていたのよ。」
「わたしたちも、ゆうきがなくていえなかったの。」
女の子は、新しいともだちと、ゆうぐれまで楽しくあそびました。ブランコにのりながら女の子は、いっちゃんのことを思い出しました。
「いっちゃんのおかげで、ともだちができたよ。」
夕日は、いっちゃんのように、まっ赤でした。
あとがき
読者のみなさまへ
『いちごの心は?』のお話はいかがでしたか?感動してくれたかな?
これは、「心をあげる」という少し悲しいお話です。ですが、人はいちごを食べるのです。人は命を食べないと生きていかれないから食べるのです。
私のお気に入りの場面は、いっちゃんを大きく描いたところだよ。笑顔いっぱいのいっちゃんです。
私は、また物語作りを頑張りたいと思います。物語作りにきょうみのある人は、ぜひ書いてみてね!
保護者様より
子どもの作るお話だから、単純なものだろうと思っていましたが、読んでみると、大人でも考えさせられるような深い内容で、とても驚きました。
今回のお話作りを通して、娘の心の中をより深く知り、感じることが出来たと思います。