【生徒作品】「本当にあったこわい話 ~みにくい顔のおばけ~」(小5 R・Y君)


いるかいないかわからない「おばけ」。
壁にうつる影や暗い廊下に、誰もが不安になったことがあるはずです。

本と空手が大好きで、明るく元気いっぱいのR・Y君。今回の作文では、4歳の頃に見たという「おばけ」について書いてくれました。

講師からのアドバイスは、できごとの「説明」ではなく、「描写」をすること。
何が起こったのかをただ説明するのではなく、読んだ人が一緒になって怖くなるような表現を意識してもらいました。

書く前に、メモをつくり、どんな表現ができるかじっくり考えたY君。
豊かな読書経験にも支えられ、詳しく、生き生きと、読む人をひきつける文章が書けたようです。

生徒作品

※Webの表示に合わせて、改行をしています。

「本当にあったこわい話
~みにくい顔のおばけ~」
小5 R・Y君

これは、ぼくが四さいの時のことだ。

真夜中に不気味な笑い声が聞こえたので、つい、起きてしまった。お母さんとお父さんの方を見たけれど、二人とも何事もないようにねていた。あたりを見わたしてみた。すると、一ヵ所に目が止まった。なぜか、真っ暗のはずの部屋にぼんやりと明るい所があった。目をこすってよく見てみると……、ぼくは、見てはいけないものを見てしまった。

かべの近くにういていたのは、みにくい顔をしている「おばけ」だった。おばけの目は、ひとみが細くなったネコのようで、黄ばんでいた。鼻はなく、線のような口からとがった牙が一本出ていた。そいつは、ぼくがこわがっているのを見て、ゲラゲラと笑った。ぼくは、完全にばかにされた。すると、おばけは上を指差した。見てみると、みにくい顔をしたおばけがさらに二体、天井を飛んでいた。合計で三体だ。ぼくの手があせでべとついた。

三体のおばけが、また笑い出した。さっきの笑い声よりも、三倍大きかった。それにもかかわらず、お父さんとお母さんはぐっすりねむっていた。この笑い声は、ぼくにしか聞こえないのだとわかると、血の気が引いた。ぼくは、今どうすればいいのかを必死で考えた。だが、どうすればいいのかがわからなかった。なぜかというと、お父さんやお母さんを起こしても信じてもらえないだろうし、泣いても、おばけがもっとうるさく笑うだけだからだ。 

おばけたちがまた笑い出した。もうぼくはがまんできなかった。
「うるさい!」
とさけんだ後、まくらをおばけたちに投げつけた。そして、すぐに電器をつけた。すると、あとかたもなく、おばけたちは消え去った。あまりにもぼくがうるさかったので、お父さんとお母さんを起こしてしまった。

お父さんとお母さんに、今あったことを話しても、思った通り、信じてもらえなかった。しかし、ぼくは、あのうるさいおばけたちがいなくなったので、ほっとした。もう、あのみにくい顔も見ることもないと思うと、安心した。いっしゅん、本で読んだように、おばけにされて、あの世に連れて行かれると思った。とてもこわかった。

ぼくは、おばけに聞けるのなら、たくさん質問したい。例えば、笑い声はなぜぼくだけに聞こえたのか、ということや、おばけの正体は何なのか、ということだ。

ぼくはもうおばけには会いたくない。一番は、わすれてしまうことだ。しかし、わすれられない。おばけは、この地球上に存在するのだろうか。みんなも、夜は気をつけよう。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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