
こんな子におすすめ!
- 友情の大切さを考えたい子
- 見た目の違いや個性について考えたい子
- 他者を理解することの意味を学びたい子
- 偏見や差別について考えるきっかけを探している子
- 南アフリカの文化や生活に興味がある子
本の紹介
「バラクラバ・ボーイ」は、南アフリカを舞台に、いつものんびりとした日常を過ごしていた「ぼく」と親友のドゥミサニの元に、顔を覆うバラクラバ帽をかぶった転入生・トミーがやってくることから始まる物語です。
なぜトミーはいつも帽子をかぶっているのか?その下に何が隠されているのか?好奇心と不安が入り混じる中で、子どもたちの間に友情が芽生え、見た目の違いを超えた理解と絆が育まれていきます。
ユネスコ・寛容に貢献する児童文学賞を受賞したジェニー・ロブソンの作品で、”みんなと違う”だけで生まれてしまういじめや差別について、お説教くさくなく、個性的な登場人物たちの楽しい物語を通して深く考えさせてくれる一冊です。
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本の解説
「バラクラバ・ボーイ」は、南アフリカの作家ジェニー・ロブソンによって書かれた、多様性と友情をテーマにした児童向け小説です。この作品は、子どもたちが外見の違いや先入観を乗り越えて真の友情を育む過程を、ユーモアを交えながら深く描いています。
物語の舞台は南アフリカの学校。主人公の「ぼく」と親友のドゥミサニの平凡な日々は、顔を隠すバラクラバ帽をかぶった少年トミーの転入によって一変します。トミーの秘密に好奇心を抱きながらも、次第に互いを理解し合っていく子どもたちの姿は、読者に「違い」を受け入れることの大切さを自然と教えてくれます。
原作者のジェニー・ロブソンは南アフリカ出身の児童文学作家で、アパルトヘイト後の南アフリカ社会を背景に、多文化共生や偏見の克服をテーマにした作品を多く発表しています。本作もそうした彼女の代表的な作風が表れており、ユネスコ・寛容に貢献する児童文学賞など多くの賞を受賞するなど高い評価を受けています。
印象的な場面

「とつぜん、まわりが気にならなくなったんだ。どんなにじろじろ見られようが、平気だった。まるでバラクラバに守られているみたいに、はずかしくもないし、気楽なんだ。これって、みんな、わかるよな?!」クラスじゅうすべてのバラク頭、スキー帽やストッキングをかぶった頭が、うんうん、とうなずいている。「それ、よーくわかるよ!」というクラス全員の納得した気持ちが教室にみちあふれた。(P101-102)
この場面は物語の重要な転換点です。トミーの影響で、クラスメイトたちがバラクラバ帽やさまざまな帽子をかぶることで、互いの違いを超えて連帯感を生み出す瞬間が描かれています。外見で人を判断することの愚かさと、互いを理解し合う大切さが伝わってくる感動的なシーンです。
読書感想文のヒント
読む前に考えてみよう
この物語を読む前に、次のことを考えてみましょう。
- あなたは他の人と違う特徴を持つ友達ができたとき、どのように接するでしょうか。
- 外見だけで人を判断してしまった経験はありますか?
- 自分が何か「違い」を持っていると感じたことはありますか?その時どんな気持ちでしたか?
考えを深めるための質問
- 1. トミーがバラクラバ帽を着用する理由は何でしたか?それを知った「ぼく」たちの気持ちはどう変化しましたか?
- 物語の中で、登場人物たちはどのようにして相手への理解を深めていきましたか?
- 「見た目で判断すること」の危険性について、この物語から何を学びましたか?
- この物語で最も印象に残ったシーンはどこですか?なぜそのシーンが心に残りましたか?
- もしあなたがこの物語の登場人物だったら、トミーにどのように接しますか?
- 「メモは、トミーがなぜバラクラバ帽をかぶっているかを、クラスのひとりひとりが想像してかいたものだった。」(P50)あなたは、トミーの帽子をかぶる理由をどう考えていましたか?
- クラスの子どもたちが考えた理由の中で、どの子の理由が一番良いと思いましたか?そしてなぜですか?
考えてほしいテーマ
- 友情
- 多様性
- 外見と内面偏見と理解
- 勇気
物語から考えるテーマ
- 「普通」の再定義 – クラスメイトの意外な一面を知ると、それが魅力に思えてくることがあります。自分が思う「普通」とは違うことを受け入れるには、寛容さや素直さと同時に知恵や知識も大切です。
- ギャップの魅力 – 見た目と内面のギャップは、時に人の魅力となります。トミーの帽子の下に隠された秘密は、彼の個性であり魅力でもあります。
- 新しいコミュニティへの参加 – 転校生の気持ち、転校生を受け入れる側の気持ち、新しい環境に入る不安と緊張、そして新しい仲間が増えることの喜びや楽しさが描かれています。
- 性格の多様性 – 注目されることが好きな子もいれば、そうでない子もいる。それぞれの個性を尊重することの大切さを考えさせてくれます。
- 連帯感と仲間意識 – クラス全員がバラクラバ帽をかぶるシーンは、違いを超えた連帯感と仲間意識を象徴しています。
理解を深めるために
この物語の背景には、南アフリカの複雑な歴史と多文化社会があります。南アフリカは人種差別政策「アパルトヘイト」の歴史を持ち、1994年にそれが廃止された後も、多様な人種や文化の共生に向けた取り組みが続いています。そうした社会背景が物語の土台となっています。
また「バラクラバ帽」とは、顔の大部分を覆う目出し帽のような帽子のことです。もともとは寒冷地での防寒具として使われていましたが、この物語では特別な意味を持っています。
著者のジェニー・ロブソンは教師としての経験を活かし、子どもたちが楽しみながらも深いメッセージを受け取れるよう物語を紡いでいます。彼女はアフリカに根ざした30以上の作品を発表し、「寛容」をテーマにした作品で国際的に高い評価を受けています。
合わせて知りたい
- 南アフリカの歴史と文化
- 多様性と共生社会について
- 子どもの友情と成長
- 外見の違いと向き合う方法
合わせて読みたい

『ただいま!マラング村』ハンナ・ショット 著 / 佐々木田鶴子 訳 / 齊藤木綿子 絵
あらすじ
タンザニアの男の子ツソは、キリマンジャロのふもとの村でおばさんと暮らしていましたが、食べ物が少ないため、ある晩兄と一緒に家を飛び出します。大きな町へ行こうとしましたが、バスターミナルで兄とはぐれてしまい、ツソは路上生活を送ることになります。ストリートチルドレンとして生きていく中で様々な経験を積み、成長していくツソが、やがてふるさとのマラング村に帰るまでの実話に基づいた物語です。
おすすめの理由
- アフリカの文化や生活を知ることができ、「バラクラバ・ボーイ」と共通する多文化理解のテーマがある
- 困難な状況に置かれても前向きに生きる子どもの強さと純粋さが描かれている
- 「家」や「帰る場所」の意味を考えさせられる、深いメッセージ性がある
- 異文化を通して自分の生活や価値観を見つめ直すきっかけになる

『くちぶえ番長』重松清 著
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小学4年生のツヨシのクラスに、ある日マコトという女の子が転校してきます。一輪車が得意で、ちょんまげのような髪型をした彼女は、自己紹介で「この学校の番長になる」と宣言します。スポーツ万能で正義感あふれるマコトは、弱い者を助け、いじめっ子に立ち向かいます。最初は戸惑うツヨシでしたが、次第にマコトの行動力と優しさに惹かれていきます。マコトには秘密があり、彼女との1年間の交流を通して、ツヨシは大きく成長していきます。
おすすめの理由
- 転校生という共通点があり、「バラクラバ・ボーイ」と同様に新しい環境での友情が描かれている
- 他者の痛みや悲しみを理解し、助け合うことの大切さを学べる
- 「くちぶえを吹くと涙が止まる」という象徴的な要素が、悲しみを乗り越える勇気を与えてくれる
- 昭和の時代の日本の学校生活が描かれており、異なる時代背景での子どもたちの姿を知ることができる
- 読みやすい文体で、感動と成長が描かれた心温まる物語
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『ワンダー 君は太陽』監督:スティーブン・チョボスキー/原作:R・J・パラシオ
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10歳のオーギー(オーガスト・プルマン)は、生まれつきトリーチャーコリンズ症候群という顔の骨の形成に関わる障害を持っています。27回もの手術を受け、ずっと家で母親と学習してきましたが、小学5年生になった時、初めて学校に通うことになります。最初は見た目のせいでクラスメイトから避けられたり、いじめの対象になったりしますが、次第にオーギーの内面の素晴らしさに気づく友達も現れます。オーギーを中心に、姉やクラスメイト、先生など、様々な視点から描かれる心温まる成長物語です。
おすすめの理由
- 多角的な視点 – 主人公だけでなく、周囲の人々の視点も描かれ、物語に深みを与えています
- 偏見を乗り越える勇気 – 「バラクラバ・ボーイ」と同じく、外見の違いを受け入れ、真の友情を育む過程が描かれています
- 心に響く言葉 – 「顔ではなく心で人を見る」という大切なメッセージが随所に込められています
- 家族の絆 – 困難に立ち向かう子どもを支える家族の愛情が温かく描かれています
- 実社会への理解 – トリーチャーコリンズ症候群という実在する障害について学ぶきっかけになります
『バラクラバ・ボーイ』を読んだ後に観ることで、「違い」を受け入れることの意味や、多様性を尊重する大切さについて、より深く考えるきっかけになります。見た目の違いから始まる物語が、最終的には「内面の美しさ」や「他者への思いやり」というユニバーサルなテーマに昇華していく点で共通しています。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
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