
こんな子におすすめ!
- 食べることの意味について考えたい子
- 摂食障害や会食恐怖症について理解を深めたい子
- 友情や自己受容について考えてみたい子
- 思春期の心の葛藤や成長を描いた物語が好きな子
- 現代社会における「食」の問題に関心がある子
本の紹介
会食恐怖症を抱える葵と、過食嘔吐を繰り返す咲子。食との関係に悩みを抱える二人の少女の物語です。人と一緒に食事をすることが怖い葵と、食べては吐くという行為を繰り返す咲子が、お互いの問題と向き合いながら「わたしたち」なりの食との付き合い方を模索していきます。「美味しいっていうのは、きっと。生きたいってことなんだ」という葵の言葉にあるように、食べることは単なる栄養摂取ではなく、生きることそのものに直結しています。物語の中で二人は、食べる側だけでなく作る側の視点も知ることで、「食べてもらいたい」という思いには「生きて欲しい」「元気になって欲しい」という深い願いが込められていることを学びます。思春期特有の悩みや友情、自己受容のテーマを通して、私たちの食生活や食文化、そして生きることの意味について深く考えさせられる作品です。
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本の解説
物語の背景
現代日本社会では、摂食障害や会食恐怖症など食に関わる心の問題を抱える若者が増えています。SNSなどで広がる「理想の体型」や「食べ方」への圧力、家庭や学校での食事環境の変化など、様々な要因が絡み合っています。本作は、そうした現代の食をめぐる問題を、中学生の視点から描いた物語です。
物語の展開
主人公の葵は、人と一緒に食事をすることに強い不安を感じる「会食恐怖症」を抱えています。給食の時間は毎日が緊張の連続で、クラスメイトの視線が怖くて食べられません。一方、咲子は「過食嘔吐」に悩み、周囲に隠れて大量の食べ物を摂取しては吐き出すという行為を繰り返しています。
二人が偶然出会い、互いの悩みを知るところから物語は始まります。最初は互いに距離を置いていた二人ですが、少しずつ心を開き、共に問題と向き合っていきます。物語の転機となるのが学校の給食改革プロジェクトです。この活動を通じて、二人は「食べさせてもらうばかり」だった立場から、自分たちで食事を作る経験をします。料理を作る過程で、食べる人と作る人、それぞれの立場や思いを知ることになります。
作る側の視点を得たことで、二人は「食べてもらいたい」という思いには「生きて欲しい」「元気になって欲しい」という願いが込められていることを理解します。同時に、自分が作ったものを誰かに食べてもらう喜びも知り、「誰かの役に立っている」「必要とされている」という実感を得ていきます。
読書感想文のヒント
読む前に考えてみよう
- あなたにとって「食べる」とはどういう意味がありますか?
- 人と一緒に食事をすることで感じる楽しさや不安はありますか?
- 「正しい食べ方」「正しい食事」とは何だと思いますか?
- 自分の体や食べ方について、周りの目を気にしたことはありますか?
考えを深めるための質問
- 葵の「美味しいっていうのは、きっと。生きたいってことなんだ」(P231)という言葉から、あなたは何を感じましたか?
- 咲子の「みんなどこかが不完全で。みんなどこかが不健康で。みんな泣きながら、戦っているのだ」(P239)という気づきに共感できる部分はありますか?
- 「食べてもらいたい」という思いと「生きて欲しい」という願いは、あなたの日常の中でどのように結びついていますか?
- 料理を作ることで「誰かの役に立っている」「必要とされている」と感じた経験はありますか?
- あなたにとって「生きるために必要なもの」は何ですか?食べ物以外で、あなたの心を満たすものは何ですか?
考えてほしいテーマ
本作は単なる摂食障害についての物語ではなく、「食べる」という行為の社会的・文化的な意味、自己受容と他者との関わり、成長の過程での葛藤など、多層的なテーマを扱っています。特に日本社会における食文化や、「みんなと同じように食べなければならない」という無言の圧力などについても考えさせられます。
物語の中で咲子は「あたし、自分ばっかりダメなやつだって思ってた。でも、本当は、みんなどこかが不完全で。みんなどこかが不健康で。みんな泣きながら、戦っているのだ。生きていくって、そういうことなのだ」と気づきます。この言葉は、自分の弱さや不完全さを受け入れることの大切さを教えてくれます。
また、「食べる」と「作る」の関係性も重要なテーマです。食べることは生きること、美味しいと感じることは生きたいと思うこと。そして食べてもらいたいという思いは、相手に生きて欲しい、元気になって欲しいという願いの表れでもあります。作る側にとっても、誰かのために料理を作ることは、その人とともに生きたいという思いや、自分自身も作ることで生きている実感、誰かの役に立っている・必要とされていることを感じる機会になります。
給食改革プロジェクトは単なる学校行事ではなく、二人が受け身の「食べさせてもらう」立場から、能動的に「作る」立場へと成長する象徴的な出来事として描かれています。
二人の少女が自分たちなりの「食べ方」と「生き方」を見つけていく過程は、読者自身の食に対する考え方だけでなく、人との関わり方や生きることの意味も問い直すきっかけになるでしょう。
- 食と自己アイデンティティ
- 摂食障害と社会的プレッシャー
- 友情と相互理解
- 自己受容と不完全さの肯定
- 「美味しい」と「生きたい」の関係
- 「食べてもらいたい」と「生きて欲しい」の結びつき
- 「作る立場」と「食べる立場」の相互理解
- 「誰かの役に立つ」ことの意味
- 給食という場の持つ社会的・文化的意味 生きるために本当に必要なもの
- 日本の食文化と「同調圧力」
理解を深めるために
摂食障害は、単なる好き嫌いや意志の弱さではなく、心理的・社会的要因が複雑に絡み合った状態です。会食恐怖症(社交不安障害の一種)も同様に、自分の意志だけでは簡単に克服できない問題です。これらの問題を抱える人への理解と共感が大切です。
「食べる」と「作る」の関係性も重要なテーマの一つです。食べることは生きること、そして食べてもらいたいという思いには生きて欲しい、元気になって欲しいという深い願いが込められています。また、作る側にとっても、誰かのために料理を作ることは、その人とともに生きたいという願いや、自分自身が誰かの役に立っている・必要とされているという実感につながります。自分で作ったものを誰かに食べてもらうことで、互いの絆が深まり、生きる喜びを分かち合うことができるのです。
生きるために必要なものは、食べ物だけではありません。ある人にとっては走ることかもしれないし、音楽を聴いたり奏でたりすることかもしれません。物語を読むことに生きる喜びを見出す人もいるでしょう。自分にとって「美味しい」と感じること、「生きたい」と思わせてくれるものは何か、考えてみましょう。
また、日本の食文化には「皆で同じものを同じように食べる」という側面があります。給食や家族での食事など、「共食」の場面で感じる無言のプレッシャーについても考えてみましょう。そして、咲子の言葉にあるように、誰もが何らかの不完全さや弱さを抱えながら生きていることを理解することで、他者への共感や自己受容につながるのかもしれません。
合わせて知りたい
- 摂食障害の種類と症状
- 思春期における身体イメージの形成
- 日本の食文化の特徴と変遷
- 学校給食の歴史と役割
- 食育と心の健康の関係
- 「生きるための必要なもの」についての多様な考え方
- 不完全さを受け入れる自己肯定感の育み方
合わせて読みたい

広島の「ばっちゃん」こと中本忠子さんについての料理詩集です。中本さんは保護司として活動しており、多くの子どもたちから「ばっちゃん」と呼ばれ慕われています。
彼女の哲学は「ごはんをお腹いっぱい食べときさえすれば悪いことはしないっていうのが、わたしの理論なんよ」というもので、居場所のない子どもたちに毎日欠かさず食事を提供しています。
この本は中本さんの料理レシピと彼女の短い言葉を写真とともに綴ったドキュメンタリー写真詩集で、子どもたちとばっちゃんの日常を料理を中心に描いています。

転校先の学校に馴染むのを拒む美貴、子どもっぽいのがコンプレックスの桃、親友の姉に恋をする満、 悩める人気者の雅人、孤独な優等生の清野、姉御肌で給食が大好きな梢。 6人の中学生たちの揺れる心が、給食をきっかけに変わっていく。 やさしく胸に響くアンサンブルストーリー。 「七夕ゼリー」「マーボー豆腐」「黒糖パン」「ABCスープ」「ミルメーク」「卒業メニュー」の6品がつなぐ連作短編集です。

河合隼雄さんは著名な臨床心理学者で、この本では疲弊した心に勇気を与え、人生の課題に立ち向かうための知恵が55章にわたって綴られています。「うそは常備薬、真実は劇薬」というフレーズに表されるように、時に厳しくも優しい人生の知恵が詰まっています。「耐える」だけが精神力ではないという視点で、世の理不尽や人間関係のしがらみに悩む時に、真剣に悩む心の声を聴き取り、トラブルに立ち向かう秘策を与えてくれる内容となっています。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
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