【2017年読書感想文特集】『犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと』大塚 敦子 著(高校生向け課題図書)

犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと




内容の紹介

筆者・大塚敦子さんは、二〇〇七年から三年半、聖路加国際病院の小児科病棟を取材しました。セラピー犬の訪問活動を軸に、難病と闘う子どもたちの姿を撮影し、子どもたちの闘病、別れ、退院後の進路について取材を重ね、本書を執筆しました。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

◆聖路加国際病院は、日本で初めてセラピー犬の導入をしました。病院に犬がくることについて、あなたはどう思いますか。

  • なぜ犬を病院に入れるのでしょう?
  • 犬を入れることにはリスクもあります。どのようなことに注意しなければならないでしょうか?
  • あなたは、病院に犬がくることに賛成ですか、反対ですか?

合わせて知りたい

小児がんについて、調べてみましょう。

読む

読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

準備する

気持ち

本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。

体験

読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

考えるヒント

◆この本で取材されている子どもたちは、この本を読む高校生のみなさんよりも小さな子や、同じくらいの年の人がいるかもしれません。苦しい闘病やリハビリに耐えながら生きることと向き合う子どもたちの、言葉や行動の中で、あなたの心に残ったことを思い出してみましょう。

◆小児がん患者の子どもたちの治療と支援には、医師、看護師、保育士、心理士、医療ソーシャルワーカー、チャプレン(医療現場で働く牧師や司祭)、薬剤師、栄養士、訪問学級の教師など様々な職種による「トータル・ケア」が行われます。

  • なぜ、こうした多様な職種が関わる必要があるのでしょうか。次の章を読み、小児がんと闘う子どもたちを支える人々の役割について、確認しましょう。
    • セラピー犬チームの人々 P.14~P.24
    • 音楽療法士・保育士 P.30~P.36
    • チャイルドライフスペシャリスト P.36~P.40
    • つばさ学級の先生 P.69~P.80
    • ソーシャルワーカー P.80~P.84
    • チャプレン P.100~P.103

◆潰瘍性大腸炎の治療を経て翔太君は、「医師になりたい」という目標を見出しました。また、白血病と骨髄炎の治療を経た悦子さんは「臨床心理士」になりたいという目標を持ちます。二人共、自らの経験した困難を自身を支えるアイデンティティとして、それぞれの道を歩んでいます。

  • あなたは、将来に目標を持っていますか。
    • もし持っていたら、その目標がどのようにあなた自身の経験と結びついているのか、考えてみましょう。
    • もし、まだ模索しているのなら、翔太君や悦子さんの進路選択を参考に、将来の目標を持つためにどのようなことが大切か考えてみましょう。
  • 保護者の方へ

    上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

    読書感想文を通して考えてほしいテーマ

    • トータル・ケア
    • 命の尊厳とQOL

    この本について

    トータル・ケア

    本書で取材されている子どもたちは、死を身近に感じ、苦痛に耐えながら懸命に闘病生活を送りながらも、生きることへの前向きさや、周りにいる人びとへの思いやりの心を忘れません。また、子どもたちが生きる希望を失わないことが、苦しい治療を受け入れ、向き合うためにも極めて重要です。難病を抱える子どもたちには、様々な苦痛や困難、悩みが伴います。そのため、聖路加国際病院では多様な職種によるトータル・ケアが取り組まれています。

    命の尊厳とQOL

    本書を 読む上で重要な「命の尊厳とQOL」について考えましょう。

    現代の医療は、回復の見込みのない状況で、命が残りわずかであっても、延命を可能にしました。しかし、それは同時に「生きることの価値」について、問い直すことにもつながりました。生きることの価値を「量」だけではなく「質」でも捉え直さなければならないことに気がついたのです。

    「命があることは、無条件に尊い」という考え方を推し進め「あらゆる手段を使って、少しでも長く生きたい」という意見もある一方で、苦痛に耐えながら延命すること、本人の意志によらずに延命を続けざるを得ないことに対する反対意見もあります。「ただ長く生きること」よりも「人生の質=OOL(Quality of life)」を大切にしたいという考え方です。このようにQOLを尊重する考え方から、身体と心の苦痛を和らげ、人間らしい生活や自分らしい生き方ができる時間を持てるように医療処置をする「緩和ケア」という方法がとられるようになりました。

    死を意識することは、限りある生を問い直すことにつながります。本書で取材されている子どもたちの人生を通して、みなさんも自分自身の人生について、考えるきっかけにしてみてください。


    合わせて読みたい

    『わたしの病院、犬がくるの (いのちのえほん)』

    苦しい病と向き合いながらも、生きる喜びを失わない子どもたち。セラピー犬とのふれあいをとおして、難病と闘う子どもたちと家族によりそう写真絵本です。

    合わせて観たい

    映画『風のかたち』

    小児がんと向き合う、子どもたちと聖路加病院の細谷亮太医師の十年間を記録したドキュメント映画です。

    映画監督 伊勢真一さんのホームページ

    構成について

    構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

    「誰に、何を伝えたいか」

    • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
      • 誰に……例)家族、友人、先生
      • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
    • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

    文章の構成

    • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
    • 【はじめ】
      • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
    • 【なか】
      • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
      • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
        • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
        • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
        • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
        • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
      • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
    • 【おわり】
      • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
    読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。



    2017年 その他の課題図書

    随時追加していきます。

    2017年 夏期講習

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    よりよく考えるために、ことばの力を育てましょう!

    リテラについて

    「子どもたちに 生きる力を」

    自らと大切な人を守り、未来を形作るためには、自分で考え、道を選びとる力が必要です。リテラは、「読む・書く・対話する(議論する)・考える」という、あらゆる知的活動の軸となる力を育て、自分の人生を「生きる力」を育みます。

    この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

    東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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    カテゴリー: ブックレビュー

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