【生徒作品】『宗教と多様性』(新中1 H・Wさん)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を通して、実践的な発表の仕方を学んでいきます。

今回は、2019年3月に行われた「リテラ 生徒作品発表会」より、新中1 H・Wさん『宗教と多様性』を掲載致します。

様々な文化的背景を持つ生徒が学ぶ、インターナショナルスクールに通うHさん。今回の研究では、宗教について考えることを通し、多様性の大切さに気づくことができました。

その他の発表動画は、「2019年3月 生徒作品発表会 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

講師からのコメント

民族、言語、そして宗教の異なる友人と過ごす日々をいきいきと語ることで、多様性の大切さを、わかりやすく伝えることができましたね。宗教の違いだけでなく、神様のことや、平和への願いについて語りかけてくれたところは、特に印象的でした。生きることについて考えるのは、簡単なことではありませんが、Hさんの言葉に、勇気をもらいました。

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
世界には、宗教がいっぱいあります。それは、世界に多様性があるからだと思います。もしも、この世界の人々がみんな同じ生活、同じ思いでいたら多様性がなくなってしまいます。多様性がなければ、一人ひとりが持っている「自分らしさ」が消えてしまいます。だから、多様性の大切さを伝えたいと思ってこの作品を作りました。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
私は、なぜ色々な宗教があるの? と考えた事があります。ある日『A Wrinkle In Time』という本を読んでみました。この本の中では、主人公は多様性がない異世界に、お父さんを探しに行きます。私は、この物語から、多様性の大切さを学びました。それを伝えたかったので、発表のテーマを「宗教と多様性」にしました。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
作品が完成した時です。なぜなら、すべての思いを作品に込めることができ、嬉しく、達成感が味わえたからです。発表会に向けて、やる気がどんどん湧き上がってきました。
作品づくりで難しかったことは何ですか?
思ったことを分かりやすい言葉に変えて、小学生にも伝わる作品を作ろうとしたことです。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
多様性は大切ですが、多様性があることで、差別も起きます。だから、多様性が本当にあった方がいいのかなと悩みました。そして、この問題は、難しいと思いました。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
学校では、ヒンズー教の友だちが断食をしています。学校では、飲み物は水と決まっていたので、初めは、その子がオレンジジュースを飲んでいるのを見て、ルールを破っていると思いました。しかし、その子に「オレンジジュース飲んじゃダメじゃない」と言ってみると、断食していて、それしか口にできないことを教えてくれました。それを知った私は、断食していることを理解したいと思いました。これからも、人を外見や行動だけで、決めつけずに、話を聞きたいと思います。
来年、研究したいことはありますか?
「食べ方」について研究したいです。
この作品を読んでくれた人に一言
神様について考えてみてください。自分らしく生きてください。

生徒作品

新中1 H・Wさん『宗教と多様性』

みなさんは、宗教を持っていますか? 持っている人も、いない人もいると思います。私は、宗教を持っていませんが、キリスト教のカトリックの学校に、通っています。学校にはチャペルがあり、年に3回、大きなお祈りの行事があります。興味深い行事だし、キリスト教を信じている友達が、一生けんめいお祈りをする姿を見ると、うらやましい気持ちになります。

しかし、私は、キリスト教ですか? キリスト教を信仰したいですか? と聞かれると、困ってしまいます。なぜなら、年の初めには、神社にも行くし、山に登った時には、お寺にお参りをします。そして、ピンチの時には神様に「助けてください」と、お祈りをしてしまうこともあるからです。学校は、キリスト教のカトリックですが、いろいろな宗教の子が通っています。仲の良い友達にも、イスラム教、ヒンズー教、キリスト教の子がいます。イスラム教の友達は、ヒジャブはしていませんが、肌を見せないように、スカートを長くしています。ほかの学年の子ですが、イスラム教で、ヒジャブをしている子もいます。ちなみに、ヒジャブとは、イスラム教の女性が頭をかくすためにつけているもののことです。私の学校は、小学校5年生から6年生の2年間で、宗教のことを習います。それは、いろいろな国の、いろいろな宗教を持った子が、学校に通っているからだと思います。

私も、はじめは、まったく宗教について知りませんでしたが、この2年間で、宗教について、たくさん学ぶことできました。今回、私が研究のテーマに宗教を選んだ理由は、「多様性」の大切について、伝えたいと思ったからです。

「多様性」とは、簡単に言うと「みんなが違いを持っている」ということです。もしも、この世界に「多様性」がなければ、どうなるでしょうか? みんな同じルールに従って、みんな同じ暮らしをして、みんな同じことを学んで、同じように行動する世界になるでしょう。私は、そのような世界を描いた『A Wrinkle In Time』(Madeleine L’Engle 著)というSF小説を読みました。たしかに、みんなが同じという世界では、争いや、他人をうらやむ気持ちもなくなり、平和に見えます。しかし、みんな同じだと、感情がなくなり、コミュニケーションもなくなってしまいました。みんな同じというのは、まるで、羊たちのようなものです。羊は、群れになって同じ時に草を食べ、同じ方向に歩いていく生き物です。それでは、人々のユニークさが消えて、つまらないと思います。そして、もっとおそろしいことがおきます。『A Wrinkle In Time』の小説では、病気になった人は、殺されてしまいました。なぜなら、他の人は病気にかかっていないので、違いが発生してしまったからです。違いが排除される世界は、恐怖に満ちあふれています。私たちの暮らす世界は、多様性に満ちています。私は、そのことを、学校でたくさんの友だちと出会い、知ることができたし、世界には、たくさんの宗教があることからも学びました。

しかし、多様性があるから、その違いに注目して、争いや差別が起きることがあります。例えば、宗教の違いや、肌の色の違い、体や心の障がいなどが挙げられます。私は、そのことが残念です。考えると、つらくなります。私は、多様性があるこの世界が好きです。宗教も、たくさんあった方が、いいと思います。なぜなら、それぞれの宗教の、興味深い歴史や、ユニークな作法を、飽きることなく学ぶことができるからです。

私にとって、宗教の違いを学ぶことは、魅力的なことでしたが、学んでいくと、共通点を見つけることができました。宗教の一番大きな共通点は、「神様」を信じていることです。唯一神の宗教もあれば、多神教の宗教もありますが、どの宗教にも、神様がいます。そして、どの宗教も「世界の平和」を願っています。

私は、宗教のことを学んできましたが、どの宗教を信仰するか、まだ決めていませんし、これからも信仰を持つかどうか、わかりません。けれど、神様とは何か? もし死んだらどうなるのか、奇跡とは、幸運とは、運命とは何かを考え続けると思います。そして、信仰を持っていなくても、私も世界中の宗教を持つ人たちと同じように、「世界中が平和になりみんなが幸せに暮らすこと」を、願っています。みなさんも、自分らしくあることに、自信を持ってください。そして、宗教について、学んでみてください。とても、面白いですよ。そして、私のように、宗教を持っていない人も、神様について、考えてみてください。答えは簡単には出ないかもしれませんが、生きていることの意味について、学ぶことができますよ。

これで、私の発表を終わります。みなさん、ありがとうございました。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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