【記述の壁を破る 第3回】「内容不十分」に終止符! 実戦で必要な「検索」と「フレーム」活用のコツ

選択肢問題はできるのに、記述問題になると鉛筆が止まってしまう――そんな悩みを解決する、体系的な記述力育成メソッドをご紹介します。

記述問題は、次の思考ステップで進みます。また、この連載も、このステップのそれぞれに対応しています。

  1. 設問の読解(第1回
    問われていること、条件(字数、指定)を確認する。「方向」を捉える。
  2. 「幹」となる一文をイメージ(第2回
    語尾(根)と、シンプルな結論(幹)を定める。「手が止まる」のを防ぐ。
  3. 範囲の特定(第3回
    指示語の終点や文のフレーム(状態・展開・結末など)から根拠の範囲を特定する。解答の「材料」を集める。
  4. キーワードの選定と幹の修正(第4回
    本文からキーワードを選び、幹を本文表現に即して修正する。「抽象度(ズーム)」と「客観性(ピント)」を調整する。
  5. 文章化(第5回
    選定した要素を幹につなげ、過不足なく伝わる文をつくる。「不自然な文」から脱却する。

第3回となる今回は、過不足のない解答文を作るための考え方を見ていきます。

はじめに:記述の「過不足」問題に終止符を! 問題のタイプ別アプローチ

前回(第2回)、記述問題では「根」(語尾)と「幹」(根につながるシンプルな一文)を先に決めることが大切であることを解説しました。根と幹があれば、子どもたちは記述の方向性を見失わなくなります。

しかし、次に立ちはだかる壁が、答えの根拠となる情報をどこから探し出すか、という問題です。

記述問題には、大きく、次の2つのタイプがあります。

  1. 部分的読解:狭い範囲を参照する
    • 例)指示語の問題や語句の意味を問う問題
    • 言葉の指し示す内容を、別の場所を参照してまとめます。
    • 答えが、抜き出しや、短めの記述になる傾向があります。
    • 情報を見つけるには、「指示語を追う」スキルや、「検索」のスキルが求められます。
  2. 包括的読解:広い範囲を参照する
    • 例)全体の要旨をまとめる問題
    • 文章の内容について、複数の段落など、より広い範囲を参照してまとめます。
    • 答えが長めの記述になり、配点も高い傾向があります。
    • 情報を見つけるには、「文章の展開フレーム」の知識が求められます。

まずは「部分的読解」の問題について見ていきましょう。

部分的読解:指定語句から解答の範囲を限定する

指示語を追う

記述問題では、指示語の問題が多くあります。

【問い】「「そのことは、私の人生に大きな影を落としたと思う」とありますが、「そのこと」とはどのようなことですか。具体的に書きなさい」

こうした指示語の問題では、指示語の指す内容を追っていく必要があります。

指示語の内容はその直前に書かれていることが多いため、まずはその指示語の直前をチェックするのがセオリーです。ただし、記述になるような問題の場合、指示語の先にさらに指示語があってどんどん追っていく必要があったり、指示語が指しているのが段落全体であったりします。

指示語が指しているのが、直前の単語でないことがある

解答が「書き抜き」ではない場合、まず頭を「記述」に切り替えることが大切です。

語句を検索する

指定された語句の意味を説明する問題も、よく出題されます。

【問い】「見せるよりも、無数の眼差しによって「見られる」ことで支えられる作品をつくりたい」とはどういうことですか。簡潔に答えなさい。

こうした問題では、指定された語句や、それと同じ意味を持つ言葉を、文章から「検索」する必要があります。例えば、この問題では、「眼差し」「見られる」といった言葉が出現する箇所を検索します。

■ 検索のポイント

探し物をする時、私達は、可能性の高い場所から見ていきます。たとえば、ハサミを探している時、まずは文房具の入っている引き出しを開けます。次に、その場所をざっと見ます。一つひとつの文房具を手に取って検討するということはなく、記憶の中にあるハサミの色や形を目印に、全体を見渡します。

「検索」も同じです。「検索」とは、文章全体を熟読するのではなく、探し物をする時のように、その語句が出現しそうな範囲の見当をつけ、ざっと見ていくことなのです。

検索をする際は、次の3点を意識します。

  1. 指定された傍線部の前後を確認し、文脈をつかむ
    設問で指定された語句を含む箇所の前後を読み、どのような流れでその語句が使われているのかを確認しましょう。
  2. 出現する箇所の検討をつける
    問題ごとに全文を読んでいては、時間が足りなくなってしまいます。ここで役立つのが、第2回でご紹介した「5秒ルール」です。設問を読んだ後、5秒でよいので、どのような答えになりそうかイメージしましょう。そして、そのイメージの源となった段落やブロックから検索を始めましょう
  3. 似た言葉の可能性もある
    同じ内容が、違う表現で書かれていることもあります。先程の例であれば、「眼差し」「見られる」という言葉は、「視線を集める」「多くの人の注目を浴びる」などと表現されているかもしれません。ここでも、先程の「5秒ルール」が重要になります。言葉そのものを探すのではなく、言葉の持つイメージを探すという意識が大切です。
文章全体を熟読するのではなく、探し物をする時のように、その語句が出現しそうな範囲の見当をつけ、ざっと見ていく

包括的読解:文章の「展開フレーム」から全体の流れを捉える

包括的読解の問題では、複数の段落や文章全体など、より広い範囲をまとめる必要があります。文章全体がどのような構造で展開しているのかを捉えようとする時、文章の「展開フレーム」の知識が役立ちます。

1.物語文のフレーム:感情・行動の理由をもれなく説明する「状態 → 展開 → 結末」

たとえば、登場人物の行動の理由を問う次のような設問があったとします。

【問い】「太郎が混乱してしまった理由を具体的に説明しなさい」

この設問に対し、次のような回答があったとします。

 「先生に、リレーに勝つことよりも仲良く練習しろと言われたから。」

これは直接的な「展開」の部分のみで、十分な内容とは言えません。第2回で登場した「ポンコツロボ」(一切の配慮をしない架空の採点者)は、「太郎」がどう思って練習していたのかを推測してはくれません。

合格答案では、次のように、状態 → 展開 → 結末をそろえる必要があります。

物語文のフレームと意味

物語文の展開フレーム
  • 【状態】 前提となる状況や設定。人物の性格、それまでの努力、置かれた立場など。感情や行動が生まれる背景を示す。ここを省くと「情報不足」になりやすい。
  • 【展開】 直接的なきっかけや出来事。誰かの発言、予期せぬアクシデントなど。感情や行動を引き起こした原因を示す。
  • 【結末】 出来事の結果、人物がどうなったか、どう感じたか。設問の起点になりやすい。

これを踏まえて解答をつくると、たとえば次のような文章になります。

「運動会のリレーでクラスが勝つために意気込んで練習していたのに(状態)、先生にリレーに勝つよりも仲良く練習をすべきと言われ(展開)、どうすればよいのかわからなくなったから(結末)。」

2.説明文のフレーム:主張と事例の関係を整理する「抽象 ↔ 具体」の論理構造

説明文の記述問題は、「筆者の主張(抽象的な意味)」と「それを裏づける具体的な事例」の関係性を問います。本文は、抽象的な主張と具体的な事例が交互に現れる「抽象 ↔ 具体」の構造を持っています。

説明文で求められるフレームは、以下の要素の適切な組み合わせです。

説明文のフレームと意味

説明文の展開フレーム
  • 【背景】 主張が生まれる時代や社会の状況。前提となる事実。主張の重要性につながる。物語文の「状態」に相当。
  • 【抽象的な意味づけ】 筆者の意見、主張、テーマ。「〜ということ」「〜という点」でまとめられる内容。記述の「ズーム」(抽象度)が合う中心点。
  • 【具体的な事例】 比喩、データ、実例、歴史的事実など。抽象的な主張を具体的に補強する要素。

たとえば、コミュニケーションについて論じた説明文で、次のような設問があったとします。

【問い】「「私達は多様な顔を持つ」とありますが、どういうことですか。簡潔にまとめなさい」

この設問に対し、具体的な事例が書かれた段落を参考に、次のような解答を書いたとします。

「私達が、家と学校によって言葉遣いを変えたり、人によって話す内容を変えたり、目的によって話し方を変えたりすること」

しかし、設問には「簡潔にまとめなさい」という指示があります。つまり、事例が示す「抽象的な意味づけ」が求められています。「ポンコツロボ」は、事例から抽象的な意味を読み取ってくれないため、筆者の抽象的な言葉を使ってまとめる必要があります。

「私達が、場面に応じてコミュニケーションのスタイルを変えていること」

【実践アドバイス】

文章全体の構造を読み解くには

読解には、段落単位の理解である「部分的読解」と、文章全体からテーマやメッセージをとる「包括的読解」がある

読解には、段落単位の理解である「部分的読解」と、文章全体からテーマやメッセージをとる「包括的読解」があります。

「包括的読解」に関わる問題は、より広い範囲の情報を必要とするため、配点が高い傾向があります。本文を読むとき、「ここは事実」「ここは意見」「ここは前提」といったように、展開のフレームを意識しながら読むことが、全体を一つのまとまりとして読む「包括的読解」につながります。

物語文の「包括的読解」のポイント

「状態」を見落とさない

物語文では、すべての前提となる「状態」を見落とさないことが大切です。主人公がどのような状況なのか、何を望んでいるのかといったことを正確に捉えるようにしましょう。特に、物語の途中から抜粋された文章の場合、それがわかりにくことがあります。本文の中に散りばめられた情報から推測するようにしましょう。

変化からテーマを読み取る

最初の「状態」と「結末」を比べ、人物がどのように変化したのかが、「テーマ」を考えるヒントとなります。

例えば、「ただ知識として原爆の被害を知っていた」(状態)主人公が、「実際の被爆者との出会いを通して」(展開)、「一人ひとりに人生があったと実感した」(結末)という物語があったとします。この時、状態と結末を比べて浮かび上がってくるテーマは、「実感の持つ力」といったようになります。

人物の変化にテーマがあらわれる

説明文の「包括的読解」のポイント

説明文では、論理的な内容の場合、「背景」「抽象的な意味づけ」「具体的な事例」は、それぞれ異なる段落に書かれます。この時、段落の「最初の一文」(トピックセンテンス)と「最後の一文」(コンクルーディングセンテンス)に注目すると、各段落の持つ意味がわかりやすくなります。

最初と最後の一文を意識すると、段落の意味を捉えやすくなる

ただ、随筆文など、要素ごとに明確に段落が分かれていない文章もあります。この場合は、より注意して、各要素を読み分けていく必要があります。

【サポートのポイント】

情報の検索が苦手な場合

検索に時間をかけると焦りを生むため、以下の力を意識的に訓練しましょう。

  • 点検読みのスピード
    語句を探す際、単語の表面だけをざっと追い、脳内でその意味を瞬時に照合する読み方を「点検読み」と言います。いわゆる「速読」とは異なり、重要な箇所を点検するように読むのです。「実践アドバイス」で説明したように、物語文では人物の感情と変化といったテーマに関する部分を、説明文ではコンクルーディングセンテンス(段落末尾)とトピックセンテンス(段落冒頭)をつなげて捉える練習をしましょう。
  • 問題の先読み
    読解問題において、本文と設問をどのような手順で読むかは大切なテーマです。お子様が普段から読書に慣れている場合、説明文では「次に何を聞かれるかな」と次の設問を先読みしながら読むと、解答範囲が特定しやすくなります。物語文では、本文と設問を行き来することで感情の流れが途切れてしまうことがあるため、物語のフレームを意識しながら全体を読み通し、テーマを捉えることを優先しましょう。
  • 類語への気づき
    指定語句そのものが見つからない場合、その類義語や別の表現も含めて探す必要があります。語彙力は、普段からの読書習慣が大切になります。物語文・説明文の両方を継続的に読んでいくこと、また、読解問題に取り組む際は、点数だけでなく、その内容や語彙をしっかりと理解していくことが求められます。

情報の「範囲」が特定できない場合

記述の「幹」となる一文(結論)は考えられたものの、その根拠となる本文の範囲を特定できず、どこから情報を集めていいかわからなくて手が止まってしまったり、関係ない情報まで含めて書きすぎてしまったりすることがあります。特に、問われている内容が本文に点在している(例:物語文の「状態」が複数箇所に書かれている)場合に、こうしたことが起こりやすくなります。

範囲の特定が苦手な場合、「この段落は『状態』だね」「ここは具体的な『事例』だね」といったように、一緒に本文を読み、展開フレームの各要素がどこにあるかを一緒に探したり、簡単なメモを振ったりする練習をしましょう。

ズームの調整:どのくらいの抽象度で書くか

今回ご紹介した展開のフレームを、すべての記述問題に含めなければならないわけではありません。しかし、フレームを意識することで、どの範囲を、どのくらいの抽象度で書くかという、「ズームの調整」ができるようになります。

次回は、この「ズームの調整」の仕方を見ていきます(→第4回へ)。

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 教育コラム

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