【記述の壁を破る 第2回】記述の「手が止まる」を解決! 答えの土台「根」と「幹」を定める

選択肢問題はできるのに、記述問題になると鉛筆が止まってしまう――そんな悩みを解決する、体系的な記述力育成メソッドをご紹介します。

記述問題は、次の思考ステップで進みます。また、この連載も、このステップのそれぞれに対応しています。

  1. 設問の読解(第1回
    • 問われていること、条件(字数、指定)を確認する。「方向」と「ズーム」を捉える。
  2. 「幹」となる一文をイメージ(第2回
    • 語尾(根)と、シンプルな結論(幹)を定める。「手が止まる」のを防ぐ。
  3. 範囲の特定(第3回
    • 文のフレーム(状態・展開・結末など)から根拠の範囲を特定する。「内容の過不足」を防ぐ。
  4. キーワードの選定と幹の修正(第4回
    • 本文からキーワードを選び、幹を本文表現に即して修正する。「抽象度(ズーム)」を合わせる。
  5. 文章化(第5回
    • 選定した要素を幹につなげ、過不足なく伝わる文をつくる。「不自然な文」から脱却する。

選択肢問題はできるのに、記述になると何も書けなくなってしまう。このような場合、まずは答えの方向を定める必要があります。第2回となる今回は、記述問題で「手が止まる」ことを乗り越えるため、「記述の木」の考え方をご紹介します。

完全な文を一気に書こうとするのではなく、まずは文の「根」を定め、次に「幹」をつくるのです。

記述の木の生やし方 その1 ~まずは「根」を定める~

子どもたちが解答用紙を前に手が止まるのは、「どこに向かって書けばいいか」が定まっていないからです。まずは設問の形式から、文の「根」、つまり語尾を決めてしまいましょう。

設問の形式:解答の語尾

  • 「なぜですか」:「〜から。」
  • 「どういうことですか」:「〜ということ。」
  • 「どんなところですか」:「〜ところ。」または「〜点。」

「根」が定まるだけで、子どもたちの意識は、漠然とした「作文」ではなく、論理的な「説明文」を書く意識へと切り替わります。

記述の木の生やし方 その2 ~答えの「幹」となる一文を作る~

次に、文の「幹」を作ります。選択肢問題が得意な子は、本文から「根拠」を探す力はあるのですが、それを自然で論理的な一文にまとめることが難しいのです。結果として、本文の言葉をただつなぎ合わせた「意味の通らない文」になりがちです。

大切なのは、「長い文の前に、まずはシンプルな答えのイメージを作る」ことです。設問に対して、言いたいことが明確な短い一文を考えましょう。

例: 登場人物が悲しんだ理由を問う設問 → 「約束を破られたから。」

この短くシンプルな文が、記述の「幹」です。もちろん、これだけでは正解にはなりません。記述問題の解答作りとは、この「幹」に対して、本文の情報を「枝」としてつなげていく作業にほかなりません。

【実践アドバイス】

自分の中に答えのイメージをつくる「5秒ルール」

今回紹介した「幹となる一文」のイメージ、これは記述だけでなく、選択肢問題でも同じように重要です。問われていることに対して自分の答えを持たなければ、それらしいことが書いてある選択肢や、なんとなく関係しそうな文中の言葉に引っ張られてしまいます。また、自分の中に根拠がないため、いくら解説を聞いても、どこが間違っていたのかを理解することができず、なかなか正答率が上がらないという結果になります。

設問を読んだ後、選択肢や本文に視線を移す前に、5秒間、目を閉じて、自分の中に答えをイメージする時間をつくりましょう。この5秒が、学習の質を劇的に高めます。なお、「5秒ルール」は、習慣になるまでは、声がけが必要です。特に、問題に取り組む前に声をかけてあげましょう。

【サポートのポイント】

「幹となる一文」が作れない場合

「幹となる一文」が作れない場合、焦りや不安などの要因によって、考える余裕がないことがあります。まずは落ち着いて、文の「根」すなわち「語尾」を確認しましょう。その際、紙に「から。」「ところ。」などといったようにメモをしてあげると、意識の焦点が定まりやすくなります。

文を作る際の技術的な問題ではなく、集中力や本文の理解など、より基本的なところからアプローチしていくのがおすすめです。

「幹となる一文」が的外れな場合

「幹となる一文」が的外れな場合、設問か本文のどちらかが読めていないかもしれません。まずは第1回の「実践アドバイス」でご紹介したように、設問に線を引くことを実践しましょう。

設問が正しく読めているのに的外れになってしまう場合は、本文が正しく理解できていない可能性があります。まずは音読がしっかりできるかを確認しましょう。また、使われている語彙や表現を正しく理解できているかを確認することも重要です。

このような読み合わせをする際は、内容をイメージできるよう、リラックスして取り組むことが大切です。理解できていないことを責めたり、速く読むよう促したりすることは避けてください。

合格答案は「ポンコツロボ」でも理解できる文

ここから先は「枝をどうつけるか」の段階です。このとき、「記述問題は自由な作文ではない」という意識を持たせるために、次のように伝えてみてください。

「記述問題を採点するのは、ポンコツロボなんだよ。このロボは本文を読んでいないから、答えの中に必要な情報が全部入っていないと分からなくなっちゃう。」

この「ポンコツロボ」は、次のようなときに煙を吐いて止まります。

  • 指示語・代名詞:「それ」「彼」など、何を指しているかがわからない時。
  • 前提情報の欠落:「〜だから。」の前に、「なぜそうなったのか」という背景が抜けている時。
  • 文法の誤り:文の主語と述語が対応していないなど、正しく理解できる文になっていない時。
  • 意味がわかりにくい:文の前半と後半の関係がわからず、何を言いたいのかがわからない時。

次回は、この「ポンコツロボでも理解できる解答」を作るために、物語文と説明文それぞれの文章のフレームに注目した情報のまとめ方を解説します。

まずは「根」と「幹」をつくる――ここから、子どもの記述力は確実に動き出します。

連載目次

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

カテゴリー: 教育コラム

リテラ言語技術教室について

menu_litera