内容の紹介
勉強ができるためにクラスから孤立してしまった周は、学校を休んで、おじいちゃんが仕事をしているスリランカへ行くことになります。
周はスリランカで、様々な人々に出会い、日本では思いもよらなかった暮らしや景色、そして、国の悲しい歴史を知ります。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- スリランカという国を知っていますか?
- あなたの身の回りには、いじめや差別といった問題はありますか?
- 人を傷つけることと「想像力」との間に、どんな関係があると思いますか。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
より深く知るために
スリランカの内戦について
「わかる! 国際情勢 スリランカ内戦の終結~シンハラ人とタミル人の和解に向けて」(外務省)
スリランカの風景(Googleストリートビュー)
考えるヒント
「想像力」について
セナは「たくさん想像できる人は、人を殺さない。悲しみが想像できるから」(109ページ)と言います。また、物事を様々な立場から見ることが大切だと教えてくれます。
- 周は、いじめの標的になります。
- 健一郎は、なぜ周を仲間外れにしようとしたのでしょうか。想像してみましょう。
- 周を無視した時、洋介は、どんな気持ちだったのでしょうか。想像してみましょう。
- 周に無視された時、加奈はどんな気持ちだったのでしょうか。想像してみましょう。
- スリランカに滞在中、洋介が、周の家を訪れます。洋介は、周に何を言いにきたのだと思いますか? 想像してみましょう。
- あなたの身の回りの誰かの気持ちについて想像してみましょう。
- あなたに嫌なことをする人は、なぜそんなことをするのでしょう。
- あなたが嫌いな人は、あなたのことをどう思っているのでしょう。
- あなたが誰かに優しくした時、その人はどう感じたでしょう。
- 「いじめ」と「戦争」の間には、どんな共通点があると思いますか?
「自由に生きる」ことについて
荒れる波に立ち向かった周は「自分の力の及ばない世界で、自由に生きる生き方を学ばなければならない」と思います。
- 「自分の力の及ばない世界」とは、戦争や紛争・差別といった、国や民族の問題だけではありません。いじめや暴力などは、あなたの身の回りでも起こり得ます。
- あなたが感じる「自分の力の及ばない世界」は、どのようなものですか。
- そうした中で「自由に生きる」とはどのように生きることですか。
- 「自由に生きる」ために必要なことは何だと思いますか。セナが教えてくれたことを思い出して、考えてみましょう。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 人とのつながり
- 共生
- 差別
- 平等
- 想像力
- 戦争
- 暮らし
この本について
2009年まで、スリランカでは、政府軍と反政府武装組織の内戦が行われていました。外務省によると、26年間の争いで7万人以上の犠牲者が出たそうです。
クラスのいじめの標的になった周は、訪れたスリランカで、いまだ民族の間に横たわる差別感情や、争いの歴史に出会います。戦争の語り部であるセナは、周に、想像力の大切さを語ります。
民族や人種など、人や物事を大まかなグループで分けて考えようとするのは、想像力が必要ありませんし、とても楽です。しかし、それは時に、差別や偏見につながっていきます。そうしたことがよくないと語るのは簡単ですが、それもまた、人や物事をおおまかに捉えているだけで、あまり意味はありません。
読書感想文でも、本当の戦争を知らない私たちが、戦争について語ることは、あまり意味をなさないと考えられます。それよりは、身近ないじめ・差別について、自分の体験を引き寄せながら考えるほうがよいでしょう。
物語の終盤、一人で波に立ち向かった周のように、大きな力に逆らい、差別や偏見を断ち切って「自由に」生きるためには、「個」として世界に立ち向かっていく勇気が必要になります。その世界とは、遠い国のことではありません。今自分がいる町・学校・家庭の人間関係の中、どのような眼差しで物事を見て、どのように生きるか、ぜひお子様と一緒に考えてみてください。
合わせて読みたい
2015年の読書感想文課題図書です。リテラでは「お話きかせてクリストフ」のページで紹介しています。ルワンダの内戦から逃れ、イギリスにやってきたクリストフ。学校にも慣れてきますが、本を読むのはどうしても好きになれません。おじいちゃんのバビが言った「お話は本に閉じこめてはいけない」という言葉を信じているからです。やがて、クリストフは、内戦を逃れ、イギリスにやってくるまでのできごとを、クラスのみんなに話すことになります。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。