【2016年読書感想文特集】『茶畑のジャヤ』中川なをみ(高学年向け課題図書)

茶畑のジャヤ: この地球を生きる子どもたち (鈴木出版の児童文学 この地球を生きる子どもたち)

内容の紹介

勉強ができるためにクラスから孤立してしまった周は、学校を休んで、おじいちゃんが仕事をしているスリランカへ行くことになります。
周はスリランカで、様々な人々に出会い、日本では思いもよらなかった暮らしや景色、そして、国の悲しい歴史を知ります。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

  • スリランカという国を知っていますか?
  • あなたの身の回りには、いじめや差別といった問題はありますか?
  • 人を傷つけることと「想像力」との間に、どんな関係があると思いますか。

読む

読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

準備する

気持ち

本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。

体験

読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

より深く知るために

スリランカの内戦について

わかる! 国際情勢 スリランカ内戦の終結~シンハラ人とタミル人の和解に向けて」(外務省

スリランカの風景(Googleストリートビュー)

考えるヒント

「想像力」について

セナは「たくさん想像できる人は、人を殺さない。悲しみが想像できるから」(109ページ)と言います。また、物事を様々な立場から見ることが大切だと教えてくれます。

  • 周は、いじめの標的になります。
    • 健一郎は、なぜ周を仲間外れにしようとしたのでしょうか。想像してみましょう。
    • 周を無視した時、洋介は、どんな気持ちだったのでしょうか。想像してみましょう。
    • 周に無視された時、加奈はどんな気持ちだったのでしょうか。想像してみましょう。
    • スリランカに滞在中、洋介が、周の家を訪れます。洋介は、周に何を言いにきたのだと思いますか? 想像してみましょう。
  • あなたの身の回りの誰かの気持ちについて想像してみましょう。
    • あなたに嫌なことをする人は、なぜそんなことをするのでしょう。
    • あなたが嫌いな人は、あなたのことをどう思っているのでしょう。
    • あなたが誰かに優しくした時、その人はどう感じたでしょう。
  • 「いじめ」と「戦争」の間には、どんな共通点があると思いますか?
「自由に生きる」ことについて

荒れる波に立ち向かった周は「自分の力の及ばない世界で、自由に生きる生き方を学ばなければならない」と思います。

  • 「自分の力の及ばない世界」とは、戦争や紛争・差別といった、国や民族の問題だけではありません。いじめや暴力などは、あなたの身の回りでも起こり得ます。
    • あなたが感じる「自分の力の及ばない世界」は、どのようなものですか。
    • そうした中で「自由に生きる」とはどのように生きることですか。
    • 「自由に生きる」ために必要なことは何だと思いますか。セナが教えてくれたことを思い出して、考えてみましょう。

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 人とのつながり
  • 共生
  • 差別
  • 平等
  • 想像力
  • 戦争
  • 暮らし

この本について

2009年まで、スリランカでは、政府軍と反政府武装組織の内戦が行われていました。外務省によると、26年間の争いで7万人以上の犠牲者が出たそうです。

クラスのいじめの標的になった周は、訪れたスリランカで、いまだ民族の間に横たわる差別感情や、争いの歴史に出会います。戦争の語り部であるセナは、周に、想像力の大切さを語ります。

民族や人種など、人や物事を大まかなグループで分けて考えようとするのは、想像力が必要ありませんし、とても楽です。しかし、それは時に、差別や偏見につながっていきます。そうしたことがよくないと語るのは簡単ですが、それもまた、人や物事をおおまかに捉えているだけで、あまり意味はありません。

読書感想文でも、本当の戦争を知らない私たちが、戦争について語ることは、あまり意味をなさないと考えられます。それよりは、身近ないじめ・差別について、自分の体験を引き寄せながら考えるほうがよいでしょう。

物語の終盤、一人で波に立ち向かった周のように、大きな力に逆らい、差別や偏見を断ち切って「自由に」生きるためには、「個」として世界に立ち向かっていく勇気が必要になります。その世界とは、遠い国のことではありません。今自分がいる町・学校・家庭の人間関係の中、どのような眼差しで物事を見て、どのように生きるか、ぜひお子様と一緒に考えてみてください。

合わせて読みたい


2015年の読書感想文課題図書です。リテラでは「お話きかせてクリストフ」のページで紹介しています。ルワンダの内戦から逃れ、イギリスにやってきたクリストフ。学校にも慣れてきますが、本を読むのはどうしても好きになれません。おじいちゃんのバビが言った「お話は本に閉じこめてはいけない」という言葉を信じているからです。やがて、クリストフは、内戦を逃れ、イギリスにやってくるまでのできごとを、クラスのみんなに話すことになります。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。
この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ブックレビュー

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