内容の紹介
遺伝子の異常のため、人と違う容姿を持つオーガスト。十歳になり、初めて学校に通うことになります。そこで直面する偏見と好奇の目、そして、人の優しさと、結ばれていくきずな。オーガストは、家族の愛情とクラスメイトとの友情に支えられ、傷つきながらも、強くなっていきます。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- あなたは、自分の顔が好きですか。
- あなたは、どんな人間になりたいですか。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
考えるヒント
格言について
物語の最後に、たくさんの「格言」が載っています。
- オーガストたちは、「ブラウン先生の格言」について、毎月短い文章を書きます。
- オーガストやジャックは、それぞれの月の格言について、どんなことを書いたと思いますか。物語の進行とその月の格言を比べ、想像してみましょう。
- 「ハガキで届いた格言」から、好きな格言をひとつ選んでください。
- なぜその格言を選んだのですか。
- その生徒は、なぜその格言を書いたのだと思いますか。
- その格言について、あなたも、文章を書いてみましょう。この物語に関わることでも、自分の体験に関わることでも構いません。
人とのつながりについて
- あなたのクラスには、「イケてるグループ/イケてないグループ」といったようなものはありますか。
- もしあるのなら、あなたはそれについて、どう感じていますか。
- あなたは、友だちと、どのようなつながりを持ちたいと思いますか。
- どうしたら、そうしたつながりを持てると思いますか。
親切と強さについて
トゥシュマン先生は、修了式でスピーチをします。
- 「必要だと思うより、少しだけ余分に親切に」することの大切さを、トゥシュマン先生は話します。
- この言葉から、この物語の、誰の、どんな行動が思い浮かびますか。もちろん一人でなくても構いません。
- この言葉から思い出す、あなたの身の回りの人は誰ですか。また、その人は何をしましたか。
- あなたは、「必要だと思うより、少しだけ余分に親切に」したり、されたりしていますか。
- トゥシュマン先生は、「人間には、親切である能力だけでなく、親切であろうとすることを選ぶ能力もあります」と語ります。
- あなたは、「親切であろうとすること」を選んでいると言えますか。
オーガストは、「ヘンリー・ウォード・ビーチャー賞」を受賞します。
- トゥシュマン先生の言う「静かな強さ」とは、オーガストのどのようなところを指しているのでしょうか。
- 「静かな強さ」を持っている人は、あなたの身の回りにいますか。
- オーガストの「静かな強さ」を支えるものは、何だと思いますか。
「奇跡」について
- この本のタイトル『ワンダー(Wonder)』には、「驚くべきこと、奇観(珍しい眺め)、奇跡」といった意味があります。このタイトルが何を表しているのか、考えてみましょう。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 人とのつながり
- 仲間
- 個性
- 優しさ
- 友情
- 家族
- 愛情
- 成長
この本について
自分が思っている「私」の姿と、相手が見ている「私」の姿。その間には、少なからずズレがあります。この物語の主人公であるオーガストは、人とは違う容姿から、そのズレが何倍にも広がっています。自分は自分であるだけなのに、人から恐れられ、不安がられ、無視される。その孤独や絶望を想像することは到底かないませんが、それでも物語の雰囲気が暗くならないのは、オーガストの心の強さと、それを育て支えてきた家族の愛情があるからでしょう。
オーガストは、ストレートに怒ることができます。決して卑屈にならず、嫌なものは嫌だと言うことができます。怒りや悲しみを愛情で包んでくれる両親。代わりに怒ってくれる姉。ジョークを言い合えるクラスメイト。そうした人々の優しさやまっすぐな眼差しが、オーガストを、人々の偏見に負けない「普通」の男の子にしています。
外見やクラス内の人気ばかりを気にするジュリアンたちと、内面でつながっているオーガストやジャック、サマーたちの関係は、対照的です。ちょうどオーガストと同じくらいの年頃から、子どもたちは、両親から独立した「自分」を模索し始めます。自分というものをどのように捉え、人間関係の中で形作っていくのか、その最初の試練が訪れるのです。クラス内での立場や、人からどう見られるのかがとても切実な問題になっていくのですが、そうした「スクール・カースト」に惑わされずに信頼関係を結び、しかもそれを広げていくことのできたオーガストは、とても幸せであったと言えます。オーガストが「ただ五年生を無事に終えただけなんだけど、それって、かんたんなことじゃないんだよね。べつにぼくじゃなくても」と感じたように、こうした不安と成長の時期は誰しもに訪れます。
オーガストの強さとは、「ぼくがそのままのぼくで」いられること。しかしその強さは、一人でつくり上げることはできません。あなたがあなたであることを、そのまま肯定してくれる。そんな存在がいてくれる限り、私たちは、孤独や不安の中でも生きていくことができます。
合わせて読みたい
クラスで仲間はずれになったデーヴィッド。いじめっ子に流されて、あるおばあさんの杖を盗んでしまいます。おばあさんに「顔をなくしてしまう呪い」をかけられてから、不幸の連続。デーヴィッドは、ちょっと変わった友だちのモーやラリーと、顔を取り戻すための方法を探り始めます。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。