【ワークショップ報告】白い小さな椅子を作ろう

リテラでは、体験を元に生きたことばを紡ぐためのワークショップを随時開催しています。今回は7月14日(日)、7月15日(海の日)に、『白い小さなイスを作ろう』ワークショップを開催し、1年生から4年生の子どもたちが参加してくれました。

大人の力を借りずに自分で説明書を読み、組み立てていく。子どもたちの好奇心をくすぐる楽しいワークショップの内容をご報告します。

文章のない説明書!? ユニバーサルデザイン

自分で作ったイスを嬉しそうに持つ生徒さんたち

自分で作ったイスを嬉しそうに持つ生徒さんたち

今回、教材として使用したイスは、スウェーデン発の家具メーカーIKEAの子供用チェア「SUNDVIK」です。

IKEAの組み立てマニュアルには、文章が書いてありません。部品も組み立て工程も、すべてイラストで説明されています。その理由は、言語の違いに関わらず、どのような人が見てもわかるように作られているからです。IKEAは欧米をはじめ、アジア、アフリカと世界44カ国に広がるグローバル企業です。すべての国の言葉で説明書を作るとそれだけで手間やコストがかかってしまいます。そこで、文章のない、イラストで全てが分かる世界共通のマニュアルをつくり、流通させているです。「言語の違いに関わらず」ということは、広げて考えてみると読み書きを学んでいる子どもたちにとっても理解しやすい説明書であるともいえます。こうした、できるだけ多くの人が利用可能であるよう配慮された設計のことを、「ユニバーサルデザイン」といいます。

イラストを読解し、実行し、文章にする

説明書にメモを書き込む生徒さん

説明書にメモを書き込む生徒さん

このイラストが描かれたマニュアルに、組み立て方を言葉にして書き込んでいき、作文を完成するところに学習の目的があります。正しい書き言葉を習得するためには、自らが体験したことを第三者に文章で説明する作文を書くことが効果的です。そのため「マニュアルを見なくても組み立てられるように、言葉で説明してみよう」と子どもたちにアドバイスをしています。子どもたちは、説明書の絵を見ながらどんどん組み立てていきます。一つ一つ工程を行うごとに、その内容を詳しくメモしてくれました。

イスも文章も「組み立てる」もの

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イスのようにいくつかの部品を組み立てる作業というのは、部分と全体との関係を理解するのに効果的です。それぞれの部品は、私たちが「座る」という目的のためにあるイスにとってどのような役割があるのかを意識するのです。各部分の役割を知ることで、似たものとの比較がより正確にできたり、全体としての機能(システム)の理解にも繋がっていきます。

また、部分と全体の理解は、実は文章技術とも深く関わっています。文章も「構成」するというように、段落同士がどのように関係し合っているのかを理解しながら読むこと・書くこと非常に重要です。イス作りは、こうした部分と全体の関係性を意識するという点も言葉の学びと相性が良いのです。

生徒たちの書いた作文

「いすをつくるのは、むずかしいよ!」
二年生・Kさん

七月十五日、リテラで、白い小さないすをつくりました。

このいすは、四つのパーツでできています。一つ目は、せもたれです。二つ目は、ざめんです。三つ目と、四つ目は、左右のそくめんのパーツです。そくめんのパーツは、前きゃくと、後きゃくと、ぬきと、ざわくでつくられています。

くみたてるのにつかうのは、六かくねじを六本と、ダボを四本と、六かくレンチです。六かくねじは、パーツをつなげるねじです。ダボは、パーツをささえるものです。六かくレンチは、六かくねじをしめるものです。

いすのつくりかたをせつめいします。まず、せもたれの、左右のあなに、ダボを二本ずつさします。そして、せもたれのパーツを、そくめんのパーツにつなげます。つぎに、ざめんを、そくめんのパーツの前きゃくと後きゃくにつけます。それから、もう一つの、そくめんのパーツを、ざめんと、前きゃくと、後きゃくと、せもたれにつけます。さらに、そくめんのパーツの前きゃくと後きゃくと、せもたれを、六かくねじでとめます。さいごに、はんたいがわもおなじように、六かくねじでとめます。

ダボだけだと、パーツがしっかりくっつかず、すぐにはずれてしまい、おさえながらくみたてるのがむずかしかったです。だから、しっかり、おさえてやったほうがいいとおもいます。でんどうドライバーをつかったときは、「スー」や、「グー」という大きな音がなり、まわす力もつよくて、もちにくかったです。

ダイニングチェアーとくらべてみました。ダイニングチェアーのほうが、大きかったから、少しだけ重かったです。小さないすは、小さいからかるかったです。白い小さないすは、ざめんがひくくて、足がつくからすぐにすわれます。けれど、ダイニングチェアーは、ざめんが、たかいので、すぐにはすわれないです。

わたしは、このいすを、自分のへやができたら、白い小さなテーブルといっしょにおきたいです。

「白い小さなイス作る」
四年生・Nさん

七月十五日、リテラで、私は、白い小さなイスを作りました。

この椅子は、四つのパーツからできています。一つ目は、せもたれです。二つ目は、座面です。三つ目と四つ目は、左右のそく面です。そく面パーツは、前脚と後脚が座わくと貫でつながれています。

組み立てるときにつかった物は、六角ねじとダボと、六角レンチです。六角ねじは、パーツをしっかりつけるためのものです。ダボは、部品をかりどめしておくためのものです。六角レンチは、六角ねじをしめるためのものです。

では、イスの作り方を紹介します。まず、せもたれの左右のあなに二本ずつダボをさしこみます。そして、せもたれのパーツをそく面の後脚のダボにいれます。次に、座面をそく面のパーツの前脚と後脚にいれます。それから、左側のそく面を、座面とせもたれにさしこみます。さらに、六角ねじで、そく面のパーツの左側に、座面とせもたれをとめます。最後に、六角ねじで、そく面のパーツの右側に、座面とせもたれをとめます。

作っていてむずかしかったところは、六角ねじをしめるときに、力をいれなければならないところです。だから、一人で力をいれてもむりなときは、友だちやかぞくと協力してやったほうがいいとおもいます。

ダイニングチェアーとすわりごこちをくらべてみました。ダイニングチェアは、ふかくこしをかけると、足がつかなくなるけれど、白い小さいイスは、ふかくこしかけても足がついてよかったです。子どもでも足がつくので、おちなくて安全です。

私は、このイスを今度できる自分のへやにおきたいと思っています。

「イスを作るのにたいへんなこと」
四年生・Hさん

七月十五日に、私は教室で『白いイスをつくろう』に参加しました。

このイスは、四つのパーツからできています。一つ目は、せもたれです。二つ目は、座面です。三つ目はと四つ目は、左右のそくめんのパーツです。そくめんのパーツは、後脚と前脚と座わくとぬきからできています。後脚と前脚は、座わくとぬきによってつながれています。

くみたてるのに使った物は、六角ねじとダボと六角レンチです。六角ねじは、しっかりと木と木を止めるものです。ダボは、木と木をかりどめする物です。六角レンチは、六角ねじをしめるものです。

では、作り方をしょうかいします。まず、せもたれのよこのあなにダボ四本をさしこみます。そして、それをそくめんの後脚にさしこみます。次に、前脚と後脚にあいているあなにざめんをさしこみます。それから、もう片方のそくめんのパーツをつけます。そして、六角ねじを片方の側面パーツの三カ所のあなにさしこみ、六角レンチやドライバーでしめます。最後に、同じようにもう片方のあなに六角ねじをさしこみ、ドライバーを使ってしっかりとしめあげをします。

作ってみてむずかしかったところは、一人で説明書を見て作り上げるところです。パーツのうらおもてを逆にしてしまうと、へんてこなイスになってしまうのできをつけましょう。

座ってみると、ダイニングチェアーよりも、作ったイスの方がほんのすこしやわらかかったです。ダイニングチェアーは、足が地面にとどかないけれど、作ったイスだととどくので楽でした。

さわりごこちは、ダイニングチェアーよりも、つくったイスの方がザラザラでした。

大変だったけれど、楽しく安全にできてよかったです。私はこのイスを、子どもべやにおいて、家族でつかって、いっしょうの思い出にしたいです。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: ワークショップの報告

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