【2017年読書感想文特集】『円周率の謎を追う: 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』鳴海 風 作(中学生向け課題図書)

円周率の謎を追う 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦





内容の紹介

関孝和(せき たかかず)は、江戸時代の数学者です。数学の楽しさにとりつかれた孝和は、御用(役人としての仕事)に励みながら、一生をかけて円周率の謎を追い続け、日本の数学のレベルを飛躍的に高めました。この本では、謎の多い孝和の生涯を、想像力豊かに描き出します。

読む前の下ごしらえ

考えてほしいこと

読む前に、次のことを考えてみましょう。

合わせて知りたい

関孝和について

1992年発行 関孝和の記念切手

関孝和(せき たかかず・こうわ)の記録はほとんど残っておらず、どのような生涯を送ったのか、よくわかっていません。

孝和は、内山七兵衛永明の第二子として生まれ、20代で関五郎左衛門の養子となり、関孝和と名乗りました。

幕府の財政関係の職務につく役人であると同時に、孝和はすぐれた数学者でもあり、それまでの和算における計算方法とは一線を画す「点竄術」という計算方法を発明しました。これによって複雑な計算を行えるようになり、日本の数学の水準が飛躍的に高まりました。

1708年に亡くなりましたが、その業績は弟子の建部賢弘や荒木村英らに受け継がれ、後世の人々に「算聖」とあがめられました。

和算について

和算は日本で発達した数学であり、特に江戸時代に大きく発展しました。

『改算塵劫記』。国立科学博物館の展示。(撮影:Momotarou2012)

当時、計算には、中国大陸から伝わってきたそろばんが使われました。その普及に大きく役立ったのが、1627年に刊行された、吉田光由の『塵劫記』でした。『塵劫記』には、そろばんの使い方だけでなく、さまざまな数学の問題が載っており、人々の数学への興味をかきたてました。

『塵劫記』に続き、数学の問題を紹介する本が続々と刊行され、問題のレベルも上がっていきました。江戸時代の数学者たちは、より難しい問題に対応できる技術を求め、13世紀末に中国で刊行された『算学啓蒙』という数学書で紹介された「天元術」という計算方法を研究し、理解を深めていきました。

『発微算法』(複製)。1674(延宝2)年刊。 関孝和著。国立科学博物館の展示。(撮影:Momotarou2012)

その「天元術」をさらに飛躍させたのが、関孝和でした。彼が開発した「傍書法」(独自の記号法)により数式の表現の幅が広がり、日本の数学はより高度に発展していきます。

関孝和を祖と仰ぐ数学者たち(関流)は、明治時代に洋算(西洋の数学)が輸入されるまで、その後も活躍を続けました。

算額について

金王八幡宮の算額。渋谷区指定有形民俗文化財。安政6年(1859年)奉納。(撮影:Momotarou2012)

「算額」とは、神社仏閣に奉納された、数学の問題が書かれた絵馬です。数学者や数学愛好家たちは、全国各地の寺社に算額を掲げ、自分の成果を発表しました。算額を奉納することは、印刷物を刊行するよりも、手軽に人々の関心をひくことができたのです。

算額に問題を書いて奉納し、それを見たものがその回答をまた算額にして奉納するといったことも行われました。

円周率について

円周率とは、円の周の長さの直径に対する比率、すなわち「円周の長さ ÷ 直径の長さ」のことで、中学校以降では「π」で表されます。

円はすべて大きいか小さいかの違いのみ(相似形)ですから、すべての円で円周率の値は同じになります。
小学校では「3.14」と習いますが、実際には「3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 …」と無限に続きます。

Author:Leszek Krupinski


円周率の求め方は様々ありますが、古くから、円に接する多角形からその値を割り出そうとする試みが行われていました。

1681年頃、関孝和は、正131072角形を使って小数第11位まで算出しました。もちろん、正131072角形の長さを実際にはかったわけではありません。関は「増約術」を考案し、少ない手順で、ある数に限りなく近づいていく数列の値を割り出したのです。この「増約術」は現在「エイトケンのΔ(デルタ)2乗加速法」として知られているものと同じであり、西欧における発見よりも200年も早いものでした。

その後、関の弟子である建部賢弘は、関の使った「増約術」を工夫した「累遍増約術」を用い、より少ない手順で、円周率を40桁まで求めました。

20世紀中頃から円周率の計算は計算機を使ったものとなり、2016年には22兆を越える桁数が計算されています。

読む

読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。

準備する

気持ち

本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話のヒントになります。

体験

読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。

考えるヒント

「知る」ことと「わかる」こと

孝和は、『塵劫記』の問題にただ解答できても、ほんとうに解けたような気がしません。先生の柴村盛之は「世の中には考えることが苦手で、覚えてしまえばそれでよい、よくわかっていなくてもこたえられたらそれでよい、と思っている者が多い」(p.14)と言います。また、大阪の数学者橋本正数からは「孝和どのは、納得できないものは、とことん考えようとしている。よいことだ」(p.95)と言われます。

  • あなたには、知っているけれど、それがなぜなのか説明できないことはありますか。
  • あなたには、納得するまでとことん考えたことや、考えてみたいことがありますか。それはどんなことですか。
「したいこと」と「するべきこと」

孝和は、好きな数学と、御用との間で板挟みになります。

  • あなたには、「したいこと」と「するべきこと」がありますか。それはどんなことですか。
  • なぜ、それを「したい」と思うのですか。
  • なぜ、それを「するべきだ」と思うのですか。

孝和に厳しく接する兄・永貞もまた、かつて数学を修行していました(p.79)が、御用のため数学の道をあきらめました。沢口一之は、御用も数学も「どちらも大切です。だからどちらも全力でやります」(p.37)と言います。

  • あなたは、「したいこと」と「するべきこと」を両立できていますか。
  • どのように両立していますか。あるいは、どうすれば両立できると思いますか。

孝和の興味のなかった漢文の勉強が、漢文で書かれた数学書『竪亥禄』を読み解くのに役立ちます(p.81)。また、漢文は、孝和独自の方程式の表現方法「傍書法」の発想にも役立ちます(p.171)

  • あなたには、学ぶ意味がわからない教科や、する意味がわからないことがありますか。
  • 関係がないと思っていた技術や知識が、思わぬところで役に立った経験はありますか。
「道を切り開く」ということ

香奈は「人はだれでも自分の思うようには生きられません。(中略)でも、数学の世界というのは、自分で自分の道を、自由な発想で切り開いていけるのです」(p.159)と手紙に書きます。孝和は「自由」ということばが気に入り、自らの号を「自由亭関孝和」とします。

  • 孝和は、なぜ「自由」ということばが気に入ったのだと思いますか。
  • 「自由な発想で」道を切りひらくためには、どのような考え方(考える姿勢)が大切になると思いますか。

先生の柴村盛之は「御用第一につとめてきたからだ。むずかしい仕事からにげたり、いいかげんに取りくんだりしなかったからだ。それが、自分のもっともやりたいこと、好きなことへもよい影響を与えている」(p.166)と言います。

  • 「するべきこと」にしっかり取り組むことが、なぜ「やりたいこと」にもよい影響を与えるのだと思いますか。
  • あなたの将来の「道を切り開く」ために、あなたが「するべきこと」は、どのようなことですか。

保護者の方へ

上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。

読書感想文を通して考えてほしいテーマ

  • 「知る」ことと「わかる」こと
  • 「したいこと」と「するべきこと」
  • 「道を切り開く」ということ

この本について

江戸時代、日本の数学を世界レベルにまで飛躍させた関孝和。前述の通り、彼の生涯のついての記録は、ほとんど残されていません。ですから、この本は、関孝和の「伝記」というよりも、関孝和をモデルとした「物語」と捉えたほうがよいでしょう。

この本の中で、関孝和は、「するべきこと」=御用と、「したいこと」=数学 の間で悩み、成長していきます。この本を読むみなさんにも、「するべきこと」と「したいこと」があり、両立させるのが難しいと感じたことがあるのではないでしょうか。

関孝和の師である柴村盛之は、「するべきこと」にしっかり取り組むことが、「したいこと」にもよい影響を与えていると言います。わたしたちは、物事を単純化し、どちらか一方しか取れないと思い込みがちです。しかし、孝和が興味のなかった漢文をヒントに、画期的な「傍書法」を思いついたように、物事の分野を自由に飛び越え、つなげることで、新しい価値が生まれることがあります。

これは、みなさんの将来とも無縁ではありません。今後、グローバル化や技術の革新が進むと、仕事の専門性が増していくと予想されます。そこで求められるのは、専門領域を飛び越え、つなげ、新しい価値を生み出せる人材です。

みなさんも「したいこと」と「するべきこと」をつなげ、何か新しいものが生み出せないか、考えてみて下さい。まだ世界で誰も気づいていない、新しい価値が生まれるかもしれません。

合わせて読みたい

『天地明察』

碁打ちの名門に生まれた晴海は、自らの境遇に飽き、算術の道に生きがいを見出していました。当時使われていた宣明暦にずれが生じ、改暦の実行者として選ばれた晴海は、算術と天文を探求し、日本独自の暦を作ることに人生を賭けます。そんな晴海を驚嘆させ、はるか高みにいるライバルとして、関孝和が描かれます。

『算法少女』

1775年に出版された『算法少女』は、当時では唯一、女性名義で刊行された和算書です。ここで紹介するのは、和算書『算法少女』を題材にした小説『算法少女』です。一度絶版になりましたが、多くの人々の熱心な支持により、2006年、30年ぶりに復刊した名作です。

『天才の栄光と挫折―数学者列伝』

数学者である著者が、関孝和を含む世界の著名な数学者9名の生涯に迫ります。そこで見えてくるのは、偉業の影に隠れた苦悩と孤独でした。天才と呼ばれた人々も、私たちと変わらない一人の人間として悩み、生きたことを感じさせてくれる一冊です。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。





2017年 その他の課題図書

随時追加していきます。

2017年 夏期講習

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