中学受験に向けて、小学校高学年(小5~小6)に心がけたいこと:学びを深め、心の成長をサポートする

中学受験を見据えた小学校高学年(小5~小6)は、学習を深めると同時に、心の成長を支える大切な時期です。この時期の過ごし方は、受験の結果だけでなく、その後の成長にも大きな影響を与えます。ご家庭で心がけたいポイントを解説します。

「自分を知る」力の重要性

「自分を知る」というのは意外なテーマかもしれません。しかし、思春期・受験期には、とても重要な課題となります。

自分の思考や理解度を知る

  • 選択肢問題で、問われていることを理解しないまま選択肢を読み、何となく無難なものを選んでしまう。
  • 記述問題で、何を書いたらいいのかわからない。あるいは、それらしい文章を抜き出しでつないで文が破綻してしまう。
  • 算数文章問題で、問題に出てくる数字をなんとなく足したりかけたりしてしまい、自分でもなぜその計算をしたのかわからない。

このようなことはありませんか?

自分の思考や理解度を知ることは、受験本番を想定した応用問題に対応するために、必要不可欠です。基本的な問題は、何も考えずに計算したり、抜き出したりすればよいものが多いのですが、応用問題は、そうはいきません。すぐにわかる問題ばかりではなく、試行錯誤をして答えを導く問題や、自分の答えをイメージして言語化しなければならない問題が増えてきます。

自分が今何をしているのか、どこがわかってどこがわからないのかなど、自分の思考や理解度を自分で認識しなければ、上のようなミスが繰り返されることになります。

自分の心身の状態を知る

本番に強くなるためには、自分の心身の状態を知る必要もあります。子どもたちは、まだ自分の状態を正しく認識することができないことがあります。認識にズレがあると、テストの際に次のようなことがよく起こります。

  • うっかりミスが目立つ
  • 本番ではなぜかできない
  • 読めない字を読めると言い張る(指摘すると怒る)
  • お腹が痛くなってしまう
  • ウトウトしていたのに眠くないと言う

本番が近づくにつれ、不安や緊張が高まるのは自然なことです。そうした自分を否定する、あるいは気づかないままにテストに臨んでしまうと、ご自分の意識の外でさまざまなミスが起こります。特に、子どもたちは周囲の大人たちの期待に応えようとし、そうできない自分を認めないことがあります。

受験期のサポートの方向性

自分を知るもうひとりの自分の視点は、思春期にかけて育まれていきます。自分を把握しコントロールできるようになるまでには、一人ひとりのペースがあり、その成長を管理することはできません。子どもたちがありのままの自分を捉えることができるようになるためには、まずは周囲の大人たちがありのままの子どもたちを認めなければならず、それは受験期でも変わりありません。

そのため、受験期は、自分の思考や状態を「知る」ことに重点を置いたサポートが求められます。

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書くべき単位を書き忘れた、問題を読み間違えた……。どうしたらうっかりミスをなくせるのでしょうか。残念ながら、今すぐうっかりミスをなくすことはできません。けれど、減らすことはできます。今回は、うっかりミスを減らすための、短期的・長期的なサポートについて考えていきます。

学習面のポイント:正しい問題の解き方を身につける

受験期に伸び悩む原因の一つが、「問題の意図を捉えきれない」ことです。何を問われ、どう答えるのかがずれてしまうと、答えの方向性はあっているけれど正解にならないことが増えてしまいます。そのため、次のポイントを意識しましょう。

なお、これらは極めて基本的なことだと感じるかもしれません。しかし、テスト本番、時間制限や重圧の中でこれらの基本を実行するのは、容易ではありません。普段から意識し、習慣化することが、大きな差を生みます。

1. 設問文をじっくりと読む

設問の文章をよく読むことは、ほとんどの子ができていないことの一つです。たとえば、国語では、文章そのものはよく読めていても、設問の文章をほとんど読まずに、選択肢の検討に入ってしまうことがあります。聞かれていることが何か曖昧なまま、何となく答えを選んでしまう結果、回答の精度が落ちてしまうのです。ですから、文章そのものの読解と同じくらい、「設問の読解」を意識することが大切です。

2. 答えをイメージする練習をする

設問を読んだら、次には自分の答えをつくらなければなりません。しかし、ここでも子どもたちは、答えのイメージがないまま、とにかく文字数の合う語句を探したり、選択肢を選んでしまったりします。設問を読んですぐに選択肢を選ぶのではなく、問いに対する自分なりの答えを、5秒でいいのでイメージし、自分の中に答えをつくりましょう。この5秒が、正確な回答につながります。

3. 図やメモを活用する

設問の読解がすぐにできないときは、提示された条件を図や表に整理して視覚化するとよいでしょう。特に算数では、線分図や概略図などを活用しましょう。また、答えのイメージがすぐにまとまらない場合も、図やメモが役立ちます。作文課題などは、いきなり書き始めず、テーマを捉え、論理の骨組みをメモすることで、一貫した内容になります。

設問との対話

試験問題はそれを作った人がおり、回答者に考えてほしいことがあります。たとえば、よくできた国語の試験問題であれば、設問を考えていくにしたがって、文章のテーマが理解できるようにデザインされています。このような「問題の意図」を捉えることが、点数を安定させるためには必要不可欠なのです。

こうした問題解決のプロセスは、答え合わせを繰り返すだけの指導ではなかなか身につきません。その子がテスト中にどのような手順で解いたか、どのような精神状態だったかを細かく共有し、話し合うことで、子どもたちは少しずつ設問との対話を学んでいきます。

心のケア:お子さまの心と体の健康を見守る

受験期のプレッシャーは、お子さまの心身に影響を与えることがあります。また、思春期・反抗期が重なると、日々変化するご家族との距離感と受験への焦燥感の中で、自分がコントロールできなくなってしまうことも少なくありません。次の点に注意し、お子さまの心と体の健康を守りましょう。

1. 自分の状態を知るサポートをする

子どもたちは、まだ自分の状態を正しく認識できないことがあります。疲れや不安があるにも関わらず、それを無視してしまうと、強い眠気や腹痛など、体の不調となって表れることがあります。「疲れてない?」「不安なことはない?」と優しく声をかけるだけでも、お子さまが自分の状態を理解する手助けとなります。

2. 無理をさせすぎない

受験期はどうしても勉強時間が増えがちですが、睡眠時間や運動不足は、心身の不調を招きます。学習に集中できず理解が疎かになり、それを巻き返そうとまた勉強時間が増え、疲労がたまるという悪循環にとらわれないよう、無理のないスケジュールを組みましょう。ホームワークや課題が多すぎるようなら、保護者の権限でそれらを一部カットすることも視野に入れましょう。お子さまの健康が何より大切です。

3. 安心できる環境をつくる

本番が近づくにつれ、周囲の友達や家族からも余裕がなくなっていきます。安心できるはずの友達や家族との関係がうまくいかなくなると、その孤独感は、大人が思うよりもよほど深刻なものとなります。ほっとできる時間や、話し合える時間をつくりましょう。本番に臨むのは、お子さま自身です。大人のもどかしさや焦りはひとまず措いて、お子さまの成長によい形でつながる受験を目指しましょう。

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受験、特に中学校受験は、結果が読みにくい。合格圏にいて大丈夫だろうと思われていた子が不合格であることも、あるいはその逆も、ざらにある。不安や緊張の中、実力を発揮することは、大人でも難しい。何年も頑張り続けてきた努力が、数時間のテストで判断されてしまう「受験」という制度自体、まだ精神的に発達途上の子どもたち、特に小学生にはなじまないのではないかと思うが、さりとて他に方法もなく、今年も受験シーズンがやってくる。

受験後も続く成長を視野に入れる

受験後も、お子さまの成長は続き、より高く飛躍するチャンスも何度も訪れます。未来のための学びが、その成長を阻むものであってはなりません。本番が近づくと、周囲の雰囲気も緊張をはらんだものとなりますが、そんな時こそ、安心して自分でいられる環境が必要です。お子さまの心身の状態や、睡眠時間などのスケジュールに気を配り、自信を持ってテストに臨めるようにしましょう。

学校は通過点であり、その先にはより広い世界が広がっています。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 教育コラム

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