【2025年読書感想文特集】『ふみきりペンギン』おくはら ゆめ 作・絵 (小学校中学年向け課題図書)

こんな子におすすめ!

  • 「ふつう」について考えている子
  • 想像力豊かな物語が好きな子
  • 自分らしさを大切にしたい子
  • 友だちとの関係に悩んでいる子
  • 不思議な体験に興味を持つ子
  • 不思議な体験をしたことがある子
  • 自分の暮らすまちのなかで好きなところがある子

本の紹介

小学3年生のゆうとは、ふみきりでペンギンの話を聞く。るりは、白いヘビのうわさを確かめたい。ななこは、鏡のなかのライオンと会う。そうすけは、天気占いをするフクロウが見える。「ふつうってなんだろう?」という不安な気持ちにたいして、決めつけず、気にせず、それぞれの子どもたちの自分らしさを肯定する。おくはらゆめの作絵による、やさしい物語。

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本の解説

『ふみきりペンギン』は、おくはらゆめさんによる文学的な深みと象徴性に富んだ心温まる物語集です。日常の中で不思議な出来事に出会う4人の子どもたちを通して、「ふつうとは何か」という問いかけをやさしく投げかけています。

象徴性豊かな物語

まず主人公のゆうとは、通学路の踏切で不思議なペンギンと出会います。5匹のペンギンたちは群れ行動する大勢の人々や、ゆうとが行きたいと願う世界を象徴しているようです。踏切という場所は心の扉を表しているのかもしれません。るりは公園遊具の白いヘビの噂を聞き、その真相を確かめようとします。ななこは古い鏡の中にライオンを見つけ、そのライオンとの不思議な交流が始まります。そうすけは図書館に現れるフクロウが下駄天気占いをすることに気づきます。

子どもたちの成長

それぞれの子どもたちは物語を通じて成長していきます。ゆうとは左利きという「他の人と違うこと」を気にしていましたが、ペンギンたちとの出会いを通じて、自分のことを見つけてくれる人がいることや、家族が自分を無条件に愛してくれることに気づきます。るりは、ななこに執着していましたが、一人で公園に行き、さまざまな人を観察するなかで世界が広がります。ななこは、鏡の中のライオンとの出会いを通じて、忘れていた不思議な話が好きだった自分と再会します。そうすけは、あだ名で呼ばれることを嫌がり自分の世界に閉じこもっていましたが、フクロウの下駄占いをきっかけに、ゆうとに心を開いていきます。

読書感想文のヒント

読む前に考えてみよう

  • あなたは「ふつう」とはどういうことだと思いますか?
  • 友だちと違うことをして「変だ」と思われたことはありますか?
  • 不思議な生き物や出来事を見たり体験したりしたことはありますか?
  • 自分だけが知っている秘密や、自分だけの特別な場所はありますか?
  • もし現実には存在しない生き物と話せるとしたら、何を話したいですか?

考えを深めるための質問

  • ゆうとがペンギンの話を信じるのはなぜだと思いますか?
  • るりとななこは不思議な体験をお互いに話していますが、ゆうととそうすけは自分の心の中に留めています。その違いはなぜだと思いますか?
  • 物語の中で、子どもたちはそれぞれどのような気持ちの変化がありましたか?
  • 「ふつう」という言葉を気にする理由は何だと思いますか?
  • 5匹のふみきりペンギンたちは何を象徴していると思いますか?
  • また、踏切という場所はどのような意味を持っていると思いますか?
  • 5番目のペンギンがゆうとの左利きを「カッコいい」と言ったことの意味は何だと思いますか?
  • ゆうとは踏切が開いたら、ペンギンに挨拶をしようと思ったのはなぜでしょうか?

考えてほしいテーマ

  • 個性と自分らしさ
  • 想像力と現実
  • 友情と信頼
  • 「ふつう」と「特別」の境界線
  • 秘密と共有すること
  • 不安と勇気
  • ギャップの魅力

この物語には魅力的なギャップを持つキャラクターがたくさん登場します

  • ライオン:オスだけれどおしゃれが好きで、たてがみを三つ編みにして鏡の前で笑い、ななこにウインクする愛らしい姿
  • 白いヘビ:一見怖そうなのに、るりにとってはお姫様のような存在で、やさしくほほをなめてくれる
  • フクロウ:知恵の象徴なのに、図書館で天気占いをして遊び、勉強しているそうすけを外へ導く
  • 図書館員のいなばさん:大人なのに子どものように不思議なことが好きで、子どもたちの話に耳を傾けてくれる
  • そうすけ:勉強ができるまじめな子なのに、面白いことを言い、おならの詩で金賞を取る

理解を深めるために

おくはらゆめさんは、子どもたちの繊細な心の動きを描くのが得意な作家です。幻想的な要素を取り入れながらも、子どもたちの日常生活や心理をリアルに表現しています。この物語の登場人物たちは、自分だけの特別な体験を通して成長していきます。

この作品で特に注目したいのは、登場する不思議な生き物たちの象徴性です。ペンギン、白いヘビ、ライオン、フクロウという登場生物たちは、実は子どもたちの心の一部を反映しているようにも読み取れます。そうすけの見るフクロウの下駄天気占いが「ずっと雨」なのは、彼の心模様を表していると考えられます。

合わせて知りたい

物語に登場する場所の象徴性

  • 踏切:現実と非現実、日常と非日常をつなぐ境界線。心の扉や人生の分岐点を象徴している可能性があります。
  • 図書館:知識や物語が集まる場所であると同時に、静かで内省的な空間。そうすけにとっては避難所のような存在でもあります。
  • 公園:るりが様々な人々を観察する場所。社会の縮図であり、多様性を学ぶ場所です。
  • :自己と向き合う場所。ななこにとっては過去の自分や本当の自分と出会う入り口になっています。
  • トイレ:プライベートな空間。誰にも見られずに自分だけの時間を過ごせる場所です。

登場する動物たちのシンボル的な意味

  • ペンギン:群れで行動する社会性と、一見すると同じように見えるが実は個性があること。陸と海という異なる世界を行き来できる特性は、ゆうとが渡りたい「別の世界」を象徴しています。
  • 白いヘビ:日本の民話では神の使いとされ、幸運をもたらすとされています。るりにとっては美しさや神秘性の象徴であり、自分の内なる強さを表しているのかもしれません。
  • ライオン:通常は力や勇気の象徴ですが、この物語では「おしゃれを楽しむ」というギャップを持っています。ななこの抑圧された自己表現や、周囲の目を気にしない自由さを象徴しています。
  • フクロウ:伝統的に知恵や洞察力の象徴。そうすけの内面の天気(心模様)を映し出す存在です。図書館という知識の場にいることも象徴的です。

合わせて読みたい

『びりっかすの神さま』岡田淳 著(あかね書房)

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あらすじ:転校してきたばかりの始(はじめ)に見えた不思議なもの。それは、羽の生えた小さなおじさんでした。何かでビリになった人にだけ見える「びりっかすの神さま」をめぐり、競い合うだけだったクラスメイトたちが変わり始めます。

おすすめの理由:「ふつう」とは何か、「一番」になることの意味、見方を変えると世界が変わることなど、『ふみきりペンギン』と共通するテーマを持つ作品です。当たり前だと思っていることが逆転する面白さがあり、子どもたちに新しい視点を与えてくれます。

『メメンとモリ』ヨシタケシンスケ 著(ポプラ社)

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あらすじ:小学5年生のメメンとモリは、学校のプールに住む金魚の話を聞きます。二人は不思議な謎を追いかけることになり、友情を深めていきます。

おすすめの理由:不思議な存在との出会いによって変化していく子どもの心を描いている点で『ふみきりペンギン』と通じるものがあります。子どもの視点から見た「ふつう」と「ふつうではない」ことの境界線、友情について考えさせられる作品です。ミステリ要素もあり、ワクワクしながら読み進められます。

『小さな町の風景』杉みき子 著(童心社)

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あらすじ:町に住む子どもたちのさまざまな物語が綴られています。それぞれの子どもたちが日常の中で出会う小さな発見や変化、成長の瞬間が描かれています。

おすすめの理由:日常の中に潜む不思議な出来事や、子どもたちの繊細な心の動き、成長の瞬間が丁寧に描かれています。『ふみきりペンギン』と同様に、子どもたちの内面世界を大切にしながら、それぞれの個性を肯定的に描いた作品です。静かな感動を与えてくれる物語集です。

構成について

構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。

「誰に、何を伝えたいか」

  • ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
    • 誰に……例)家族、友人、先生
    • 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
  • 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。

文章の構成

  • 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
  • 【はじめ】
    • この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
  • 【なか】
    • 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
    • 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
      • 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
      • 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
      • 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
      • 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
    • 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
  • 【おわり】
    • 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。
読書感想文の書き方・文例について、より詳しくは「テーマを考えてから書こう! ~読書感想文のコツ」をご覧ください。

2025年 読書感想文課題図書のページ

随時更新していきます。

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書き上げるのが大変な読書感想文。でも、読書とは本来、楽しいもの。読書感想文を素敵な学びの機会に変えてみませんか?

対象学年:小学生・中学生・高校生

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この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 読書感想文, ブックレビュー

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