【生徒作品】『北千住と地震』(新中2 A・Nくん)


リテラでは、生徒一人ひとりの興味・関心に基づいた学びの成果を、様々な方と分かち合う場として、年に一度、『生徒作品発表会』を開催しています。生徒たちは、発表会に向けた様々な準備を通して、実践的な発表の仕方を学んでいきます。

今回は、2019年3月に行われた「リテラ 生徒作品発表会」より、新中2 A・Nくん『北千住と地震』を掲載致します。

日頃から災害時の行動に関心があったAくん。今回の研究では、自分の住む北千住の防災について調べました。

その他の発表動画は、「2019年3月 生徒作品発表会 発表動画一覧」をご覧ください。

作品について

講師からのコメント

土地についてしっかりと知り、対策を考えること、何より、すぐに行動に移せる姿勢を保つことこそが、災害を風化させないことだと学びました。伝えたいという使命感が、すばらしかったです。普段から、しっかり考えていきましょう。

本人の振り返り

これはどのような作品ですか?
一度きりの人生を守るため、地震という難題に立ち向かうための方法を紹介しました。
どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
東日本大震災の時に浦安で液状化が起こったことを知り、興味がわきました。
作品づくりで楽しかったことは何ですか?
東京都が出している防災パンフレットからの制作です。興味深い内容でした。
作品づくりで難しかったことは何ですか?
正確な情報を得ることが、難しかったです。
作品作りを通して学んだことは何ですか?
自分の命、人々の命の大切さです。また、それを守るため、何かあったときに具体的な行動をとれるようにすることです。
次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
滑舌に気をつけたいです。また、文章のミスにも気をつけたいです。
来年、研究したいことはありますか?
ディズニー、鉄道、など。
この作品を読んでくれた人に一言
皆さん、今、自分が生きてるのは、奇跡としか言えません。身近なものがあるのも、おいしいものがあるのも、遊園地があるのも、悲しいことも、苦しいことも、楽しいことも、嬉しいことも、全部、生きているから感じているのです。世界では、一年(2016年)で約5,690万人の方が亡くなっていると言われています(WHO調べ)。それぐらいたくさんの人が亡くなっている中で私たちは生きています。なんでもない日でも、大切に過ごしましょう。

生徒作品

新中2 A・Nくん『北千住と地震』

2011年3月11日、午後2時45分、地震が起こる1分前、保育園で昼寝をしていた僕は、目を覚ましました。その直後、初期微動らしき揺れがきました。数十秒後、大きな揺れが来ました。すると、先生たちが慌てた様子で、頭を守るように指示しました。あの時のことは未だに覚えています。今回、僕は、地震の研究をしました。しかし、テーマにした場所は、東北ではありません。僕の住む北千住です。

研究は、公官庁が出している地震についてのパンフレットや、防災に関する本などを調べて、進めました。

まず、北千住の、土地の地盤について見ていきましょう。これは、明治初期から中期にかけて、関東地方を対象に作成された「迅速測図(じんそくそくず)」です。これを見てみると、北千住には田んぼが広がっていることから、地盤が弱い可能性があることがわかります。また、以前、 川や海であったところが市街化された場所は、一般的に、液状化が発生しやすいと言われています。足立区は、内陸部の河川沿いの低地に位置しており、区域のほとんどが、液状化の可能性がある地域となっています。液状化現象とは、地震が発生した際に、地盤が液体状となる現象のことです。地盤の沈下や亀裂が起こり、地上の建物に被害を及ぼします。

東京都都市整備局では、こうした地域ごとの災害時の危険度をまとめています。それでは、北千住について、見ていきましょう。建物倒壊危険量は、地盤特性と建物量、建物特性を掛け合わせて測定しています。これは、東京都内での、建物の倒壊危険度ランキングです。上野辺りから日暮里、北千住、堀切や浅草辺りまでが、危険性が高くなっています。地盤の弱さに加え、木造建築といった、下町ならではの家屋が密集して残っているので、建物の倒壊が起きやすくなっています。

次に、火災発生危険度です。これは、出火の危険性と、延焼の危険性をかけて、測定しています。北千住は、危険度がとても高い地区です。その理由は、いろいろあります。これは、北千住の住宅街です。火災が起きやすい理由としては、まず第一に、建物が狭い間隔で、密集していることです。建物が密集していると、火災の時、燃え移りやすくなります。次に、木造住宅が多いことです。木は非常に燃えやすいので、火災が起きやすくなります。

災害時の活動困難度は、活動有効空間不足率と、道路ネットワーク密度不足率を掛けて、測定しています。資料をみると、足立区は、救助活動などが比較的行いやすい場所となっています。

これは、これまでのランクをすべて総合した、災害時の総合危険度です。北千住の辺りは、赤くなっています。北千住は、都内でも、地震の際、建物の倒壊や火災が起きやすい地区であると言えます。

では、地震が起こったら、どう行動すればよいのでしょうか。まず、家の中で、あらかじめ、隠れる場所を決めておきましょう。頑丈なテーブルがある場合は、下に隠れられるか、確かめてみましょう。また、棚やテレビからは、離れましょう。繫華街で地震が発生したら、建物から離れて、頭を守りましょう。揺れが収まったら、公園などの安全な場所へ行きましょう。それが難しい場合は、耐震性のある、鉄筋コンクリートのビルに逃げましょう。

これは、北千住の防災マップです。地震が収まったら、まず、一時(いっとき)集合場所に行きます。自宅に被害がない場合は自宅へ、火災や、自宅に被害がある場合は、避難場所へ行きましょう。その後は、状況に応じ、第一次避難場所、第二次避難場所へ避難します。

重要なことは、地震が起こった場合、どこに避難するべきかを、家族で決めておくこと、確かめておくことです。しかし、避難場所を決めている家庭は、少ないようです。リテラの生徒さんを対象にアンケート調査をしたところ、66.7%の生徒の皆さんの家庭で、避難場所を決めていませんでした。ぜひ、避難場所や集合場所を決めておきましょう。

防災の研究者、片田敏孝(かただ・としたか)さんによると、人には、「正常化の偏見」があると言います。これは、「自分は大丈夫」と、一生懸命思い込もうとする心の作用のことを指します。危険だという知識があっても、人はなかなか避難しないのです。しかし、「まだ大丈夫」という考えは、避難を遅らせてしまい、取り返しのつかない結果になってしまいます。ですから、率先して避難する「姿勢」が必要です。この「姿勢」を保つことが、これまでの災害を風化させないということなのです。

大災害は、皆さんの生活を一変させるものです。災害は、いつ、どこで、何時何分に起こるかわかりません。皆さんも、災害に備えてください。一つ一つの具体的な行動が、生きるための、鍵になります。

これで、発表を終わります。聞いてくださって、ありがとうございました。

この記事を書いた人: リテラ「考える」国語の教室

東京北千住の小さな作文教室です。「すべて子どもたちが、それぞれの人生の物語を生きていく力を身につけてほしい」と願いながら、「読む・書く・考える・対話する」力を育む独自の授業を、一人ひとりに合わせてデザインしています。

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カテゴリー: 生徒作品

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