内容の紹介
イギリスのコーンウォール地方にある港町に住む女の子・カラは、一年前遠い海で行方不明になった母の帰りを信じ、貧しさやいじめといったつらい日々に耐えていました。ある日、カラは、浅瀬に打ち上げられたイルカの子どもを見つけます。イルカを助けたいというカラの思いは、体が不自由な転校生・フィリクスや町の人々を巻き込み、海を守る運動へとつながっていきます。
読む前の下ごしらえ
考えてほしいこと
読む前に、次のことを考えてみましょう。
- イルカを見たり触ったりしたことはありますか。
- あなたには、つらい時や苦しい時、安心できる場所や人、時間はありますか。
読む
読む時は、印象に残った場面や不思議に思った場面など、「心が動いたところ」にふせんを貼りながら読みましょう。書く時の材料になります。
また、できれば、家族や友だちと、同じ本を読んでみましょう。自分と違う感想や考え方を知ると、感想文の内容がより深いものになります。
準備する
気持ち
本を読んで感じた気持ちをことばにするのは、なかなか難しいものです。読み終わったら、次の「気持ちについて考えよう」シートを印刷して、感じた気持ちに丸をつけてみましょう。対話や作文の際のヒントになります。
体験
読書感想文では、本の内容と自分の体験を結びつけることが大切です。自分の体験が思いつかない場合は、このページの「考えるヒント」を参考にして、本のテーマについて誰かに聞いたり、調べたり、新しく何かをしてみたりするとよいでしょう。
合わせて知りたい
イギリス コーンウォール地方の港町(ニューリン)
カラはイギリス・コーンウォール地方のこうした雰囲気の港町に住んでいると思われます。歩きまわってみましょう(Googleストリートビュー)。
イギリス コーンウォール地方 海岸の風景
漁の種類と持続可能性について
物語には、海の環境と漁の関わりについて語られるシーンがあります。
漁の種類、そして、漁業の持続可能性(環境を保持し、漁を続けられるか)について調べてみましょう。
漁法について
漁業の持続可能性について
パラリンピック ヨット競技について
ヨット競技には様々なクラスがあります。フィリクスは、カラを二人乗りクラスに誘います(音楽が流れますので音量に注意してください)。
考えるヒント
- 貧しさやいじめなど、カラを取り巻く状況は、良いとは言えません。そんなカラにとって、海とはどのようなものですか。
- カラのお父さんは、やむを得ず、モアナ号を売却しようとします。カラにとって、モアナ号はどのようなものですか。
- 傷ついたイルカの子どものために、カラは、イルカの母親を探し回ります。傷ついたイルカと母親との再会には、カラのどんな願いが重ねられているのでしょうか。
- カラは、母親がもういないことを、受け入れられるようになります。それは、なぜだと思いますか。
- 自分は一人ではないと気づいたカラにとって、海は、どのようなものとして描かれていますか?
物語を通し、あなたについて考えてみましょう。
- カラにとって、海は大切な場所です。あなたには、かけがえのない場所はありますか(または、そうした人はいますか)。
- カラは難読症、フィリクスは脳性麻痺というハンディキャップを抱えていますが、二人は様々な困難に立ち向かいます。あなたには、互いに支え合えるような(あるいは高め合えるような)友人はいますか。
- あなたには、受け入れがたい現実を、時間をかけて、少しずつ受け入れた経験はありますか。
- 苦しみや喪失(何かがなくなってしまったという意識)を抱えて生きていかなければならない時、あなたの力になるのは、何だと思いますか(ご家族の方にも聞いてみるとよいでしょう)。
保護者の方へ
上記の「考えるヒント」を参考に、対話をしながらアイデアを拡げてください。アイデアのメモをたくさん作り、並べ替えながら、感想文の構成を練りましょう。
読書感想文を通して考えてほしいテーマ
- 人とのつながり
- 仲間
- 友情
- 信じる心
- 大切な場所
- 家族
- 成長
- 自然
この本について
イギリスのコーンウォール地方にある港町を舞台にした物語です。
カラを取り巻く貧困やいじめなどが描かれる前半部は、読んでいてつらくなるかもしれません。母が行方不明になってしまったカラにとって、海は現実を忘れさせ、母とのつながりを感じさせてくれるものです。しかし、大切な海に出る手段であり、心の拠り所であったヨット「モアナ号」にも売却の話が持ち上がります。母が戻ってきて、また元のように親子三人で暮らせると信じ続けるカラですが、現実は、少しずつ、彼女から海を取り上げていきます。
そんな時に出会った、浜に打ち上げられて傷ついたイルカを、カラは、自分自身のように感じたのかもしれません。
イルカを守りたいというカラの思いは、フィリクスやカーター先生を通し、海を守るというより広い目的につながっていきます。そこで培われたフィリクスのと信頼関係や人とのつながりは、自分が一人ではないことをカラに気づかせますが、それは同時に、母がいなくなってしまったことを受け入れることでもありました。
私たちは、自分の思いや存在を、何かに重ね合わせることがあります。カラにとって、海やイルカには、「守るべき自然」という文脈を超えて、大切な意味があります。この本は、ただ出来事を読むのではなく、カラにとってどんな「意味」があるのか、そしてそれがどう変化していくのかを、しっかりと読み取っていくことが大切です。
構成について
構成にルールはありませんが、どう書いたらいいかわからない時は、次のことを参考にしてください。「誰に、何を伝えたいか」
- ことばは、他者に思いを伝えるためのものです。考えたことやメモを元に、書き始める前に、「誰に、何を伝えたいか」を考えましょう。「伝えたいこと」は、できるだけ一つにしぼりましょう。
- 誰に……例)家族、友人、先生
- 何を伝えたいか……例)本の面白さ、感動したところ、自分の想い
- 「伝えたいこと」をしぼることで、構成を立てやすくなります。
文章の構成
- 文章は、三つのパートに分かれることが多いようです(※三段落で書かなければならないという意味ではありません)。
- 【はじめ】
- この文章で「伝えたいこと」や、あらすじを、簡単に書きます。なお、あらすじの有無を学校から指定されることもあります。
- 【なか】
- 本に貼った付せんや、考えたこと、メモを元に、「伝えたいこと」をより詳しく書いていきます。
- 物語の内容と自分の体験を交えると、「伝えたいこと」の説得力が増し、生き生きとした作品に仕上がります。
- 物語で印象に残った場面や人物について書きましょう。また、それに対しどう感じたかを書きましょう。
- 関連する自分の体験を書きましょう。「いつ、どこで、誰が、どうした」から書き始めるとよいでしょう。
- 体験は、過去の思い出だけでなく、本を読んだ後に人に聞いたことや、調べたことでもよいでしょう。
- 体験の最後には、その体験を通して学んだこと・感じたことを、物語の内容と絡めながら書きましょう。
- 学んだことを実行するのはなぜ難しいのか、そのためにはどうすればよいのかといった、より現実に根ざした内容の段落を追加すると、深みが増します。
- 【おわり】
- 「伝えたいこと」をもう一度強調し、未来につながる決意や前向きなことばで締めます。